こうして眺めていると、
なんだか夢の中にいるみたいだ。
すぐそばで動いている重機の音もかき消されて、
空から鳥たちの声が聞こえてくるような気がしてくる。
でも、現実の陸前高田は、走り回る大型ダンプや、働き続ける重機の音に満ちている。鈍い音、甲高い音、連続する音、地面が振動するような音…。
信号待ちする車を数えたら、
半分くらいが工事車両なんてことはざら。
町全体がスクラップ&ビルドの最中だ。
そんな国道から山の方を見えれば、そこには海が広がっている。あの日の後に沈下して、水が引かなくなった、海の水の水たまりだ。
白っぽく見えるのは塩。海水から析出した塩だ。
海の水が干からびた場所の真ん中に、白い道が続いている。白い道の先、ずっと遠くにがれき置き場が小さく見える。
がれき置き場のまわりには、
クローバーの群生が広がる。
さら地を埋めるように繁茂するクローバーの道を、大型ダンプが走っていく。
大型ダンプは、津波にやられた土地からさまざまなものを運んでくる。
クローバーは、大型ダンプが片付けた場所に向かって広がっていく。
まるで、土地を取り戻そうとしているかのように。
この辺のクローバーにも、四葉のものが多いみたい。やはり、塩のダメージが大きい場所だからだろうか。
高田城址の近くで、丁重にくるまれた祭りの山車を見つけた。
陸前高田の名物、うごく七夕まつりの山車のようだ。
前後に突き出した杉の丸太は、山車の命なのだろうか。
シートでくるまれた上、トタン板でカバーされていた。
トタンをしばる紐には、先に石が括り付けられていた。
何か大切な意味があるような。
誰かに聞かなければ。
丸太の先に付けられた「大」のマークは何だろう。
この付近の町名、大町に関係あるのかもしれないが、いい加減なことは言えない。
人の姿を見かけることがきわめて少ない陸前高田だけれど、教えてくれる人を探さなければ。
第一中の坂にのぼって陸前高田の町を見た。
建物のほとんどが失われたいまの陸前高田。いま見えているのは、歴史上一番背の低い陸前高田なのかもしれない。これから先、何がどんな風に背を伸ばしていくのだろう。町が変化していく姿をずっと見ていきたい。
●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)
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