3月5日(水曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心にチェックします。
冒頭では、協力企業作業員が警報付ポケット線量計(APD)を装着せずに通過したことが報告されました。過去の報告や動画へのリンクで、事故原発敷地内への出入管理、作業員の線量管理について見てみます。
冒頭特記事項
※3月5日午前8時30分頃、正門において、トラックに乗車した協力企業作業員が、警報付ポケット線量計(APD)を装着せずに、正門を通過したことを確認。当該作業員は午前9時35分頃に正門から退域。
東京電力のサイトにある電気・電力辞典によると、
APD(警報付ポケット線量計)
(えい・ぴー・でぃー)
警報付ポケット線量計といい、原子炉建屋やタービン建屋など、放射線のある場所で働く人が身につける放射線測定器。
作業の件名、作業時間、放射線の量などを記憶する機能がついています。
という装置で、個人線量計とも呼ばれています。
原発事故の対応拠点となっているJヴィレッジでマスクや防護服(タイペック)などとともに作業員に渡され、線量の高いエリアで作業する人は、Jヴィレッジ内で装着した上で、バス等で原発へ移動します。
平成24年7月23日に発覚した下請企業作業員5名がAPDに鉛カバーを装着したというインシデントを受けて、APD不正使用や未着用の再発防止対策がとられてきました。
2つの資料から以下のことが読み取れます。
・作業内容(作業場所)によって放射線管理の必要性が異なる。
・APDを装着して入場する人とそうでない人がいる。
・識別しやすくするために、防護服を色分けする対策をとった。
・APD装着が必須の作業員は白いタイペックを着用し、着用者には所持確認を念入りに行う。
東京電力のサイトには、原発構内作業での入退域の流れを撮影した動画がアップされています。
このページの2番目に掲載されている「福島第一原子力発電所への入退域の流れについて(9:09)」の3分30秒あたりから、作業員相互によるAPD装着の指さし確認や、確認ポイントでのチェックの様子が映されています。「エーピーデー確認します」との声がリアルです。
入念なチェック体制を敷いていても漏れが発生する――。
今回のインシデントはその証左のようにも思えます。
発覚した経緯についての報告と検証に期待します。
1号機~6号機
新規事項なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目。
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年1月24日午後2時37分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
多核種除去設備(ALPS)B系の処理停止(報道関係各位一斉メール)
「日報」記載情報の時限である【午後3時現在】の後に発生した、多核種除去設備(ALPS)B系の処理停止について、報道関係各位一斉メールで報告されました。
多核種除去設備(ALPS)では、汚染水処理設備にて処理した廃液を用いた試験(ホット試験)を行っていますが、本日(3月5日)午後5時40分、インバータ故障警報が発生し、3系統(A系,B系,C系)あるうちの1系統(B系)のブースターポンプNo.2が停止しました。これに伴い、B系が循環待機運転に移行しております。
*ブースターポンプ:鉄共沈処理(有機物の除去、α核種の除去)や炭酸塩沈殿処理などをした水を吸着塔へ送るポンプ
現在、現場状況等を確認しております。
なお、同設備で試験運転を行っているA系およびC系については、異常ありません。
<参考>
多核種除去設備の系統図は、下記資料の48ページをご参照ください。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/l140218_03-j.pdf
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
2013年8月19日に発見されたH4エリアIグループNo.5タンクからの漏えい以降、同様の構造のタンクの監視と調査を継続。新規事項はパトロール結果とサンプリング実績。
<最新のパトロール結果>
3月4日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
サンプリングについてのみ新規事項として記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽の状況
サンプリングについてのみ新規事項として記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月5日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に役立ちます。