スーパーは何やら人だかり
屋久島に着いたあと、レンタバイクを借りたり、宿にチェックインしたり、何かと忙しなく動いた。ひと段落すると、何となく小腹がすいたので宮之浦のスーパー「わいわいらんど」に立ち寄ってみた。
島の中心地にあり、お店としてはかなり大きい「わいわいらんど」。時刻は14時過ぎの昼下がり。一息つきたくなる時間帯だが、それでもお店はお客さんで賑わっていた。中でもひときわ混んでいたのが、入り口付近で売られていた“ある商品”の特別ブースだった。
島の奥さんだけでなく、旦那さんまでもがそれを買っていく。
飛ぶように売れているその商品の正体は、ケンタッキーのフライドチキンだ。
「島民にとって、何よりの高級品」
そんな言葉を思い出した。
島民にとって何よりの高級品
数年前、僕が西表島(沖縄)の宿に住み込んで働いていたころ、とあるお客さんが「お土産に」とケンタッキーのフライドチキンを買ってきてくれた。お土産と言っても、全国どこでも買えるような定番とも言うべき食べ物である。が、しかし、これがまた異様なまでに美味い。
西表島には大手飲食チェーンはなく、外食と言えば島の食堂か喫茶店というもの。普通に過ごしていれば、ファストフードを食べる機会は無いのである。しかし、それはそれで慣れてくるもので、無ければ無いで平気だったりする。
ところが、そんな時にふと誰かが、ケンタッキーやハンバーガー、はたまたミスタードーナツなどといったファストフードを島に持ちこんだりすると、ちょっと大変なことになる。忘れていたお馴染みのあの味が、唐突に甦ってくるのだ。
お客さんがケンタッキーのフライドチキンを差し入れてくれたとき、西表島で暮らして30余年のオーナーはこう言った。
「いやー嬉しい!島民にとって、何よりの高級品だからね」
島内にファストフード店がない以上、最寄りのお店を探しても海を越えた島の外だ。移動費や時間的コストを考えると、気軽に買いに行けるものでは無い。そういう要素がからんでくるのだろうか、西表島で食べたフライドチキンはもの凄く美味しく感じた。
お客さんは島で過ごす人たちがもらって嬉しいものを知っていたのだ。
離島向けの工夫もされている
屋久島も同様に、常設店舗としてケンタッキーは存在しない。離島であれば、ごく一部の大規模離島を除き、ほとんどの島に大手飲食チェーン店はないと思って良いはずだ。しかし、だからこそ、島で食べるその味にありがたみを覚えずにはいられない。
売られていたフライドチキンはいわゆる出張販売形式らしく、オリジナルチキンが5ピース1,200円のパックだった。1ピースあたり240円になるので、お店で買うものと変わらない値段だ。しかし、最寄りのお店からでも、船に乗せて数時間の移動を伴う。僕なんかは「油でベチャってなってるんじゃないの~?」と思うのだが、そうでもないらしい。なんでも、お持ち帰り専用の製法があるらしく、「最後に電子レンジで加熱することで、ちょうど良い出来立ての味になる」と、パッケージに書いてあった。そんな工夫もあるのか・・・。
この出張販売は土・日・祝を中心に月1回程度、不定期的に行われているらしく、販売が決まった時には張り紙などで告知されるそうだ。
結局、僕がスーパーにいる間にフライドチキンは売り切れてしまった。今夜はきっとちょっと贅沢な夕食だろう。
ふと西表島で食べたフライドチキンの味を思い出した。
わいわいらんど
島の奥様御用達のスーパー。何でも揃っています!
まだまだ「島記事」あります。
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