国家という言葉には「家」という字がついている。その本当の理由を、新沼暁之さんに教えてもらった。
彼は震災の後、知り合った仲間たちのこと「家族」と呼んできた。家族ってなんだ。国家ってなんだ。
その意味が分かる1本。
タカさんは頭書きにこう綴った。「あの頃まだ日本は一つだった」と。
忘れない311。②
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2012.7.17の記事の再シェアです。
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今も忘れてないよ。。
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あの頃
まだ
日本は一つだった。
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マタイッショニタタカオウ。
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感謝合掌。
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自衛隊。
あの侍達を書こうと思った。
何度も思った。。
アルバムを整理していた。
一枚の写真が出てきた。
彼等の帰還日に撮った一枚。。
震災前まで
自衛隊とは何ぞや?
自衛隊とはいったい…。
強く思っていた。
震災。
彼等の動きは早かった。
助かった。
一緒に動いた。
御遺体も一緒に捜した。
一緒に洗った。
一緒に動くうちに
彼等からただならぬ
命と愛国心を感じた。
風呂も入らず、泥だらけの
彼等の顔、国服に言葉にならない感情を覚えた。
「あんたら凄いよ…
もっと前にでなよ。」
俺の言葉に
「自分等はいつも
裏方ですから…」と
臭い、臭い靴下を脱ぐ
侍達に涙した。
メシを食う。
身体を休める。
侍達は徹底してた…
いつも人の目につかない
場所で…。
我が家族
我が命
振り返らず
僅かな可能性の命を捜す
彼等を知った。
自分を情けなく思った。。
間違いなく
彼等は俺達を、日本を護ってくれていた。
助けてくれていた。
彼等は腑抜けじゃねぇ
気がつかない俺が腑抜けだ。
テレビドキュメントで観た。
自分の部下の家族の安否を気遣い、上官に対し一時帰省を嘆願する上司。
上官は怒鳴った「ふざけるな!」しびれたよ。
愛と魂、人間、男を感じた。
泣いたよ。
侍達の帰還の日
朝から不安だった。
侍が居なくなる被災地が
不安だった。。怖かった。
何か伝えたくて
ありがとうを伝えたくて
魂の引継ぎをしたくて
仲間に頼んで
ツギハギだらけの幕を
作ってもらった。。
泣きながら
手をふった。
ありがとうって
強く強く思った。
後日、一通の手紙がきた。
繋がりができた隊員だった。
俺達の写真と短いメッセージ。
「すぐにわかりました。
誰が書いたのかを…
新沼さん、俺嬉しいよ。
泣いて手紙が書けないよ。
ありがとう。」
汚ねぇ字で書いた
そのノートは何度も書き直し
何度も破り捨てた跡が。
残るペン跡。滲む涙跡。
オレモマタナイタヨバカヤロウ
アリガトウサムライタチヨ
石巻の熱血オヤジ、石巻日々新聞の近江社長に「こんなヤツがいるの、知ってるか」と教えられて、ネットで検索しして最初の頃に見つけたのがこの一文だったと記憶する。
ネット上では怖い顔ばっか見せてた新沼さんに、その後実際に会って、初対面なのに男同士で握手してハグして思ったこと。
それは、この人が出会った仲間を「家族」と呼ぶことのワケ。それが当たり前のものとしてあり得るという、この人のデカさだった。会ったら聞きたいと思っていたコトのすべてがふっとんだ。
なになにの理由?
取材ライターの癖で聞きたくなる気持ちの代わりに、これからの付き合いの中で、勝手に感じさせてもらっていいかと尋ねたら、さらにぎゅっとハグの力を増した。というのはウソだけど、「いっすよそれで。じゃあ、仲間だな」と、暁之さんは言った。
会った。抱き合った。それだけでよかった。
引用した記事は自衛隊のデカさのこと。
おれたちはそれと同時に、新沼暁之という人間のデカさも知る。
そしてさらに同時に、「臭い、臭い靴下を脱ぐ」との言葉から、彼らのつながりの濃さを知ることができる。
俺たち。。。
いま、ナニシテル?
あれから3年となる3月。オレは新沼暁之という人の手のひらが、柔らかくてあたたかいんだってことを、日本中に伝えたい。
構成●井上良太