あなたの車のガソリン、どのくらい入っていますか

「燃料はいつも半分以上入れておく」

「燃料計の針が半分になると不安になる」

震災の後、よく聞かれるようになった言葉です。東北の沿岸部はガソリンの値段が比較的高めなので、1円でも安いスタンドがあれば給油しておく。そんな意味がないわけではありませんが、本当の理由は違います。

本当の理由、それは震災直後の燃料不足が深刻だったから。避難しようにもガソリンがない。買い出しに行きたくてもガソリンがない。もともと車社会だったのに、生活の足が使えなくなった困難を、みなさん身にしみて知ったからだと言います。

浸水した地域のガソリンスタンドでは、地下タンクに海水が入ったところがほとんどです。たまたまタンクローリーが来た直後で、地下タンクがいっぱいだった給油所では、上澄みの油を使えたところもありましたが、それはとても運の良いスタンドでした。

内陸のスタンドでも、停電でガソリン計量機が動かないため給油できない事態が続出。手動ポンプで給油を続けたところもありましたが、スタンドには給油を待つ車列が長く長く続きました。

被災地外からの油の輸送がストップしたため、多くのスタンドでは震災後数日で品切れとなる事態に。販売を続けているところでも、半日以上並んでも1台10リットルまでなどの制限もあったようです。

原発事故の後に出された避難指示では、原則自分の車で避難するように指示されたため困惑を越えて怒り心頭だったという話も聞きました。(地震の避難には車を使うなと言っておきながら、原発事故からの避難は車を使うように命じ、しかもガソリンはどこにも売っていない。どうやって避難しろというんだ、と)

原発事故の被災地でなくても、自宅から遠く離れた勤務先で被災し、車がないため何日も家族に会えなかった話はたくさんたくさん聞きました。家族の安否を確かめるにも車と車を動かす燃料が不可欠なのです。

所有していた複数台の車の燃料を1台に集めた話、農業用のトラクターから燃料を移し替えた話、被災した車から燃料を抜き取っているのかと詰め寄ったら合意の上で燃料を融通し合っていた話など、たぶん車の数と同じだけ、燃料にまつわる苦労や困難があったのです。さて――

あなたの車の燃料計、いまどのくらいですか?

万一の時、どのくらい走ることができますか?