まだ12月だというのに、全国各地で大雪による被害が伝えられています。今も日本海側では積雪が進んでいて、今日明日、そして来週は(あ、これを書いているのは2014年12月13日です)、積雪への警戒が呼びかけられています。
写真は2014年2月の静岡県のとある地域で除雪ボランティアに参加した時のもの。これでも雪害が叫ばれるようになって一週間ほど経ってからの光景です。写真の両側の住宅の人たちは玄関が開けられないほどの雪、たとえ玄関や窓を開けることができても、外に脱出することができない積雪の深さに難渋し、疲労困憊されていました。
問題は、ふだんそれほど積もらない地域
新潟や山形、秋田、青森、北海道など、雪が深い地方を無雪期に訪ねて気づくことがあります。家の基礎が高い、道が広い、用水路や排水路が大きい、そして道路の横には赤白シマ模様のポールが立っているなど。
みんな積雪期への対策なんですね。基礎の高さや道幅の広さは当然として、用水路・排水路は積雪期に雪下ろしをした雪を流すために大きく作られているわけですし、道路脇のポールは一面が雪に覆われたときに「ここまでは道路だよ」ということを示すものです。それに、コンビニの入口が二重になっていているのも、吹雪が吹き込まないようにする工夫ですし、そもそも駐車場そのものが広いところが多い。広ければそれだけ除雪の手間がかかることになるのに、それでもコンビニの駐車場が広いのは、積雪時の車の取り回しをよくすることで事故を防ぐための措置だと思います。
雪国ではそんなふうに、さまざまに積雪時への対策が講じられていますが、普段それほど雪が積もらない地方では、雪対策の落差が大きい。それが、時ならぬ大雪、そして普段の積もり方をはるかに超えるような積雪に見舞われた地方での大規模な雪害を生む要因となっています。
豪雪地帯は備えが万全だから大丈夫という訳ではありませんよ。でも、大問題なのは、ふだんそれほど積もらない地域に大雪が降った場合です。今年の春に関東甲信越など広い範囲で雪害に見舞われた地域の中で、雪かきボランティアに参加させていただいたときの写真から、「それほど深い積雪がない場所」がにわかに雪害に見舞われた場合、どんな状況になるのか考えてみたいと思います。
家の真上で「雪崩」が起きる
雪が降って怖いのは雪崩ですが、雪崩はほぼ毎シーズン起きる常襲地帯があります。急斜面でかつ樹木が少ない、いわゆる「草付き」の斜面です。毎年のように雪崩で斜面が破壊されるので樹木が育つことが出来ず、辛うじてイネ科を中心とした(ススキみたいな葉っぱの長い草)が生育しているような斜面は、冬期登山の際にも要注意ポイントとなります。新雪の頃には、草を埋めるように積もった雪の上の部分が、ちょうど草を滑り台のようにして、一気に流れ落ちてくる。それが里に近い場所での新雪雪崩、表層雪崩となります。
ただそれは、かなり山に入った場所、集落よりもさらに山に入った林業作業をするような場所や、スキー場やゴルフ場周辺のように山地の開発が行われた場所で起きることが多いと考えられます。しかし、もっと多くの人たちが日常的に生活している場所でも雪崩に類似した現象は発生します。災害(人の死傷につながる事故)につながる場合もあります。それが屋根などからの落雪です。
屋根からの落雪といって甘く見てはなりません。屋根の棟(頂上)から片側の雪が一気に滑り落ちてくる場合も少なくないのです。
上の写真の場所での積雪は、たしか50センチほどでした。しかしそれは平地での積雪の深さ(高さ)であって、屋根前面に降り積もった雪が屋根から滑り落ちて、軒下に積もった高さは、除雪した実感で2メートル以上もありました。
周辺にお住まいの方に聞いたところ、屋根に積もった雪が軒に届くまで落ちて積もって、屋根の高さまで届いてから、ようやく屋根からの落雪が止まったというような壮絶なものでした。さらに降り積もったらどうなったことか…。想像したくないほどです。
これが静岡県、富士山東麓とはいえ、温暖な印象のある静岡県でのことだったのです。
チェーンを履かせようとして落雪
