国交省も北川副大臣も大きな勘違いをしてる
3月18日午後、国土交通省が東洋ゴムの山本社長を呼び出しました。同省北川副大臣(自民党)から「対象建築物の所有者に迅速に説明すること、来週半ばまでに安全性を把握すること」を示された文書を受理する山本社長の映像を見て、非常にがっかりしました。
なんですか、これ?
動画の音声を聞かなければ、何かの表彰式にしか見えません。まるで不正を見逃してしまった国交省のパフォーマンスのように感じました。
東洋ゴムの本社は大阪です。データ改ざんをして不正を行っていた現場は兵庫の明石です。山本社長が呼び出されて出向いた先は、東京の霞ヶ関の国土交通省です。
山本社長は、同社の危機管理統括でもあります。重い腰だったかもしれませんが、対象建築物の所有者に対し、執行役員が謝罪に回っているようです。
山本社長にしろ、対象物件の所有者に謝罪のために出向いている執行役員にしろ、絶対一人では動きません。技術的な説明や弁明をするためにも、必ず製品に詳しい技術者などが同行しているはずです。
危機管理の統括責任者は東京に呼び出され、執行役員は対象物件の所有者回り。それでは一体誰が陣頭指揮を取って、対策を行っているのか不安です。
今回山本社長が現場で指揮を取らなければならないのです。トップダウンで、最優先の対策を社内で指示をださなければならないのです。
北川副大臣が大阪へ行くべきでしょう。東洋ゴムの本社は大阪市西区で、国土交通省は近畿整備局が大阪中央区にあります。
違反を犯した企業の社長だから霞ヶ関まで呼ばれて当たり前だと思われますか?
今なすべき優先順位で考えると、かなりプライオリティが低い事だと、私は思います。
山本社長が大阪と東京を往来する時間を徹底的に事件の「実態解明と対応策の策定、実施」に当たらせるべきなのです。そのためには、北川副大臣が東洋ゴムに出向いても良いのではないでしょうか。近畿整備局でもいいですし。副大臣ともなるとお忙しいでしょうから、政務の都合で大阪まで行く時間が取れないのであれば、大げさなパフォーマンスまがいの指示書の交付を行わなくても、通達で十分です。
誰も北川副大臣が山本社長を呼んであのようなことに時間をかけることなど評価していないと思いますよ。太田大臣(公明党)、西村副大臣(自民党)、上野政務官(自民党)、青木政務官(自民党)、鈴木政務官(自民党)のセンセイ方、国交省の官僚たちは誰もそういうことに気づかないのでしょうか。ズレてますよ感覚が。
食中毒や細菌の感染と違って、今は現実の被害症状が見ていません。そのために対応がのびりしているように見受けられます。
2月、東洋ゴムから国交省に、不正をしていた可能性が強いと報告。
3月13日、謝罪会見、対象物件が55棟と発表。
3月17日早朝、読売新聞社が対象物件55棟の所在都道府県と公共性の高い物件の詳細を記事で公表(YOMIURI ONLINE社会面ではAM3:00に記事アップ)
同17日、国交省が対象物件のうち、10府県15棟の公共施設の名称を発表。
これをわかりやすく細菌感染に喩えます。
2月、感染の疑いの報告を受理。
3月13日、感染が確定。
3月17日早朝、新聞社が感染者の居住地域のエリアと感染が拡散しそうな危険な居住施設を公表。
同17日、国交省が感染者の居住地域のうち、感染が拡散しそうな危険性のある居住施設の10府県15棟の施設名を発表。
となるわけです。今確認できている55棟は、不良品の免震ゴム細菌に感染はしているけど、潜伏期間中につき、発症していないだけです。
いまごろ全基取り替え指示
構造安全性については現在調査中ですが、上記建築物のうち、東日本大震災時に宮城県仙台市宮城野区・青葉区(震度6強~6弱の地域)に建設されていた3棟については、震災後に現地調査を実施した管理会社等から構造体に損傷は生じなかったとの報告を受けています。
上記は、国交省のプレスリリースの中の一文です。東洋ゴムの3月13日のプレスリリースでも同じ内容が書かれています。実態報告とも東洋ゴムの苦し紛れの言い逃れとも取れますので、このくだりについては、今までの稿では、この文章だけ、あえて引用から外していました。取り方によっては、「建築基準法には不適合でも、東日本大震災での実績あり!」と読まれる可能性があるからです。PRになりかねないからです。片棒は担ぎたくありません。
真実を知った居住者はどう思ったでしょうか。「価格は高かったけど免震構造のマンションだから地震でも大丈夫と安心していたけど、嘘だったんだ!」と怒りに震え、もしかしたら倒壊していたかもしれないと思うと、忘れたい恐怖をまた思い起こしたのではないでしょうか。
もうひとつ言うと、性能を満たさない免震ゴムは、東日本大震災時の強い揺れと、度重なる余震を受けた後も、新築時と同じ免震性能をキープしているのかという疑問があります。
3月13日の東洋ゴムのプレスリリースでは、今後の対応・対策として「建築会社、設計事務所に、再計算値をもとに構造計算を依頼し、建築物として施主様から当初求められていた安全性能の確認を行い、構造計算の結果がNGであった場合は、当社品置換もしくは他社代替製品で対応する」と図解されています。
建築基準法違反の性能を満たさない製品だから、すぐに適合の他社製品と交換するという発想がありません。しかも当初は国交省もこの対応を認めていました。
以下のリンク先で書いたとおりです。
昨日の報道を見る限り、国交省は、対象物件のすべての免震ゴムを交換するよう指示をしたようなので、その点は納得です。あまりにも遅い判断でしたけれども。
本来であれば、2月に東洋ゴムから報告があった時点で、国交省は不正の疑いがある製品以外の型番もすべて出荷停止にしなければなりません。「不正か否かの確認」が必要なのではなく、「絶対安全であるという確認」と「他の型番も同様の不正ある可能性」のもと、「他には不正はないという確認」が取れるまで、出荷停止を命じるのが、監督官庁としてなすべきリスクマネジメントです。
また東洋ゴムは、昨年2月に社内で発覚した際に、上記の内容を真っ先に実行すべきでした。その後18棟の物件にまで納入したことを考えると、被害は55棟ではなく37棟で済んでます。
ハッキリするまでは、とりあえず販売するのではなく、ハッキリするまでは、販売しないとするのが正しい対応です。会社としての危機管理の対応ですから、主力のタイヤ事業においても同様な事が行われているのではないかと、消費者は判断します。
免震ゴムは同社の売上規模からみても、さほど大きな規模ではありません。ただ、これからの需要に期待をかけていただろう製品だけに、間違えた選択をしてしまったようです。結果的に主力製品の品質に対する信用を確実に失いました。