おすすめの国 トルコ編 ~Vol.3 エフェス~

前回の観光スポット

トルコ中央部の高原に位置する「カッパドキア」。広大な岩稜地帯には、キノコ型など、様々な形状の奇岩が立っており、世にも不思議な景観を見ることができる。

数あるトルコの観光名所の中でも、同国を代表するスポットであり、世界遺産(ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群)に指定されている。

世界屈指のローマ遺跡・エフェス都市遺跡

エフェス・セルシウス図書館

古代ローマ遺跡というと、イタリアを思い浮かべる人もいるかもしれないが、トルコにも保存状態、規模において、本場イタリアに劣らないものがある。

トルコの西、エーゲ海沿岸にある都市遺跡、エフェス(エフェソス)だ。エフェスは、同国を代表する古代遺跡であり、遺跡好きには、はずせない場所である。

エフェスの最寄の街、セルチュクについて

個人旅行者が、エフェスを観光する際には、最寄り町のセルチュクに宿泊するのが一般的だろう。セルチュクには安宿が多くあり、ぼくもセルチュクに到着すると宿を探し、エフェス観光の拠点とした。

ビザンツ時代に造られたアヤスルク要塞が、小高い丘の上に立っており、街のいたるところから見ることができる。人口約2万3千人と、大きくもなく、かといって小さくもない、ほど良い大きさの街である。

セルチュクの町からエフェスの都市遺跡までは、約3キロほどの距離である。タクシーなどを利用するのもいいかもしれないが、ぼくは、歩いてエフェスへ向かった。途中には、世界七不思議のひとつに名を連ねるアルテミス神殿跡があり、エフェスへ行く途中に立ち寄ってみた。現在は、復元された巨大な柱が一本立っているだけのため、事前に調べて、建築当時の姿をイメージできるようにしておいたほうがいいと思う。

そのほか、セルチュクの街には、エフェスから発掘されたものを展示しているエフェス考古学博物館がある。エフェスの都市遺跡とセットで見学するといいかもしれない。

アルテミス神殿の模型

commons.wikimedia.org

エフェスについて

エフェスは、紀元前11世紀ころに、ギリシャから移り住んだイオニア人が街を造り、定住し始めたと言われている。紀元前7世紀には、世界七不思議のひとつ、アルテミス神殿が造られている。同神殿については、次のように言われている(※その他の説もあり)。

トルコ西部地中海沿岸にある貿易都市エフェス(「エフェソス」ともいう)に築かれた巨大な神殿。豊かな財政とパトロンの援護により、紀元前7世紀頃から120年の歳月をかけて建築された、総大理石による世界最古の神殿でもある。◇アルテミスは、ギリシア神話に登場する月の女神で、古代アナトリア地方では豊穣の女神としてあがめられ、当時は、小アジア全域で信仰されていたという。紀元前356年の放火で全焼して以来、修復されるたびに他民族の侵入によって、7回崩れ落ちて7度直されたといわれ、古代七不思議の一つとされる。以後、再建の際には、アテネのパルテノン神殿に対抗した大規模な改修が行われ、奥行60m、幅120m、高さ19mの129本の柱に囲まれた神殿は、パルテノンの4倍もの大きさがあったといわれている。

引用元:アルテミス神殿 とは - コトバンク

ちなみに引用中に書かれている、紀元前356年の放火は、ヘロストラトスという男が、有名になりたいという動機で火をつけたそうだ。

その後、エフェスはペルシャ人、マケドニア王国などの様々な国の支配を受けた後に、共和制ローマの支配下に入り、帝政ローマ時代に最盛期を迎えたという。
エフェスの都市は、海岸からおよそ7㎞の地点にあるが、当時は港があり、運河で海とつながっていたという。

エフェス出身の有名な人物には、「万物は流転する(※「すべてのものは変化し続け、永遠に不変なものはない」の意味)」という言葉で有名な、紀元前6世紀頃のギリシャの哲学者・ヘラクレイトスがいる。

現在、エフェスに残っているほとんど遺跡は、ローマ時代のものと言われている。いずれも見ごたえのあるものばかりだが、そのなかでも、特に有名で、おすすめなものとして、次の2つがある。


■セルシウス(ケルスス)図書館

エフェスを代表する建築物のひとつ。蔵書1万冊以上を誇った図書館で、当時、世界三大図書館のひとつであった。この地方の総督をつとめたセルシウスの子供が、亡くなった父を偲んで、西暦135年に建てたものだという。建物の正面部分が復元されており、精細なレリーフを見ることができる。

■大劇場
 紀元前3世紀に造られたと言われる古代劇場で、その大きさは半径約151m、
 高さ約30m、収容人数は約2万4千人という。音響効果に優れ、過去には、
 レイ・チャールズなどの有名人によるコンサートも行われたのだとか。
 観客席からは、当時あったエフェスの港へと続く、アルカディアン通りの全貌を
 眺めることができる。
 個人的には、遺跡に歩き疲れて、通りの先にある古代の港と海を想像しながら、
 休憩をしていた思い出の強い場所である。
 日差しが強くない季節には、いい休憩場所になるかもしれない?!

■その他
 上記以外で個人的に強く印象に残っているのが、「アルカディアン通り」。
 アルカディアン通りは、大劇場前から、古代エフェス港へとつながる道だった。
 幅11m、長さ500mの通りで、両脇には商店が立ち並び、夜になると街灯が
 灯されたという。エジプトの女王・クレオパトラとローマの将軍・アントニウスが
 共に歩いた道と言われている。通りの先に広がっていた港を想像しながら、
 クレオパトラも通った道を歩くと、それだけで楽しく、感慨深いものがある。
 ちなみ、エフェスの港は、付近の山から流れ出る土砂によって埋められてしまっ
 たという。繁栄を誇ったエフェスが衰退した理由は、港を失ってしまったからだ
 とも言われている。

【セルチュク近郊】その他の見どころ

時間の関係で、行くことができなかったが、セルチュク近郊には、アルテミス神殿やエフェス考古学博物館以外にも見どころがある。

■聖母マリアの家
 エフェスの都市遺跡から南へ道なりに5㎞ほど行った所に、イエス・キリスト
 の母、聖母マリアが晩年を過ごし、最期を迎えたと言われる場所がある。
 現在は教会が建てられている。

■聖ヨハネ教会
 アルテミス神殿跡から北へ500mほどの所に、キリスト教12使徒のひとり
 ヨハネが晩年、聖母マリアとともに過ごして没したとされている場所がある。
 6世紀に建てられた教会の一部が残っている。
 

観光名所ではないが、トルコには「エフェスビール」という、同国では国民的なビールがある。名称はエフェスの都市遺跡に由来しており、エフェス観光が終わった後に、一杯やるのも旅の楽しみだろう。

<おすすめの国 トルコ編 ~Vol.4 パムッカレ~ へ続く>

エフェス(エフェソス)

参考WEBサイト

Text & Photo(※出典元記載写真を除く):sKenji