世界最先端の災害対応ロボコンで優勝をしたチーム
昨年12月20~21日、米フロリダ州で災害対応ロボットの競技会の前哨戦が行われた。競技会の名称は「DARPA Robotics Challenge Trials 2013」主催は米国防総省高等研究計画局(DARPA)で、福島第一原発の事故がきっかけで開催が決まったと言われ、競技は「凸凹道を歩く」「がれきを取り除く」「ドアを開ける」「はしごを上る」「壁に穴を開ける」「消火ホースをつなぐ」「ヴァルヴを締める」といった、原発事故が発生した際の作業を想定した8つの種目で争われた。
そのロボットコンテストで、優勝したチームは「SCHAFT(シャフト)」というベンチャー企業。競技会には、NASA(アメリカ航空宇宙局)やMIT(マサチューセッツ工科大学)の他、世界の最先端を走る機関や大学などが参加していたなか、SCHAFTは、2位以下に大差をつけて優勝したという。
SCHAFTについて
SCHAFTは、2012年5月に日本で設立されている。並み居る強豪の中、高度な技術が要求される競技会を、わずか1年半の開発期間だけで勝てたわけではない。SCHAFTはもともと、東京大学の研究室で人型ロボットの研究していたメンバーが独立して設立された。独立の理由は、
技術が実用につながらないことや思うように予算が得られないことを歯がゆく感じ、自分たちで起業したいと思い描いていた。
SCHAFTの存在を初めて知ったのは、テレビの特集だったのだが、そこでは上記の理由に加えて、「競技会に参加するために独立した」とも語っていた。
なんでも、競技会の主催者が、米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)だったために、大学がコンテストへの参加に対して、難色を示していたという。テレビを通じて、東大OBのベンチャー企業設立と競技会への挑戦を知って、気になっていただけに、大差で優勝したニュースは、嬉しい知らせだった。
グーグルが初めて買収した日本企業
DARPA主催のロボコンで、高い技術力を示したSCHAFT。しかし、昨年12月にアメリカの検索会社大手Googleに買収されたという。12月5日付の日経新聞によるとGoogleが日本のベンチャー企業を買収したのは初めてだという。
Googleに買収された経緯については、「週刊ダイヤモンド」と「TechWave」のWEBサイトに記載がある。
ロボットの開発には、試作機でも数千万円単位の費用がかかることもあり、シャフトにとって資金調達が悩みの種となっていた。技術では絶対的な自信があり、日本のベンチャーキャピタル(VC)や国の関係機関などに投資や融資を説いて歩いたものの、徒労に終わっていたのだ。
(中略)
そんな中、たどり着いた先がグーグルのVCであった。ロボットの事業化を目指す、グーグル本体につながり、あっと言う間に買収へとつながっていったのだ。
新しい産業の希望となるべく誕生したSCHAFT社だったが、初期の資金調達は困難を極めた。日系のベンチャーキャピタルでめぼしいところはあらかた回った。思いや技術に対して共感をしてくれるものの「リスクが高すぎる」「ロボット産業への投資はまだ早い」「類似のベンチャーは全て失敗している」といった理由で、手を差し伸べてくれるファンドはなかなか見つからない。
共同創業者の加藤氏は「本当は日本で資金調達したかった」と語っていたという。
日本が実用的な原発作業ロボットを作ることができなかった理由
日本は、ロボット研究の先進国だと言われている。世界での産業ロボットのシェアは5割を超えるという。しかし、福島第一原発事故後、初めて原発での作業に投入されたのはアメリカ製のロボットだったことはよく知られている。日本が実用的な原発作業ロボットを開発できないことについて、下記のような論調をよく目にする。
原発で作業するには高い放射線量など過酷な環境での作業にも耐えられる設計にしなければならないが、それには度重なる実証試験のために多額の資金や国の支援が不可欠だ。しかしベンチャー企業は資金的余裕も国の支援を受けるチャンスも少なく、「宝の持ち腐れ」になっているのが現状だ。「国の支援を実際に受けられるのは大手企業や有名大学に限られている。災害用ロボットの市場は実に閉鎖的だ」。
引用元:なぜ日本は福島原発で作業するロボットを創れないのか 大手が市場独占、技術力あるベンチャー参入できず (1/3) - ITmedia ニュース
この閉鎖的な状態に、米国のロボット技術者がこう指摘する。「日本は失敗を過度に恐れるあまり、実績のある米国製や一部の企業、大学に一本化している。このことが競争力を弱め技術の開発を遅らせている」
引用元:なぜ日本は福島原発で作業するロボットを創れないのか 大手が市場独占、技術力あるベンチャー参入できず (2/3) - ITmedia ニュース
今回のSCHAFT買収に限らず、日本はアメリカと比較すると、一般的に縛りが多く、失敗を過度に恐れて、有望と思われる投資対象が見過ごされる傾向が強いという話をよく耳にする。
原発作業ロボットに復興予算を!
国は東北の復興に必要な財源を確保するために復興特別税を徴収している。しかし、その税金を「沖縄の国道整備」や「鯨類捕獲調査安定化推進対策」など、復興とは関係ないと思われる場所に転用して問題になっていた。
その一方で、原発廃炉作業には欠かすことができないと言われていた、原発作業ロボット研究の有望企業であったSCHAFTへの投資は見過ごされていた(投資をためらっていたのは国だけではありませんが)。
先日の福島民報によると、国は、先月21日、福島第1原発の廃炉技術を研究開発する街づくりの構想に着手したという。
政府は東京電力福島第一原発の廃炉作業に不可欠なロボット技術開発を浜通りの産業の柱に育てようと動きだした。ロボット産業の世界最先端地域を目指す「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」の全体像を6月までにまとめる。
まとめられた提言は、2015年度予算の概算要求につなげるそうだ。
安全に、そして一日も早い廃炉に向けて、国は原発作業ロボットの研究へ投資をしてほしい。
Text:sKenji