東北、この一枚。(7)ビルの壁面にかつての町の姿を映す映写会

「観慶丸本店さんのビル壁面に、昔の石巻の景色が映し出されるんだって。町の人たちが昔8ミリで撮影したものらしいのよ。」

祭りの開催前から町の人たちの間で話題になっていた「市民が撮った8ミリフィルム 昭和の石巻」(ISHINOMAKI 2.0企画)。石巻川開きの初日(前夜祭)の夜、燈籠流しから花火大会までの30分間、石巻の中心市街地にあるビル壁面に、町の人たちが撮影したかつての石巻の光景が映し出された。

津波で住まいを流された人たちの多くは、家族の記憶が記録されたアルバムも、ビデオも失っている。
海近くの住宅地・南浜で暮らしていた女性は川開きの1週間前、「家族や知り合いの顔が映ってなくてもいいの。何気ない町の風景、あの頃の町の姿が見られるだけで貴重なの」と話してくれていた。

かつての川開きの祭りの光景、日和山の花見、小学校の運動会…。
映像が映し出されたビルの壁面は、津波被害の影響がないように見えるが、内部は津波被害を受けた直後の状況のままだという。再開発の計画が進む中、やがては解体される可能性が高い。

顔見知りの何人もが、ビルを見上げながらタオルで目を押さえていた。

石巻市中央

観慶丸本店

●TEXT+PHOTO:井上良太(ライター)