除染が進まない (2)

難しい山林除染

除染は住宅、商店、学校、集会所といった、人が居住する場所で始まっていますが、山林は見通しさえ立っていません。除染面積が広すぎて、膨大な労力が必要なこともありますが、山林の除染技術が確立されていないために、手がつけられないようです。

樹木の除染

建築用に重用される杉、桧など針葉樹は、枝葉、樹皮に放射性物質が、多量に付着しています。高圧洗浄は効果が少ないため、樹皮を剝ぐことが一番ですが、立木の樹皮を剝ぐのは困難なので、すべて伐採して、運び出さなければならなくなります。ところが林業技術者が圧倒的に少ないため、ほとんど不可能です。
樹皮、枝葉は汚染がひどくても、内部の木質は汚染がないので、木材として問題なく使えますが、急激に木材が増えても、用途がなければ保管に困ります。
住宅の除染廃棄物さえ、仮置き場が足りないのに、樹木の仮置き場など考えられません。伐採しても保管場所がないため、山に放置するのでは、やらないことと同じです。
山林は、雨水を保管して、ゆっくり流す作用がありますので、山林を伐採すると、雨季は、山に降った水が一挙にふもとに押し寄せ、土砂崩れが起きたり、川が氾濫したり、乾季は、水源がなくなり、水不足が深刻になります。
このように山林伐採は、非常に困難なので、樹木を残して、山の表土だけを除去することが現実的な方法と考えられます。

除染の限界

しかし、これにも重大な問題が残ります。
広大な山の表土を、うまく取り除いても、放射線量がどこまで下がるかわからないのです。
放射性物質は、表土だけではなく、樹木の幹、枝葉にも付着しているため、樹木が残っていれば、あまり下がらない可能性があります。樹木の密生した山林は、表土よりも樹木のほうが、汚染がひどい(放射性物質が多量に付着)場合も考えられます。
さらに、山の表土を除去して、少し放射線量が下がっても、時間がたったら元に戻ることが多いことも、わかってきました。なぜ戻ってしまうのか?
樹木に付着していた放射性物質が、雨で流れて、地面に落ちることが原因です。汚染がひどい枯葉、枯れ枝が、地表にたまることも一因です。
つまり、山林除染をするには、樹木を含めて除染しないと、効果がないことがわかってきたのですが、先ほどの理由で樹木を除染できないのです。
とりあえず、民家に近い山林の一部だけ、除染するようですが、効果はあまり期待できません。
山林の除染は、先が見えない難しい問題です。