屋根からの落雪は、ある意味で盲点です。みなさん例えば30センチの積雪といわれれば、一面にそれくらいの雪が積もると想像するでしょう。30センチくらいなら膝よりちょっと低いくらいだから何とかなると思うでしょう。それに、30センチというのは特にたくさん積もった場所での話で…なんて思うかもしれない。でも違うのです。
30センチも雪が積もれば、玄関のドアを開けるのも大変です。そこにさらに屋根からの落雪が加わって、家のまわりの積雪は何倍もの高さになっていくのです。
玄関前に50センチも雪が積もったら、外側に開くタイプのドアを開けるのは無茶苦茶難しくなります。さらにその上に、屋根からどんどん雪が落ちてきて、軒先に届くまでに雪が積もる。もう1階の窓を開けることもできない。
孤立です。
玄関も1階の窓も開かなくなって、助けを求めようと二階の窓から外に出ようとして、新雪に「ズボッ」と全身が埋まってしまったと話してくれた人がいました。本当に無事で何よりだと思いました。
お隣と軒先が近い場合は、両方の屋根からの雪が家と家の間を受け尽くすことになります。50センチ程度の積雪が、家々の間で3メートルくらいになっている場所を、除雪ボランティアで何カ所も目にしたものです。そんな状況になると、窓はもちろん開けられません。エアコンの室外機が雪に埋もれれ動かなくなったという家もありました。
そんなことになる前に、なんとか脱出の手段だけでも確保しようと、車にチェーンを履かせようとしている時に、屋根からの落雪をもろに受けたという人もいました。ご想像いただければ分かると思いますが、チェーンを装着する作業って、体をかがめるようにして行いますよね。その上からドサッと雪のかたまりが落ちてくる。
「やばい、死ぬかも」と思ったそうです。
屋根からの落雪はとても危険です。お宅の駐車場はどんな場所にありますか? 数十センチの積雪で、自分の命が危機にさらされるかもしれないなんて、考えたことありますか?
写真は誤った印象を伝えうる
上の写真は豪雪被害が報道されるようになって3日ほどの頃。まだボランティアセンターが開設される前に、「押し掛け」で作業させてもらい、何とかして3メートル道路を1本、小型重機で作業されていた地元の方と共同で開削できたところ。
作業はえっらい大変でしたよ。体重が2キロ以上減ったくらい。でも……
この写真を見て、雪害なんて大したことないなんて思ってもらっては困ります。この場所から徒歩2分ほどの場所では、その時もなお雪に埋もれて自宅から外に出ることすらできない人たちがたくさんいたのですから。
2014年2月豪雪のボランティア写真集
上の写真は、雪害の被害がたいへんなものだということで、近隣にある自衛隊が出動して主要道路の開削をちょうど完了した日でした。しかし、細い道路には自衛隊の重機はもちろん、近隣の他県から集まり始めていた除雪機械も入れませんでした。
この日、地元消防などと自衛隊による作業終了が宣言されましたが、後に残った作業は住民らの「自助」にゆだねられたのです。しかし、自助はおろか共助も不可能な地域が続出。ようやく翌日になってボランティアセンターが開設されましたが、最初のうちは、救援ニーズを聞き取りに行くための足すらなかったため(幹線道路から1本は入れば腰近い積雪で中に入れない)、ボランティアセンターによる救援活動は、ボランティアセンターの近くから徐々に広げて行く、入れるところから状況を把握するという、非常に歯がゆい状況だったのです。
ボランティアセンター開設2日目の写真。積雪初日からはすでに1週間近くが過ぎていた。屋根からの落雪で玄関も窓も開けられず、閉じ込められた状態の住民がたくさんいた頃。
それでも積雪から時間が経ったこともあり、雪が締まって雪上を何とか歩けたのはありがたかった。「まずは、人が外に出られるように」と歩行路の確保が最初の課題だった頃の画像です。
東北の大震災でのボランティア経験者や、自衛隊を休んでの個人ボランティアなど猛者ばかりを集めて行った「別動部隊」の精鋭たちでも、人が通れるほどの通路を開削するだけでも大仕事。
この日の午後からは新潟県から送られてきた(ありがたいことです!)小型除雪車が作業に加わりました。雪に埋もれた住宅地の玄関を開けられるようにすること、そして奥の駐車場にある車が外に出せるようにと除雪作業に邁進します。