原発敷地内の掘削現場で災害発生との痛ましい報告がありました。お亡くなりになった方のご冥福をお祈りします。
3月28日(金曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心に見ていきます。
掘削作業中の作業員が土砂の下敷きになり死亡
◆日報の記載
※3月28日、固体廃棄物貯蔵庫にある空コンテナ倉庫付近(免震重要棟北側)で、掘削作業中の作業員が土砂の下敷きになったとの情報が午後2時30分頃に福島第一原子力発電所緊急対策本部に入る。その後、土砂の下敷きになった作業員を救出し、入退域管理棟救急医療室に搬送。なお、本人については意識がなく、心静止の状態。同日午後3時26分、救急医療室を救急車により出発し、磐城共立病院に搬送。
その後、報道関係各位一斉メール続報で、事故に遭われた方の死亡が報告されました。事故原発で命を落とされた方のご冥福を心からお祈りします。
報道関係へのメール続報などで、この災害がどのように伝えられてきたのか、公表された資料を示します。
◆報道関係各位一斉メール「福島第一原子力発電所 掘削作業中における作業員の被災について」
本日(3月28日)、固体廃棄物貯蔵庫にある空コンテナ倉庫付近(免震棟北側)で、掘削作業中の作業員が土砂の下敷きになったとの情報が午後2時30分頃に福島第一原子力発電所緊急対策本部に入りました。
現在、救出作業を行っております。
詳細についてはわかり次第、お知らせします。
以 上
◆報道関係各位一斉メール「福島第一原子力発電所 掘削作業中における作業員の被災について」(続報)
本日(3月28日)、掘削作業中の作業員が土砂の下敷きになったことに関する続報です。
土砂の下敷きになった作業員を救出し、入退域管理棟救急医療室に搬送されました。
なお、本人については意識がなく、心静止の状態です。
その後、午後3時26分、救急医療室を救急車により出発し、磐城共立病院に搬送しております。
以 上
◆報道関係各位一斉メール「福島第一原子力発電所 掘削作業中における作業員の被災について」(続報2)
本日(3月28日)、掘削作業中の作業員が土砂の下敷きになったことに関する続報です。
被災された作業員の方については、午後5時22分に磐城共立病院にて死亡が確認されました。
亡くなられた方には心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆さまには心からお悔やみ申し上げます。
なお、当該作業員は、空コンテナ倉庫北側の基礎杭補修のため、周辺地盤を2m程度掘削し建屋の基礎下でコンクリートのはつり作業を行っていました。
その際に、コンクリートと土砂が崩落し、当該作業員が下敷きになったことがわかりました。
また、災害発生の時刻は、午後2時20分頃であったことを確認しました。
現在、警察による現場確認を行っております。
当社といたしましては、今回の災害の発生原因について詳細に調査するとともに、再発防止に努めてまいります。
以 上
報道配布資料として公開された「福島第一原子力発電所掘削作業中における作業員の被災について」には、災害が発生した場所の地図と、現場写真が掲載されています。
現場写真を見て驚かされるのは、掘削現場で土砂などが崩れ落ちないようにする支保工(支える構造)があまりにも簡易的であることです。土の高さ2メートルを超える場合には、有資格者による支保工が行われなければならないと労働安勢衛生法に定められています。単管(鉄パイプ)を組み合わせたものにコンパネを当てただけでは支保工とは言えません。
発電所構内での土木工事についてどのような規則になっているのか不明ですが、市街地での下水道工事などでは、2メートルを超える作業では鋼矢板による支保工が義務付けられています。より軽量なアルミ製矢板の使用さえ禁止されているほどです。
土木工事の現場では「人間はへそまで土に埋まると死んでしまう」と言われています。たとえ法令や規則に定めがなくても、1メートル以上掘削し、そこに人間が入って作業しなければならない場合など、安全性に十分留意した支保工や崩落予防策などの措置をとらないことは考えられません。
まして、災害に遭われた方は、掘削した穴の中でコンクリートをはつる(削り取る)作業をされていたとのことです。ブレーカーのような振動を与える工具を使用することで崩落の危険性が高まることも、これは技術云々以前の常識的判断であると思います。明らかに作業計画に重大なミスがあったと考えるべきでしょう。
続報2の一斉メールは「今回の災害の発生原因について詳細に調査するとともに、再発防止に努めてまいります」と締めくくっていますが、
発生原因のもっとも重大なものが「安全対策が不十分であった」ことは明らかです。
このように杜撰な工事が行われた背景まで解明されることがなければ、安全軽視に起因する事故が今後も繰り返されると断ぜざるを得ません。
