2014年5月23日 今日の東電プレスリリース

多核種除去設備(ALPS)B系が66日ぶりに処理運転再開。3系統すべて揃うのは6月中旬の予定

5月23日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。

H4タンクエリア堰内の雨水移送で漏えい(続報)

H4タンクエリア堰内水の分析結果を続報

H4タンクエリア堰内雨水の分析結果は以下のとおりであり、堰内雨水の排水基準を下回っていた。

・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:11 Bq/L)
・セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:17 Bq/L)
・全ベータ:16 Bq/L
・ストロンチウム90:6 Bq/L(簡易測定)

漏えい量については、移送ポンプの稼働時間と漏えい状況から、最大で約4m3と推定。なお、漏えい水は外周堰内に留まっていることから、海への流出はないものと考えている。当該移送ホースが割れた原因は、ホースの破損状況から、踏み付け等の外荷重によりホースが割れたものと推定。対策として、当該ラインを含めた同様な移送ラインの外観確認を行い、同様な箇所が無いかを確認するとともに、再発防止のため、ホースの踏み付け防止の「注意喚起表示」の取り付けを行う。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月23日

多核種除去設備(ALPS)C系、B系についての続報

◆多核種除去設備(ALPS)C系:
処理運転中を行っていたところ、5月20日の定例のサンプリングで、系統水に若干の白濁があること、カルシウム濃度が高いことを確認。処理運転を停止し、循環待機運転に切り替えている。

その後、C系の各クロスフローフィルタ*1出口水をサンプリングした結果、クロスフローフィルタ(7C)および(8C)の出口水に若干の白濁を確認したことから、当該フィルタから炭酸塩スラリー*2が流出してC系のブースターポンプ*31出口水が白濁およびカルシウム濃度が高くなったことが分かった。

なお、クロスフローフィルタ下流に設置してある吸着塔においてカルシウム濃度の上昇が確認されていないことから、炭酸塩の流出範囲は限定されると推定。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月23日

◆多核種除去設備(ALPS)B系:
炭酸塩スラリーがろ過ライン側へ流出し、処理水の放射能レベルが高いことが確認されたため、3月18日より処理運転を停止中。

その後、原因調査において、クロスフローフィルタのガスケットの一部に欠損や微小な傷が確認されたことから、その対策として改良型クロスフローフィルタに交換することとしていた。

B系については、系統の洗浄および改良型クロスフローフィルタへの交換が完了したことから、5月23日午後0時48分に処理運転を再開。処理再開後の運転状態に異常はない。

なお、現在停止しているA系とC系については、改良型クロスフローフィルタに交換し、A系は6月上旬頃に、C系は6月中旬頃に処理運転を再開する予定。
*1:クロスフローフィルタ
 後段の吸着塔でストロンチウム吸着を阻害するイオン(マグネシウムやカルシウム等)の炭酸塩を除去するフィルタ
*2:炭酸塩スラリー
 金属系の性質を含んだスラッジ(汚泥のようなもの)
*3:ブースターポンプ
 鉄共沈処理(有機物の除去、α核種の除去)や炭酸塩沈殿処理などをした水を吸着塔へ送るポンプ

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月23日

5,6号機北側、Fタンクエリア滞留水処理装置で漏えい(続報)

5月15日に発見された5,6号機北側Fタンクエリア滞留水処理装置(淡水化装置)からの水漏れについて、推定される原因を公表

その後の調査により、漏えいした原因は以下のとおり推定。

・濃縮水に含まれるカルシウムやマグネシウム成分が、除々に配管内に析出し、その析出物が下流側の逆止弁に堆積したことにより、濃縮水ラインが閉塞した。

・その影響により、当該ラインの圧力が上昇し、安全弁排出ラインのホースが内圧に耐えられずに破損した。

処置として、破損したホースの交換、閉塞した逆止弁の析出物の除去、および濃縮水ラインの他の弁及び計装品、配管の清掃を実施。

なお、再発防止対策については以下のとおり。

・安全弁下流側の排出先を濃縮水ラインから分離し、RO装置の上流側に設置されている取水槽へ繋がるラインを敷設した。

・濃縮水ラインに設置されている透明のアクリル配管部にて、析出物の付着状況の確認を日常点検にて行う。また、濃縮水ラインに設置する圧力指示を日常点検時に確認し、圧力の上昇傾向が確認された場合、ラインの点検清掃を行う。

今後、準備が出来次第、RO装置の運転を再開する予定。なお、濃縮水ラインの圧力を検出するための圧力計設置は、運転開始後、準備が整い次第実施。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月23日

海水の淡水化プラントや人工透析でも活用されているRO装置(逆浸透膜装置)は、いわば「こなれた技術」ですが、それでも事故原発での運用にはさまざまな困難があるということです。

1号機~6号機

新規事項なし

◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月17日午前9時57分~)

◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月19日午前10時6分~)

※使用済燃料プール循環冷却系については、使用済燃料プール内の燃料交換機本体撤去作業に伴い、4月23日~6月上旬の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間停止予定(停止時間は最長で129時間、毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)。また、水温は運転上の制限値65℃に十分な余裕を持った45℃を超えることがないよう、同冷却系停止前のプール水温度を29℃以下として管理する。
 <最新の作業実績>
5月17日午前11時7分起動(起動後の温度:24.4℃)

◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況

新規事項なし

◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中

地下水バイパス揚水井の状況

新規事項なし

※地下水バイパス揚水井No.1~12のサンプリングを継続実施中。

焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果

<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では2.6cmの上昇。引き続き監視を継続。
5月23日午後2時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ20.2 cm(4月14日移送停止後と比較し、2.6cm増)
・工作建屋:5月16日午前10時30分、回収作業が完了。

<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月23日

素人考えでは、溜めておいている水は、少しずつ蒸発して減っていくのが当然と思いますが、焼却建屋では4月14日から約40日で2.6センチの水位上昇。気温上昇による水の体積増加とか、水が溜まっている建屋の収縮などさまざまな要因で水位は変動するようですが、2.6センチという上昇幅はそろそろ「原因を突き止めなければならない」レベルなのではないでしょうか。

H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果

◆最新のパトロール

<最新のパトロール結果>
5月22日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月23日

◆H4エリア

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月23日

◆H6エリア

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月23日

1~4号機タービン建屋東側の状況

新規事項なし

1~4号機サブドレン観測井の状況

新規事項なし

地下貯水槽の状況

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月23日

以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年5月23日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太