地下水バイパスは海への排出へ。一方、多核種除去装置(ALPS)は3系とも停止。集中廃棄物処理施設では地下水漏れ。多難過ぎる汚染水処理
5月20日(火曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
地下水バイパス、21日午前に排水開始へ(報道関係各位一斉メール)
福島第一原子力発電所1~4号機原子炉建屋等への地下水流入抑制対策として設置した地下水バイパス設備については、現状における地下水の水質確認を行うため、4月9日より揚水ポンプを順次起動し、地下水バイパス揚水井から地下水の汲み上げを行ってきました。
汲み上げた地下水は、一時貯留タンクに貯留した後に水質確認を行っておりますが、当社および第三者機関による分析結果において、運用目標値を満足していたことから、5月21日午前中、準備が整い次第、海洋への排水を開始する予定です。
一時貯留タンクの詳細分析結果については、当社ホームページに掲載しておりますので、ご参照願います。
URL:http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2014/images/bypastank_140514_01-j.pdf
多核種除去設備(ALPS)が3系統とも処理運転停止。C系でも白濁水
※多核種除去設備(ALPS)C系については処理運転中のところ、5月20日の定例のサンプリングにおいて、系統水に若干の白濁があること、カルシウム濃度が高いことを確認。
このため、多核種除去設備(ALPS)C系について、同日午前9時、処理運転を停止し、循環待機運転に切り替えた。
系統水の分析結果については、以下の通り。
[5月20日採水]
・C系の系統出口水:全ベータ 400 Bq/L
この値は、前回(5月19日)採取した水の分析結果(290 Bq/L)と比較しても、通常の変動の範囲内であった。
このことから、系統下流側(サンプルタンク等)への汚染等の影響はないと判断した。引き続き原因を調査していく。
多核種除去設備(ALPS)A系,B系停止の原因は、「放射線劣化によるガスケット損傷」と推定
※多核種除去設備(ALPS)B系出口水に高い放射能濃度(全ベータ)が確認されたこと、およびA系のブースターポンプ*11出口側水の炭酸塩スラリー流出による白濁に関連し、
B系のクロスフローフィルタ*23B、およびA系のクロスフローフィルタ7A、8Aの分解調査を実施。
その結果、ガスケットの一部に欠損や微小な傷が確認されたことから、当該部から炭酸塩スラリーが流出したと評価。
加えて、当該ガスケットは放射線劣化により脆化していることが確認され、このため、脆化したガスケットに圧力脈動等が加わったことで欠損したと推定。また、A系のクロスフローフィルタ5Aについても、同様の現象が発生したものと推定。
対策として、ガスケットの材質を耐放射線性に優れる合成ゴムに取替え、ガスケットを二重化Oリングに変更する。
現在停止しているA系、B系については、対策を施したクロスフローフィルタ(改良型クロスフローフィルタ)に交換する。
*1:ブースターポンプ
鉄共沈処理(有機物の除去、α核種の除去)や炭酸塩沈殿処理などをした水を吸着塔へ送るポンプ
*2:クロスフローフィルタ
後段の吸着塔でストロンチウム吸着を阻害するイオン(マグネシウムやカルシウム等)の炭酸塩を除去するフィルタ
集中廃棄物処理施設のトレンチに工事であけた孔から地下水が流入した模様
集中廃棄物処理施設と呼ばれる建屋群の「高温焼却炉建屋」と「プロセス主建屋」の間にあるトレンチ内部の水位が4時間で14cm以上上昇。すぐ近くでトレンチにグラウト材を充填するための準備作業でトレンチ天井部に4カ所の孔をあける作業をしていたところ、1カ所の孔で地下水と思われる水が流れ込む音がした。
これを受けて、トレンチ内部の水を高温焼却炉建屋に移送するとともに、ファイバースコープによるトレンチ内部の状況確認、トレンチ内の水の分析を行ったことを記載。
※5月19日、集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)と集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)間のトレンチ内部の水位が同日午後0時から同日午後4時の約4時間で2461mmから2606mmに上昇したことを確認。
このため、至近で行われていた現場作業を確認したところ、集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)と集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)間トレンチのグラウト充填工事の準備作業として、トレンチ天井部に地表面から4箇所の孔を開ける作業を実施しており、その内、1箇所の孔より地下水と思われる水が流れ込む音を午後10時55分頃確認。
これを受けて、トレンチ内部の水を集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ移送するとともに、ファイバースコープによるトレンチ内部の状況確認、トレンチ内の水の分析をすることとした。
5月20日午前0時5分、集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へのトレンチ内部の水の移送を開始し、同日午前0時15分に漏えい等、異常がないことを確認。また、採取したトレンチ内の水の分析結果は以下の通り。
・高温焼却炉建屋-プロセス主建屋間トレンチ滞留水(立坑付近)(5月19日午後11時20分採水)
セシウム134:3.7×10^6Bq/L
セシウム137:1.0×10^7Bq/L
・高温焼却炉建屋-プロセス主建屋間トレンチ滞留水(掘削口付近)(5月20日午前2時20分採水)
セシウム134:4.8×10^1Bq/L
セシウム137:1.5×10^2Bq/L
トレンチ内に流入している水(掘削口付近)の分析結果は焼却工作建屋西側サブドレン水の濃度とほぼ同等であったことから、トレンチ内に流入している水は地下水であると判断。なお、トレンチ内に滞留している水は集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)および集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)に滞留している汚染水の濃度とほぼ同等である。また、5月20日午前7時時点のトレンチ内の水位は2447mm。現在、トレンチ内への水の流入箇所について、止水処理を実施中。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月17日午前9時57分~)
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月19日午前10時6分~)
※使用済燃料プール循環冷却系については、使用済燃料プール内の燃料交換機本体撤去作業に伴い、4月23日~6月上旬の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間停止予定(停止時間は最長で129時間、毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)。また、水温は運転上の制限値65℃に十分な余裕を持った45℃を超えることがないよう、同冷却系停止前のプール水温度を29℃以下として管理する。
<最新の作業実績>
5月17日午前11時7分起動(起動後の温度:24.4℃)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
地下水バイパス揚水井の状況
新規事項なし
※地下水バイパス揚水井No.1~12のサンプリングを継続実施中。
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では2.2cmの上昇。引き続き監視を継続。
5月20日午後2時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ19.8cm(4月14日移送停止後と比較し、2.2cm増)
・工作建屋:5月16日午前10時30分、回収作業が完了。
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
5月19日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井の状況
新規事項なし
地下貯水槽の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年5月20日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太