線量が高く、作業時間が限られている。あるいは熟練作業者がいない。有資格者がいないなどの状況があるのなら、そのようなも含め知らせてほしいものです。廃炉に向けての長い工程の中で、今日も作業を続けている人たちの安全は第一に守られなければならないものです。詳細な報告とセットになった再発防止策が明らかにされることを祈念します。
処理を再開したALPS、A系で白濁水(続報)
3月25日午後に運転を再開したALPSのA系で、3月27日、沈殿処理を行う前工程から吸着塔へ処理水を移送するブースターポンプ出口で白濁水が確認されたことから、A系は循環待機運転に切り替え原因究明を行っている。
3月27日に採取された系統水の分析結果を新規に記載。
系統水の分析結果については、以下の通り。
[3月27日採水]
・A系の系統出口水:全ベータ 5.0×102 Bq/L
・C系の系統出口水:全ベータ 2.7×102 Bq/L
A系の系統出口水の全ベータの値は、3月26日の分析結果(2.0×102 Bq/L)と比較しても、通常の変動の範囲内であり、
現場を調査したところ、A系の一部のクロスフローフィルタ出口水において、白濁が確認されており、クロスフローフィルタから炭酸塩スラリーが透過している可能性があることから、引き続き原因調査を行う。
なお、現在処理運転中のC系の系統水については、白濁は確認されていない。
この段階で出口水から高濃度な汚染が検出されると、B系のトラブルで原因として推定されたストーリー(※)が崩壊してしまうわけです。原因としてクロスフローフィルターの不具合が極めて疑わしいという状況は変わらないことが確認されたわけですから、弱点となっている箇所のシステムの見直しまで含めた改造と、ALPS全体としての信頼性確保を進めてほしいと祈念します。
4号機原子炉建屋で天井クレーンが走行不能(続報)
燃料取出し作業中の4号機原子炉建屋で、天井クレーンが走行不能になった件について原因の推定を報告。通常サイドブレーキを掛けない慣例だったのに、サイドブレーキを掛けた状態で作業した影響でモーターに過電流が流れ、保護用のリレーが動作した、との見立て。
その後の調査結果は以下のとおり。クレーン走行時において、通常に比べ進み方が異なることから数m走行後に停止し確認したところ、サイドブレーキが掛かった状態であることが確認された。
このことから、作業前点検において走行不能となった原因は、その影響により、走行モータが過負荷となり過電流が流れたため、保護リレーが動作したものと推定。
なお、クレーンは走行レバーを停止位置にすることで電磁ブレーキが働くこと、また、クレーンのサイドブレーキの有無はメーカーにより異なることから、本作業において、サイドブレーキを掛けないことが慣例となっていた。
本作業前に他作業においてクレーンを使用しており、サイドブレーキを掛けて作業を終了したことから本不具合が発生。
このため、再発防止対策として以下を行い徹底する。
・操作卓に「走行前にサイドブレーキ解除」を掲示する。
・クレーン操作員に教育を実施する。
・日常点検表項目の見直しを行う。
平均で0.1mSv/日と極めて線量が高い4号機オペフロ(オペレーティングフロア)での作業のため、時間との闘いの中で燃料取出しが行われていことは想像にかたくありません。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月27日午前9時49分~)
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月12日午後3時48分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
3月27日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
※H6エリアC1タンクからの漏えいを受け、H6エリアタンク周辺のサンプリングを継続実施中。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
新規事項なし
1~4号機サブドレン観測井の状況
1~4号機サブドレン観測井の状況について新規記載
※1~4号機建屋に隣接している井戸(サブドレンピット)の浄化試験をした結果、ピット内の溜まり水から放射性物質が検出されており、その流入経路としてフォールアウトの可能性があることから、新たに1~4号機建屋周辺に観測井を設置し、フォールアウトの影響について確認することとしている。
今回新たに設置した3号機原子炉建屋(山側)のサブドレン(N9)のガンマ核種、全ベータ、トリチウム(3月26日採取)の分析を実施。
セシウム134が4.0Bq/L。セシウム137が11Bq/L。全ベータが23Bq/L。トリチウムが1,100Bq/L。
地下貯水槽の状況
サンプリングのみを新規記載
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月28日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に役立ちます。