協力企業作業員が右手小指を作業中に挟み開放骨折。原発敷地構内から搬出されるまで40分。救急車が待つ消防署まで10数分。そこからさらに病院へ。気が遠くなるような“ 救急 ”搬送
4月24日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
多核種除去設備(ALPS)A系、運転再開後に再度停止の続報。原因はヒューマンエラーか
多核種除去設備(ALPS)のA系統では、運転再開直後に処理水に白濁が見つかり、停止、装置の洗浄、再開、若干の白濁とカルシウム濃度が高いことを受けて再停止と、正常な運転が行われない状態が続いてきた。
確認したところ、前処理段階で動いているクロスフローフィルタ(薬液を混ぜて沈殿させた放射性核種と処理水を分離するフィルタ)のすべてで、一様にカルシウム濃度が高いことが判明。
炭酸塩沈殿処理が十分に行えていない可能性を疑って詳細に調査したところ、沈殿のための薬液である炭酸ソーダの手動弁が「閉」状態だったことが判明!
各クロスフローフィルタ(CFF)から一様に高いカルシウム濃度が確認されたことから、炭酸塩沈殿処理が十分に行えていない可能性があり、
詳細に調査を実施した結果、炭酸ソーダ*3供給ラインの手動弁が閉のままであることを確認。カ
ルシウム濃度上昇の原因となった炭酸ソーダ供給ラインの手動弁を開とするとともに、その他の弁等の状態に異常がないことを確認したことから、4月23日午後8時24分に処理運転を再開。
*3前処理設備で炭酸ソーダおよび苛性ソーダを注入することにより、炭酸塩スラリー(カルシウムやマグネシウム)が沈殿化され、後段のCFFで除去できるようになる。
カルシウムなどを沈殿させて分離する薬液の弁が「閉」。これでは後工程のカルシウム濃度が高くなるわけだ。弁が「閉」状態なのを見つけた作業員はどんな気持ちだっただろうか。
ヒューマンエラーが原因だったと判明したことで、運転時のマニュアル確認を徹底するための管理強化や、弁の状態の指さし確認の徹底といった対策がとられることになるのだろう。しかし、ここまでトラブルが続発すると、管理強化で改善される問題なのかと不安をおぼえてしまう。
地下水バイパス、懸案のNo.12井戸のトリチウム濃度
原子炉建屋やタービン建屋地下の高濃度滞留水にふれる前に地下水を汲み上げて、海に放出しようという地下水バイパス。建屋地下へ流入する地下水の量を減らす手段として期待されているが、地下水を汲み上げる井戸の1本のトリチウム濃度が高止まりするという困った状況があった。
4月15日に揚水井No.12の測定で、運用目標値である1,500 Bq/Lを上回る1,600 Bq/Lを記録。18日の採取分では1,200 Bq/Lと運用目的値におさまったが「念のため」に20日にもサンプルを採取。その結果についての報告。
なお、揚水井No.12については、傾向を把握するため、念のため、再度測定を行うこととし、4月20日、地下水の採水を実施。測定結果は以下のとおり。
<地下水バイパス揚水井No.12の測定結果>
(4月20日再々採取分)
・全ベータ :検出限界値未満(検出限界値:4.4 Bq/L)
・トリチウム :1,200 Bq/L
よって、4月24日公表の定例モニタリングの結果(トリチウム :1,200 Bq/L(4月22日採取分))を含め、一時貯留タンクにおいて、運用目標以上となるような影響がないことが確認できたことから、
4月24日午前10時28分、揚水井No.12から汲み上げを再開。なお、揚水井No.1~11については、4月18日からすでに汲み上げを再開している。
2回の測定で要件をクリアしたので、汲み上げを再開したとのこと。
ちなみに――
40、84、71、120、48、210、620、97、100、330、480
この数字は、揚水井No.1~No.11におけるこれまでの最高値。運用目標値内におさまっているとはいえ、No.12の1,200という数値は飛び抜けている。
協力企業作業員が右手小指を開放骨折
※4月24日午前11時13分頃、発電所構内一般焼却炉建屋において、協力企業作業員が作業中に指を挟み負傷。
入退域管理棟救急医療室にて医師の診察を受けたところ、「右手小指末節骨開放骨折」の疑いと診断され、緊急搬送の必要があることから、
同日午前11時29分に救急車を要請、同日午前11時54分に入退域管理棟救急医療室を急患移送車にて出発し、富岡消防署(救急車待機場所)に向かった。
なお、当該作業員に身体汚染はない。
原発の敷地内で怪我をすると救急搬送までに想像以上の時間がかかる。事故発生は午前11時13分頃。急患移送車(救急車ではない)が出発したのは11時54分。救急車が待機する富岡消防署までの所要時間は14分(NAVITIMEによる)。
ここから救急車で病院に向かうことになるが、旧警戒区域に病院はない。いわき市へ行くか南相馬市を目指すかということになるだろう。事故発生から病院到着までに何時間かかるのか、気が遠くなる。
救急ヘリも原発敷地内には飛ばないらしい。ヘリは離着陸の際に大量の土埃を巻き上げる。操縦士や周囲にいる人の健康被害を考えれば致し方ないことだろう。
事故原発を鎮める現場の環境はあまりにも厳しい。
事故に遭った方の回復をお祈りします。
1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
に加え、タービン建屋地下の高濃度滞留水を同じく1号機の廃棄物処理建屋へ移送を終えたことを報告
・1号機タービン建屋地下→1号機廃棄物処理建屋へ高濃度滞留水を移送実施(平成26年4月23日午後6時23分~平成26年4月24日午前9時26分)
2号機
新規事項なし
1号機と同じ4項目と、高濃度滞留水の3号機タービン建屋への移送を記載
3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系
原子炉建屋5階のオペレーションフロアで燃料交換機本体の撤去を行うため、4月23日~6月上旬の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間停止予定(毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)
加えて、3号機タービン建屋地下からの高濃度滞留水移送先を、プロセス主建屋から高温焼却炉建屋に切り替えたことについて記載
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送実施(平成26年4月21日午前9時34分~平成26年4月24日午前9時54分)
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年4月24日午前10時34分~)
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
※ 集中廃棄物処理施設内での滞留水の移送停止をこの項で報告
・4月23日午前9時49分~午後6時5分、集中廃棄物処理施設において、サイトバンカ建屋からプロセス主建屋への溜まり水の移送を実施。
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
タービン建屋から移送された高濃度滞留水を、誤って焼却建屋に移送した件で、常時監視と焼却工作建屋西側のサブドレン水の分析結果を報告。
<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では0.5cmの上昇。工作建屋では水位に変化はなかった。引き続き監視を継続。
4月24日午前6時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ18.1cm(4月14日移送停止後と比較し、0.5cm増)
・工作建屋:深さ5.0cm(4月14日移送停止後と比較し、変化なし)
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
4月23日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
サンプリング結果について記載
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井の状況
1~4号機建屋に隣接した井戸(サブドレンピット)内の溜まり水から放射性物質が検出されたのを受けて、流入経路を確認するための観測井戸を設置し確認を行っている。
新規事項なし
地下貯水槽の状況
サンプリング結果について記載
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年4月24日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に役立ちます。