検出限界濃度計算に誤り。9カ月にわたって

7月23日、東京電力は「5・6号機ホットラボ分析試料における検出限界濃度計算値の修正について」との参考資料を発表した。内容は昨年6月から今年3月までの期間に採取したサンプルの全アルファ放射能分析36件中、32件で検出限界濃度計算に誤りがあったというもの。

「5・6号機ホットラボ分析試料における検出限界濃度計算値の修正について | 東京電力 平成26年7月23日」3ページ

誤りの内訳は、検出限界濃度を高く算出していた試料が4件,検出限界濃度を低く算出していた試料が28件という。東京電力の資料では高く算出したものを赤枠囲みで、低く算出したものを青枠囲みで表記しているが、低く計算していたが実は高かったという後者(青枠囲み)の方が「心配なケース」であることは言うまでもない。

いずれのサンプルも検出限界以下ということだが、検出限界ぎりぎりの放射能を持っている可能性は排除できない。

修正後の検出限界値で見て、もっとも高いのは「<2.9E-03」という数値。1リットル当たりに換算すると、2.9Bq/Lになる。

たしかに高い数値ではないかもしれないが、アルファ線は電離作用がベータ線やガンマ線に比べて非常に強い(その代り透過力は弱い)ため、体内に取り込んだり、皮膚に接触することで人体が受けるダメージは大きくなる。

東京電力の資料は「全て検出限界値未満(ND)であった。」と記すが、NDだから大した問題ではないとは言えない。

情報が共有できないまま放射能濃度を計算

「5・6号機ホットラボ分析試料における検出限界濃度計算値の修正について | 東京電力 平成26年7月23日」1ページ

誤りが生じた原因は深刻だ。

放射能(ベクレル)は、1kgあたりとか1Lあたりなど単位重量(容積)あたりで算出されるものだ。測定機に入れるサンプルの量がどれだけなのか、正確な数値がなければそもそも計算することができない。

東京電力による原因推定によると、試料量(サンプルの量)そのものが2種類記載されていたとされる。さらに、前処理を行う場所と放射能濃度測定を行う場所との間で資料についての情報が共有できていなかったという。

試料の情報とはつまりサンプルの量に他ならない。なければ計算できないはずの情報が欠如したり、試料量が2種類あったりする状況(つまり計算できない状況)で、36件中32件の誤データが公表されていたというわけだ。

繰り返します。NDだから、数値が小さいからという問題ではありません

その数値がなければ計算できないはずなのに、どうして公表データとして発表されていたのか。それも約9カ月にわたってだ。情報の共有ができていなかったという意味が、「情報があったかなかったか」ではなく「曖昧な情報しか共有できなかった」ということだったとしても、公表前に必ず行われえているであろうチェックを潜り抜け、

36件中32件、つまり88.89%もの歩留まりで誤データが公表されていた。

この事実はあまりにも重大だ。逆に、正しく算出された4件が間違えなかった理由を知りたいくらい。

マスコミにもあまり取り上げられていない問題だが、東京電力の発表の信憑性が根底から問われかねない大問題であることは言うまでもない。

文●井上良太