ハリウッド版「ゴジラ」が引き継ぐもの

ハリウッド版の新・ゴジラのPVがすごい。
富士山の広がる山裾にある原子力発電所。核施設内でのシビアアクシデント。そして津波。破壊されていく都市。
巨大怪獣同士の決戦ものとして引き継がれてきた日本のゴジラシリーズでも、1998年のGODZILLAでもない。水爆怪獣として誕生した初代ゴジラの系譜を継ぐ映画なのではとの期待感が膨らむ。
なにしろ画面の雰囲気までもが、1954年に公開されたオリジナルのゴジラを髣髴とさせるのだ。

(以下、PVからのスクリーンショット)

webDICEの記事によると、出演している渡辺謙は、「現在の日本の苦悩が織り込まれている」と語っているという。さらにwebDICEはギャレス・エドワーズ監督のインタビューでの発言を次のように伝える。

もともと東宝の特撮映画ファンで、何カ月もかけて1954年に製作されたオリジナル版を追求したという英国人のギャレス・エドワーズ監督は、「人間が自然を支配しようとすれば過ちがおこる」とインタビューで述べており、オリジナル版の反核スピリットを踏襲していることを認めている。

引用元:原発事故と津波で始まる衝撃の米版『ゴジラ』予告編第2弾! - TOPICS - webDICE

4月5日にハリウッド版PVの第二弾が公開されてから、国内でも大きな反響があがっている。原発事故をストレートに描き、地方都市を中心とした単館上映という条件のもと大ヒットを記録した映画「朝日のあたる家」の太田隆文監督は、自身のFacebookで期待を語っている。

予告編だけで泣きそうになる.....本来は日本が作るべき映画だろう。この映画は原発事故と津波をも描いている。そしてゴジラ。予想以上の社会派映画かも。期待したい!

引用元:太田 隆文 - 予告編だけで泣きそうになる.....本来は日本が作るべき映画だろう。この映画は原発事故と津波をも描いて... | Facebook

水爆実験の影響で生まれ、最後はあらゆる生物を死滅させる「オキシジェン・デストロイヤー(水中酸素破壊剤)」によって、苦しみながら東京湾に滅びた初代ゴジラ。(映画が公開された1954年は、第五福竜丸が米軍の水爆実験で被曝した年)

ゴジラを葬ったオキシジェン・デストロイヤーだが、開発者である青年科学者・芹沢大助博士は当初、大量破壊兵器として使用されることを恐れ使用を頑なに拒んできた。しかし、たまたまテレビに映し出された被災者の姿と平和への祈りに心を動かされ、ゴジラが潜む東京湾へ潜る。そしてゴジラを屠るとともに、オキシジェン・デストロイヤーの軍事利用を防ぐため、自ら潜水具のホースを断ち切るのであった。

モノクロの暗い画面が続く中、平和への祈りのシーンのみが異様なほどのハイライトで描かれていた初代ゴジラ。怪獣映画の嚆矢と呼ばれながら、核や大量破壊兵器への反対という社会的メッセージが含意されていた初代ゴジラ。

もしかしたら、いまの日本では描くことができないかもしれない「ゴジラ」が、海の向こうで現代によみがえったのかもしれない。アメリカでの公開は2014年5月16日。

日本では7月25日に公開の予定だ。

Godzilla - Extended Look [HD]

ハリウッド版の新・ゴジラの予告編

こちらは映画『ゴジラ』の公式サイト(日本版)

文●井上良太