復興バー@銀座「出張日和キッチン」

今回の「銀座」メニューは記事の下の方に! 見てね ♪

石巻の1stベースとして誕生した日和キッチン

帰りの新幹線の中でランチパック(夜なのにランチとはこれいかに!)をカバンから出したら、牡鹿半島の鹿がそっとこっちを見つめていた。

今年で2回目となる復興バー銀座。石巻の復興バーが石巻のお祭り川開きに先立って、東京銀座で期間限定で開店。毎日、石巻界隈のすてきな人たちが日替わりマスターとして銀座の臨時店舗を取り仕切る。昨日の夜は「日和キッチン」ナイトだった。

震災の後、多くのボランティアさんが訪れた石巻。夜行バスを利用して石巻入りする人が多かったが、バスが到着する午前6時頃にはバス停がある石巻駅周辺には開いているお店はなかった。分かりにくい場所にコンビニが1軒あるだけ。一番近いファミレスも徒歩20分ほどの遠方にあるだけ。せっかく東京方面から夜行バスでやってきても、活動開始までの数時間、ボランティアさん達はなすすべもなく駅前にたむろするしかなかった。

そんな中、早朝営業を掲げてオープンした日和キッチンはボランティアさんにとっての福音だった。駅近くのお店に入れば、東京から夜行バスで通い続けた(いまも通い続けている)オーナーで建築家の天野さん、お店のデザイン面を担当する山崎さん、石巻のお母さん的存在の菊田さんたちが笑顔で迎えてくれる。菊田さんの手になる石巻の家庭料理の朝食がほっこりあったかい。南三陸出身の高橋さんが焼くパンがほっぺをとろけさせる。

夜行バスで訪れた人たちの「居場所」ってだけじゃない。日和キッチンの料理は、石巻の家庭料理と、牡鹿半島で獲れるシカやイノシシなど天然の素材をふんだんに使ったジビエ料理。ここでしか経験できない味がある。

うん、そのために日和キッチンの皆さんは日々精進されているんだけど、本当はね、そうやってがんばってる皆さんたちこそが、日和キッチンの一番の宝物なんです。

ボランティアさんがやってくる週末の早朝にオープンしている駅前のお店。きっとみんな「ありがたいな」と思って最初にはお店のドアを開けたんだと思う。だけど、お店に入って雰囲気と料理に接する中で、もっと違った経験をすることになる。もちろん、日和キッチンに行けば石巻の「いま」とか、「おすすめの情報」に出会えたりもする。日和キッチンで教えてもらった情報で、石巻体験が思っていた以上に素敵なものになったりもする。駅のすぐ近くにある日和キッチンは石巻の第一キャンプみたいな存在だ。だけど、それだけじゃない。

照れくさいけど言わせてね「誠実さ」って言葉

ランチボックスの鹿さんに見つめられて、ついつい日和キッチンとのつながりを遡って考えてしまった。退屈でしたねごめんなさい。でも、あと少しだけ語らせてください。

オーナーの天野さんのFBでの口ぐせは「メモメモ」です。誰かに新しいことを教えてもらったとき、「いい話を教えてもらってありがたいな。忘れないようにちゃんと憶えておかなければ」と思うような方なのです。

石巻のお母さん菊田さんは、尋ねればたくさんお話ししてくれますが、お話ししてくれながらも相手の言葉に耳を傾け続けるようなお母さん。たくさんおしゃべりしてくれるのは、相手の言葉を引き出そうとしているのかなって方。

パン職人でシェフの高橋さんには、今回お会いしたときにも、あー今晩は〜の挨拶に続いて、「この間は忙しくてあまりお話しすることができなくて、ほんとうにごめんなさい」とGWに息子と一緒に日和キッチンを訪ねたときのことを謝られてしまった。彼女が作ったパンを食べれば、彼女の誠実さが理屈抜きに伝わってきます。

アーティストの山崎さんはもう言うまでもなく、目です。まなざしが言葉の数十倍もたくさんのことを語ってくれる。アボカドの種が芽を出したかどうかなんて、まるで暗号みたいな話で「通話」できる方。

2年目となる復興バー銀座への出店、台風接近中の悪天候の中たくさんの人たちが集まったのは、石巻の町に誕生した日和キッチンという「人たち」のまっすぐで誠実な気持ちが、台風よりももっと強く素敵にたくさんの人たちを引きつけたからなんだと思う。たぶん間違いないね。

