3月7日(金曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心にチェックします。
昨年から汚染水漏洩が懸念されているタンクエリアで警報。しかし、一過性の現象だったとの報告。何を信じていいのやら、なんて考えてしまいそうだが、ちょっと違うか。ひとつひとつの出来事をたくさんの目で見つめて、ていねいに検証していくことこそが大切。廃炉までの行程はまだまだ長いのだから。
冒頭特記事項
◆H4東エリアA1タンクの水位高高警報発生の件
警報は発生したものの、実際には漏えい等の異常はなく、タンクの水位トレンドも安定。さらに警報については発生と同時にクリア(スパイク状に一瞬発生)しているので一過性のものと推定とのこと。
警報システムの信頼性の問題をクリアしていただきたいもの。
※3月7日午前6時28分、H4東エリアA1タンクにおいて、水位高高警報が発生。当該タンク上部の天板からタンク実水位を確認したところ、漏えい等の異常がないことを確認。タンクの水位トレンドも安定。なお、警報については発生と同時にクリア(スパイク状に一瞬発生)していることから、一過性のものと推定。
◆乾式キャスク「蓋間圧力異常」警報発生の件
燃料プールから取り出した燃料を保管する上で、動力を必要としない乾式キャスクは、切り札として期待されてきたもの。そのキャスクの異常に注目が集まったが、こちらもセンサの誤作動(近くのクレーンの動作によるノイズの影響)との推定。
上記タンクの警報であれば、目視で水漏れの有無を確認できるが、仮にキャスクの真空性が損なわれた場合には、目で見ただけでは確認することが難しい。しかもキャスクの中に収められているのは、原発の炉心部にあった核物質そのもの。
ノイズに誤作動だったことは不幸中の幸いだが、「誤作動でした」で済まされる問題ではないと認識する。
※3月6日午前7時56分頃、乾式キャスク仮保管設備に保管しているキャスク1基において、「蓋間圧力異常」の警報が発生。当該キャスクに設置してある2つの圧力計のうち、1つは正常な値を示しており、もう1つは異常な変動を示していることを確認。また、現場確認したところ、キャスクの外観に異常は確認されていない。2台ある当該キャスク圧力検出器の内の1台(No.1検出器)の指示値が、255~280kPa(abs)の範囲で安定しておらず、警報設定値(294kPa(abs))を下回っていることを確認。同日午前8時40分、当該キャスク仮保管設備用門型クレーンを停止したところ、No.1検出器指示値(通常値(330kPa(abs)))は335kPa(abs)に復帰し、安定状態となった。また、No.2検出器の指示値については、333kPa(abs)であった。なお、同日午前8時10分時点におけるモニタリングポスト指示値に有意な変動は確認されていない。
(以下、本日分の新規事項)
圧力検出器(No.1検出器)の点検を実施した結果、異常は確認されていない。
また、簡易圧力計にて蓋間圧力を確認したところ、約330 kPa(abs)であり、当該No.1検出器の復帰後指示値と同レベル。
上記点検結果とキャスク仮保管設備用門型クレーン停止時に当該No.1検出器指示が正常に戻ったことから、当該門型クレーン動作によるノイズの影響により警報が発生したものと推定。
今後、当該No.1検出器のノイズ低減対策の検討を行う予定。
1号機〜6号機
新規事項なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機の4項目と同じ。
◆3号機
1号機の4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年1月24日午後2時37分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
新規事項はパトロール結果とサンプリング実績についての記載のみ。
<最新のパトロール結果>
3月6日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
サンプリングについてのみ新規事項として記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽の状況
サンプリングについてのみを新規事項として記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月7日分の変更箇所を中心にピックアップしました。タービン建屋東側(海の近傍)や地下貯水槽について、実質的に新規事項なしの状況が続いています。日報以外の資料での検証も必要だと考えています。
構成●井上良太
「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に役立ちます。