2014年8月25日 今日の東電プレスリリース

[重要]凍結による止水が進まないトレンチ立坑Aの水位計が故障

8月25日(月曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。

懸案の海側トレンチ立坑Aで水位計が故障。水位管理は以後、立坑Cで行うと発表

※8月24日、2号機海水配管トレンチ立坑Aの水位計の測定値に急上昇を確認。そのため、現場にて立坑Aの水位を測定したところ、立坑Cおよび2号機タービン建屋の水位計による測定値と大きな差がないことを確認。以上のことから、立坑Aの水位計の故障と判断。今後、2号機海水配管トレンチ立坑の水位は立坑Cに設置している水位計にて管理していく。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年8月25日

立坑Aは、凍結止水工事がうまく行かず、目下懸案となっているまさにその箇所。位置関係をマップへの書き込みと立体的な配置図で示す。

2号機タービン建屋海側の立坑の位置関係(Google Mapの画像に加筆)
2号機海側トレンチの配置図(原子力規制委員会の資料より https://www.nsr.go.jp/disclosure/meeting_operator/NRA/data/20130718_01shiryo.pdf)

立坑Bはすでに閉塞されている。今後水位管理に使うとされる立坑Cは、立坑Aとトレンチ(地下トンネル)では直結していないことになる。

現在もっとも危惧されるトレンチからの汚染水流出を阻止するための工事の最前線で、水位を直接測定できないのは、作業や評価を行う上で障害になるのではないか。

汚染水タンクの水漏れ事故後、急遽設置された光波水位計(水面に照射したレーザー光の反射で測距する水位計)なら、短期間で設置できると思うのだが。

1号機~6号機

新規事項なし

◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送実施(平成26年8月15日午前10時~8月21日午後7時13分)

※滞留水移送は停止中

3号機 ~使用済み燃料プールからの燃料交換機本体撤去作業をようやく再開。それにともない、プールの冷却を原則月曜日~土曜日の間停止

1号機と同じ4項目に加え、
3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年8月19日午後4時18分~)

※滞留水移送は実施中

※使用済燃料プール内の燃料交換機本体撤去作業については、5月16日に当該作業で使用していたクローラクレーンに不具合が確認されたため、中断していた。

その後、予定していたクローラクレーンの年次点検にあわせて、不具合箇所の修理が完了したことから、8月25日より当該作業を再開することとした。

作業の再開に伴い、燃料交換機撤去対象機器に残存している油が使用済燃料プール代替冷却系に混入することを防止するため、8月25日~10月中旬(予定)の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間、当該冷却系を停止する(停止時間は最長で129時間、毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)。

なお、冷却停止時の使用済燃料プール水温度は28.4℃、冷却停止時のプール水温度上昇率評価値は0.114℃/hで、停止中のプール水温上昇は約15℃と評価されることから、運転上の制限値65℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題ない。また、水温は運転上の制限値65℃に十分な余裕を持った45℃を超えることがないよう、同冷却系停止前のプール水温度を29℃以下として管理する。

<作業実績>
8月25日午前5時50分停止(停止時温度:28.4℃)

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年8月25日

5月17日に使用済み燃料プールの冷却再開を発表して以来、5月30日になってようやくクレーンの不具合について公表。約3カ月後になって、ようやく作業再開。クレーンの不具合とは具体的にはどのようなことだったのか?

4号機 ~使用済み燃料プールの配管交換のため、60時間の予定でプール冷却を停止

・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動(4号機原子炉建屋および共用プール建屋の天井クレーンと燃料交換機の年次点検により、一時中断)
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

※8月25日午前4時53分、使用済燃料プール代替冷却系について、当該系の循環冷却設備一次系フレキシブルチューブの交換等を行うため、冷却を停止(停止時プール水温度:27.3℃)。

停止期間は約60時間を予定しており、冷却停止時のプール水温度上昇率評価値は0.266℃/hであることから、停止中のプール水温上昇は約16℃と評価。運転上の制限値65℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温管理上問題はない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年8月25日

破損が問題になったフレキシブルチューブがいまだに使われていたとのこと。ポリエチレン管などに交換されるかどうかは不明。

5号機~6号機

新規事項なし

◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

共用プール・水処理設備および貯蔵設備

新規事項なし

◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。

◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中

地下水バイパス ~海洋排出量は2,203トン

8月24日午前10時から海洋への排水を開始。同日午前10時16分に漏えい等の異常がないことを確認。(ここまで既出)

同日午後6時54分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。なお、排水量は2,203m3。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年8月25日

H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果

◆最新のパトロール

8月24日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年8月25日

◆H4エリア

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年8月25日

◆H6エリア

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年8月25日

1~4号機タービン建屋東側

新規事項なし

1~4号機サブドレン観測井 ~3号機建屋山側サブドレン(N10)水の分析結果

8月21日に3号機建屋山側サブドレン(N10)にて採取した水の分析結果は、セシウム134が検出限界値未満(検出限界値:0.62 Bq/L)、セシウム137が2.4 Bq/L、全ベータ放射能濃度は検出限界値未満(検出限界値:15 Bq/L)、トリチウム値は60 Bq/L。今後も引き続き監視を継続する。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年8月25日

サブドレン観測井で行われるサンプリングは、溜まり水から検出された放射性物質が、フォールアウト(事故による放射性物質の降下)に由来するものではないかと睨んでの調査とのこと。

地下貯水槽

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年8月25日

以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年8月25日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太