お弁当箱を開けたら「エッ! ホヤ!?」素子お母さんのおつまみ弁当…1,000円

石巻のお母さん、菊田さんが作るあったかい石巻の味を詰め込んだおつまみ弁当。
女川マルキチ蒸しホヤ+油麩の含め煮+東松島の枝豆+米の太田屋さんのササシグレおむすび2種(伊達の旨塩、ひじき混ぜご飯)

お腹を空かせて出かけてね。ふたを開けた瞬間の驚きを、ここで明かして申し訳ないけど。ホヤが入ったお弁当は初めてでした。びっくりなんてもんじゃない。見た目もお味も。またまた驚きはお米のおいしさ。こりゃ言葉で表現できません。行って食べてくださいね。関東の方には油麩というのはなじみが薄いかもしれませんが、ただの麩じゃない! この油麩だけで丼料理にする地域もあるほど。日本酒が進みます。

東北の農家さんと情報で連携しているわたくしですが、枝豆がもう生っているいるとは驚き! 「おつまみ弁当」って謳うなら枝豆でしょ、と菊田さんたちが探し歩いた石巻のお隣の町、東松島市の枝豆です。んんめ〜んから。

キヨミッティの石巻オープンサンド…1,000円

テイクアウトしたのでちょっとへたれてますが旨い!

日和キッチンのカンパーニュに金華卵のスクランブルエッグ、丸信ワイルドミートの鹿の生ハムとソーセージ、石巻依ろ祥心会のバジルを使ったポテトジェノバソース、伯楽屋の米粉パンに燻し亭「哲ちゃん」のスモークサーモンを挟んだ豪華オープンサンド!

そのほか、日和キッチン定番のミニ鹿カレー(500円)、石巻のお家ご飯の定番おくずかけ(500円)、アルコール、ソフトドリンクともすべて500円!

GWに一度行ったっきり、しっかりファンになった息子に連絡したら「絶対テイクアウトしてきて!」ご要望に応えて持ち帰ったけど、本当はその場で食べさせたかった。

ここには僕と同じように日和キッチン経験に「ぐっ」と来た人ばかりが集まっている。台風の雨の中でも集った人たちは、きっとけっこう相当なもんだろう。そんな人たちと話しながら食事をして、お酒をいただく。

ブログで見たことがある人がいる。Facebookで知っているだけって人がいる。FBでは友達だけど初めて会ったって人がいる。「●○さん?」って声を掛け合って、「あー○●さんの友達なんだ」と仲良くなっていく。

この次、どこかで出会ったら、「見たことあるような気がするけど誰だっけ?」じゃなく、「久しぶり」って握手から話が始まる。

天野さん、応援しているよ、がんばって!

復興バー銀座の1階でアテンドする天野さん ♪

今年の「復興バー銀座・出張☆日和キッチン」は残念ながら台風接近最中の開催。それでも店内は立錐の余地もないくらいの大盛況。そして、帰っていくみんながオーナーの天野さんに挨拶していくのさ。

「天野さん、応援してるよ、がんばって!」って。

開店のコンセプトも秀逸だった。たくさんの来店が応えてくれた。だけど、そこでつながっていったものの大きさを思わずにはいられない。復興バー銀座の出張☆日和キッチンにやってきた人たちはみんなそれを知ってる。

石巻に行って、そのお店のドアを開けばそこにいる人たち。そこから先に広がっていく石巻のたくさんの人たち。つなげてきたのは日和キッチンの方々の誠実さ。

次は石巻でねっ! って言葉のやさしくて嬉しいこと

右から菊田さん、高橋さん、山崎さんと山崎さんの弟さん ♪

復興バー銀座の出張☆日和キッチン。ずっとそこにいたくなるくらいだが、訪れたお客さんはみんな、どこかに帰っていかなければならない。当たり前のことなんだけど。

そして、みんな別れ際にこう言い合っていたんだ。

「今日は会えてよかった。次は石巻でね」

そんな出会いの場所、復興バー銀座の出張☆日和キッチン。まさに2日目の開店です!

こちらもお見逃しなく!

写真と文●井上良太