2月24日、東京電力は原子炉建屋側を通るK排水路から、高濃度汚染水が海に流出したおそれがあることを発表。昨年2014年4月に把握していたが、調査をまとめた上で今回発表したというニュースリリースを引用する。
報告概要
排水路の位置図
東京電力ではタンクエリアからの高濃度汚染水の漏洩を受けて、タンクエリアの雨水等が流れるB放水路、C放水路の測定結果を発表してきたが、今回問題となったK排水路のほか、5、6号機エリアやALPSエリアを流れるA排水路、大型船舶が接岸する物揚場排水路は一般にはあまり知られていなかった。
それぞれの排水路がどのエリアの雨水等を集める設計なのか別資料で示す。
上の2点は敷地内を舗装等して、作業環境の線量を下げるフェーシングに関連する資料だが、それぞれの排水路がどんな場所に流れているのかよくわかる。K排水路は建屋の山側、たいへん線量が高い場所にある。
また、同じ資料にはK排水路が暗渠(トンネル)であること、その内部の清掃作業が行われたこともイラストと写真入りで示されていた。
非常に危険な作業だったことが伺える。作業に従事した方の健康が心配だ。
写真からは津波で流されたガレキも排水路内に入っていたことが分かる。また拡大表示の地図からは、いかに原子炉に近い場所を流れている排水路だったのかも明白。
建屋屋根の水質分析結果
上記の写真で見たようなK排水路に流入した高濃度汚染水の線源がどこにあるのか、網羅的な調査は被曝の危険があるので(それだけ線量が高い場所だから)、2号機原子炉建屋屋上3カ所と、大物搬入屋上、大物搬入の縦の樋の5カ所に限定して調査したと記されている。
排水口での線量の変化と降雨量の関連
折れ線グラフは核種ごとの放射能濃度。細い棒グラフは降雨量で、たしかに関連はあるように見える。つまり、たくさん雨が降ると、大物搬入の屋上から汚染水が溢れ出すので排水口での線量も高くなるということらしい。
(排水路での測定から10カ月経つのに、線量のピークがあまり低くなっているように見えないのは、グラフの縦軸が対数目盛だからなのか、それとも別の原因があるのかは不明だ)
汚染水が溜まった屋上での対策
溜まった高濃度汚染水が降雨による水位上昇で溢れ出る排水口のまわりを、セシウムを吸着する機能に優れたゼオライト入りの土嚢で囲むほか、放射性物質が付着したり堆積したりしている可能性のある屋上のブロックや砂を取り除くのだという。
K排水路内にもゼオライト土嚢を敷設
さらに、排水が流れ込むK排水路のトンネルの底にもゼオライト土嚢を敷き詰める。大物搬入の雨樋から流れ込む汚染水ばかりでなく、爆発事故後に周辺に降下したままになっている汚染物質の吸着も期待できるかもしれない。
K排水路に流れ込む枝排水路にも、ゼオライト土嚢、モール状の吸着材を鉄棒に巻き付けたものなどを設置するとのこと。
排水口の流量と降雨の関連
降雨量が多い時にはピンクのスポットで示される流量も多くなるようだ。上記のようにゼオライト土嚢などでの吸着を対策の中心とするのであれば、流量が増加して土嚢の上をオーバーフローするようなことがあっては意味がなくなってしまう。
といって、土嚢を積み上げ過ぎると流れが塞がれてしまう。どの程度のゼオライト土嚢の積み上げが最適なのか、検証が不可欠だ。
また、ゼオライトがセシウムなどの放射性物質を吸着した後の取り替え方法や時期の判断についても示してもらいたいものだ。
対策を検証すれば本気度がわかる
K排水路からの高濃度汚染水流出については、すでに多くの意見がメディアで取り上げられている。なぜ10カ月も公表しなかったのか、10カ月もかけて5カ所の測定で結論としてよいものなのか、漁業関係者からの東電への不信の声も取り上げられた。
いま溜まっている高濃度の汚染物質が流れ出さないための対策、とくに海への流出を食い止める為の、東京電力の本気が問われている。