免震ゴム不正事件で25%下落した
東洋ゴムが、2015年3月13日に、自社の製造する建築用免震積層ゴム『高減衰ゴム系積層ゴム支承(高減衰ゴム)』のデータ改ざんによる大臣認定不正取得があったことを発表し謝罪会見を行ってから、2週間が過ぎました。
納入された不正品(不良品)は、2,052基、対象物件55棟との当初発表から、先週新たに過去の全製品が不正品(不良品)である可能性があることが、発表されました。
詳細はこれから程なく明らかにされると思いますが、被害対象が当初の発表より遥かに多くなることは、免れないと思います。東洋ゴムの株価も、発表直後の下げのあと、しばらくもみ合っていましたが、新たな発表で2段階目の下げとなりました。
発表翌日に一次ストップ安になりましたが、その後は比較的堅調に推移していました。実際、東洋ゴムの売上の79%がタイヤ事業で、事件となった免震ゴムの売上は、東洋ゴム全体としたら、微々たるものと言えます。
同社の2014年12月期の決算は、北米、欧州市場で市販のタイヤ販売が好調で、過去最高益と2月には発表されていましたので、株価は右肩上がりの上昇トレンドにありました。
業績好調は、タイヤメーカー国内4位の東洋ゴムだけではなく、ブリヂストン、住友ゴム、横浜ゴムの上位3社も軒並み好調で、東洋ゴムの謝罪会見前に株価は、高値を更新しています。ブリヂストンは3月13日に年初来高値4,900円、住友ゴムは3月10日に年初来高値2,240円、横浜ゴムは3月8日に年初来高値1,288円と高値を更新している状況でした。
当の東洋ゴムも、3月12日の2,810円が年初来高値更新でした。
タイヤメーカーの好調は、原料の天然ゴムが2011年に高騰していたため、各社タイヤの値上げに取り組んでいたところ、天然ゴムの相場が大幅に下落したことと、輸出による円安効果です。原料コスト低下メリットと輸出販売の円安メリットのWメリットがあった訳です。
ところが、東洋ゴムの不正発覚で、タイヤメーカーの株価は、ピタッと上昇が止まります。ブリヂストンも、住友ゴムも、横浜ゴムも、みな免震ゴムを製造しています。東洋ゴムの不正は、もしかしたら、「業界に飛び火するのでは」という不安が影響している思います。
株価も最高値付近だし、とりあえず様子見の状況です。ただしその後ブリヂストンだけは、高値を更新します。3月24日に4,916円の値をつけます。東洋ゴムが交換用の免震ゴムをブリヂストンに依頼するとの話が出たからです。ブリヂストンから見れば、思わぬ特需となるわけです。
東洋ゴムの免震ゴム事業が、会社全体では売上比率も少なく、本業のタイヤ販売が好調だということで、免震ゴムでの損失もせいぜい20億円程度と見込んで、株価が下がったところを買う人が多いため、2007年の不正の時に比べると値下がり率が低いのだと思います。
2007年は、謝罪会見当日の高値639円から15営業日(証券取引所の立会日で計算)目に、約40%ダウンの385円まで下げました。今回は、謝罪会見の当日の高値2,798円から9営業日目に2,107円と約25%下げました。
ところが2007年ですが、謝罪会見から9営業日目というと、その日の安値は458円で、約28%ダウンの水準です。つまり、そこからさらに株価は下がっていったのです。
なぜかというと、事件の全貌が見えてくるのに時間がかかるからです。会社が最初に発表したときに、不正の全てと、それによる対策費用、損害賠償額等がすべて把握できれば良いのですが、大抵は、あとからあとから問題が噴出するケースが多いのです。ですから会社の業績に与える影響の当初の見積が悪い方向へ大きく狂いが生じ、ダラダラ、もしくは一気に株価が下がってしまいます。
前回も、今回もダイバーテック事業部門の不祥事です。いずれも建築基準法の大臣認定取得のからみです。前回は防火断熱パネル、今回は免震ゴムです。いずれも主力のタイヤではありません。
ところが、今回は事情が違うと思います。防火断熱パネルの原料は「ウレタン」です。免震ゴムはまさしく「ゴム」です。タイヤメーカーが「ゴム」で不正を起こしていたとなると、主力製品のマーケットの反応が違ってきます。
タイヤメーカーだから、国内では免震ゴムでも信頼を得られていた。また、地震大国の日本で、免震ゴムのシェア第2位だから、海外でもタイヤに信頼が置かれていたとかんがえるのが普通だと思うのです。
発砲ウレタンの不正とは、全く事情が異なります。本業に大きなキズを負ったのです。しかも本業が好調だったのは、原料安と円安によるもの。為替が円高に振れて、原料が再び高騰したら、免震ゴムの交換にかかる代替免震ゴムの購入代金、工事費用、損害賠償費用を簡単に捻出できるでしょうか。
交換はジャッキアップで?本気で言ってるの?!
古いネタですが、地下鉄は入れるところがちゃんとあって、当然出てくるところもあります。
免震ゴムは、外すことを前提にして設置してるのでしょうか?
免震ゴムの耐用年数は60年と言われています。マンションなどでも似たような年数です。そうです、建築物の建築とともに設置された免震ゴムは、その建築物の耐用年数(劣化)により取り壊しとともに、役目が終わる装置なのです。ようは使い捨てです。理論上は、建物を持ち上げて(ジャッキアップして)、たとえ1mmでも隙間があれば、免震ゴムを外して取り替えられると言われています。簡単そうに聞こえるじゃありませんか。タイヤ屋さんのいうことですから、ジャッキアップはお手のものってわけです。
では、マンションのどこにジャッキをかましてジャッキアップするのでしょうか?
出来上がってるマンションを持ち上げるのですよ。そもそも出来上がったマンションを持ち上げて、免震ゴムに乗っけたわけではないでしょうが。
入ったところから出てくる地下鉄とは、わけが違います。
マンションなどの建築物をジャッキアップできるとすれば、たぶん柱の下でしょう。でもそこには、すでに免震ゴムが設置されています。交換を想定していない免震ゴムの交換のために、宙に浮いている柱でもあるのでしょうか?そりゃそれで問題になっちゃいそうです。
耐用年数60年といって設置している間に、もし問題がおきて交換が必要になる頃には、技術革新により交換が安易にできるようになっていることを期待していたような気がしてならないのです。
マンションのジャッキアップって簡単にできるのかと調べていたら見つけました。
2年ほど前、中国陝西省西安市にある7階建のマンションが、10年ほど前から住人がお風呂に水を張ると、マンションが10cmくらい傾くということで、総重量8,000トンのマンションを290個のジャッキを使って3日間かけて高さを調整し、基礎部分をコンクリートと鉄骨で固めて、ジャッキを外したとのことです。
そっか、中国で2年以上前にやってるくらいなら、日本でも可能なのかも。なんといっても中国は、地上200m,57階建ての高層ビルを19日間で完成させたという発信をしたばかりです。あらかじめ工場でつっくたパーツを現場で組んでいく『組合式工法』というらしいのです。ジャッキアップくらいは簡単かも。
て、プレハブか!!
まさか、東洋ゴムは、ジャッキアップを中国に発注しないでしょうね???
ちなみに、中国のジャッキアップで調整したマンションの傾いた原因は不明のままだそうです。