11月7日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発の現状を読んでいきます。
作業員3人が重軽傷。J2エリアのタンク建設現場で鋼材が落下
※11月7日午前11時23分頃、発電所構内J2タンクエリアにおいて、タンク建設工事中に鋼材が落下し、作業員3名が負傷し、そのうち作業員1名に意識がないとの連絡が緊急時対策本部に入った。
これを受けて、11時35分に救急車を要請。負傷者3名のうち重傷者を除く2名については、午後0時33分に福島第一原子力発電所を出発し、その後楢葉町にて消防防災ヘリに乗り換え、いわき市立総合磐城共立病院へ向かった。
負傷者1名については、救急医療室にてドクターヘリの医師による処置を行った後、午後0時51分に救急医療室を退室し、ドクターヘリにて福島県立医科大学へ搬送。なお、当該作業員3名に身体汚染はありません。
福島第一原子力発電所の状況(記者会見資料)に、事故の状況がやや詳しく載せられているので以下に引用。
調査の結果、建設中のタンク上部に作業用の梯子を旋回させるための鋼鉄製のガイドレール(形状:半円状、長さ:約25m、重さ:約390kg)の落下によるものであることが判明。
当該レールは仮止めされた状態であり、位置調整のため、一旦仮止め治具を緩めたところ、何らかの原因により当該レールが落下したことを確認。
その際に、地面に落下した当該レールが跳ねて、当該タンクと隣接しているタンク付近で、堰の設置工事に従事していた作業員3名に接触し被災。
刑事責任が発生しかねない事故だったことがわかる。警察による現場検証はしっかり行われるのだろうか。
1号機北側道路でのエンジンオイル漏洩について、双葉消防本部は「油漏れ事象」
※11月6日午前0時10分頃、発電所構内1号機北側道路において、南北に通っている道路上に車両からのエンジンオイルが滴下していることを協力企業作業員が発見。
エンジンオイルの漏えいは車両下部にオイルパンを設置して養生。また、同日午前0時40分に一般回線で双葉消防本部へ連絡。漏えい範囲については、コンクリート路面上に約100mの範囲であり、吸着材による拭き取りを実施。同日午前2時40分にエンジンオイルの漏えいが止まったことを確認。(既出)
なお、同日午後4時40分に双葉消防本部より「油漏れ事象」と判断を受けた。
またしてもヒヤリ。共用プールのスキマサージタンクには、異物混入を防止するスクリーンが設置されていることを「図面により」確認
図面により、同プール内のスキマサージタンク上部には、異物の混入を防止するため、6mm角メッシュのスクリーンが設置されていることを確認。
このことから、落下したコックカバーが共用プール冷却浄化系へ流入することはないと判断。
なお、同日午後2時35分、共用プール冷却浄化系の各パラメータを確認し、異常がないことを確認。
今後、落下したコックカバーの回収について検討を行う。
図面を確認してスクリーンが設置されていることを確認した時の、ほっとした気持ちが伝わってくるようだ。しかし、本当に大丈夫なのかという疑念も湧いてくる。
そんな基本的な構造について、図面を見なければ分からないのという疑問がひとつ。
図面上はスクリーンが設置されているにしても、破損などがないのか分からないという不安がもうひとつ。
「日報」を作成している事務方と現場の技術系社員の連携はどうなっているのかという懸念は大きい。凡ミスによる異物落下の対処方針は後日発表されるのだろうか。
200トン自走車からの作動油漏れについて、双葉消防本部は「油漏れ事象」と判断
※11月6日午後2時33分頃、発電所構内給油所東側において、200t自走車から作動油が漏えいしていると、協力企業作業員から緊急時対策本部に連絡。漏えいした作動油は、給油所東側付近のアスファルト上に約2m×約2mの範囲で溜まっており、吸着材により回収を実施。当該車両のエンジンを停止したところ、漏えいが停止したことを確認。また、同日午後2時45分に一般回線にて双葉消防本部へ連絡。滴下した油については吸着材による処置が完了。(既出)
なお、同日午後4時22分に双葉消防本部より「油漏れ事象」と判断を受けた。
1号機 ~タービン建屋地下からの高濃度滞留水移送を停止
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
加えて、
・1号機タービン建屋地下→1号機廃棄物処理建屋へ高濃度滞留水の移送を実施(平成26年11月6日午前9時50分~午後4時8分)
※若干わかりにくい記述だが、滞留水移送を停止したという意味
2号機~6号機
新規事項なし
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月27日午前10時43分~)
※滞留水移送は稼働中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中。
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年11月5日午後4時14分~)
※滞留水移送は稼働中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス ~通算32回目となる海洋排出を開始
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ3の当社および第三者機関による分析結果[採取日10月29日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。(既出)
11月7日午前10時3分、海洋への排水を開始。同日午前10時8分に漏えい等の異常がないことを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
11月6日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年11月7日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
11月6日分のデータでは、地下貯水槽ドレン孔水で最高値は「iの北東側」での190Bq/L。地下貯水槽漏洩検知孔水では「iの北東側」での64,000Bq/L。(ともに全ベータの値。1立方センチ当たりで発表された数値をリットル単位に換算)