東京電力が空撮や望遠カメラでの撮影をしないよう「お願い」

核施設を守るためだから、望遠で撮らないでと要請

これくらいならOK? 国道6号線から排気塔とクレーンだけが見通せる第一原発

東京電力は「報道関係各位一斉メール」として、平成26年6月2日付で「福島第一原子力発電所における核物質防護に関するご留意のお願い」を公表した。

3回目となった地下水バイパスの実施と凍土遮水壁工事が始まったこの日、一部のメディアが空撮で現場周辺を撮影、配信したことを受けての声明と見られる。

動画サイトYouTubeにはNHK、TBS News-i、FNNnewsCH、FNNローカルなどが6月2日に放送したニュース映像が投稿されている。いずれも現地での取材映像と空撮映像を合わせて構成されたものだった。

この日の声明で東京電力は、「建屋の出入口、フェンス、センサー、カメラなどの核物質防護設備を望遠カメラ等で撮影をすることはご遠慮いただきますようお願いいたします」としているが、地下水バイパスの水が海に流れ出る様子や、遮水壁工事現場を望遠カメラで撮影した映像が、防護上特別に重要であるとも思えない。建屋の出入り口やフェンスなどの場所や形状などは、これまでに東京電力が公開してきた資料などからも、すでに大部分が公になっている。

事故原発の収拾を希望し、見守っている国民の1人として、東京電力のこの声明が、メディアによる取材の自主規制や萎縮に結びつかないことを切に希望する。

参考資料の引用

報道関係各位一斉メール 2014年
福島第一原子力発電所における核物質防護に関するご留意のお願い

平成26年6月2日
東京電力株式会社

 福島第一原子力発電所における地下水バイパスの排水作業ならびに凍土遮水壁の設置作業について、一部の報道機関より空撮映像が放映・掲載されております。

 これらの放映された映像の中には、規制当局から情報管理の徹底を指導されている、原子炉等規制法に定められる「特定核燃料物質の防護のために講ずべき措置」に抵触する事項が含まれております。

 再三お願いをしているところですが、今後も、核物質防護上、建屋の出入口、フェンス、センサー、カメラなどの核物質防護設備を望遠カメラ等で撮影をすることはご遠慮いただきますようお願いいたします。

 *核物質防護:核物質の盗取又は不法移転、及び個人又は集団による原子力施設の妨害破壊行為に対し、核物質や原子力施設を守ること。

以 上

引用元:福島第一原子力発電所における核物質防護に関するご留意のお願い|東京電力 平成26年6月2日

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
(昭和三十二年六月十日法律第百六十六号)

最終改正:平成二五年一一月二二日法律第八二号

(保安及び特定核燃料物質の防護のために講ずべき措置)
第四十三条の三の二十二  発電用原子炉設置者は、次の事項について、原子力規制委員会規則で定めるところにより、保安のために必要な措置(重大事故が生じた場合における措置に関する事項を含む。)を講じなければならない。
一  発電用原子炉施設の保全
二  発電用原子炉の運転
三  核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の運搬、貯蔵又は廃棄(運搬及び廃棄にあつては、発電用原子炉施設を設置した工場又は事業所において行われる運搬又は廃棄に限る。次条第一項において同じ。)
2  発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施設を設置した工場又は事業所において特定核燃料物質を取り扱う場合で政令で定める場合には、原子力規制委員会規則で定めるところにより、防護措置を講じなければならない。

引用元:核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律

特定原子力施設への指定に際し東京電力株式会社福島第一原子力発電所に対して求める措置を講ずべき事項について

平成24年11月17日
原子力規制委員会決定

14.設計上の考慮
(3)外部人為事象に対する設計上の考慮
 ・安全機能を有する構築物、系統及び機器は、想定される外部人為事象によって、施設の安全性を損なうことのない設計であること。
 ・安全機能を有する構築物、系統及び機器に対する第三者の不法な接近等に対し、これを防護するため、適切な措置を講じた設計であること。

引用元:特定原子力施設への指定に際し東京電力株式会社福島第一原子力発電所に対して求める措置を講ずべき事項について 平成24年11月17日 原子力規制委員会

防護措置をとる主体は発電用原子炉設置者(東京電力)であり、見ちゃいかんというのは筋違いと言うほかない。まさか「報道機関に対して取材の遠慮を求める」そのことを防護の手段のひとつと考えているわけではないだろう。もしも防護上の穴があることを恐れているのであれば、一刻も早く改修等の対応をとるべきだ。

文●井上良太