2013年3月6日より、アルガルベ杯がポルトガルで開催されています。女子サッカーの国際大会としては、オリンピック、ワールドカップに次ぐ格付けを誇るアルガルベ杯。今回は予選Aグループ第1戦、日本VSノルウェーの対戦レポートをお届けします!
初代表5人をスタメン起用した実験的采配
日本のシステムは4-4-2。GKは久野。DFは左から加戸、長船、岩清水、川村優理。MFはダブルボランチに田中明日菜と山崎のコンビ。サイドハーフは左に川村真理、右に川澄。FWは大滝と小川の2トップをスタメンに起用した佐々木監督。ロンドン五輪組はDF岩清水、MF川澄、田中明日菜の3人のみ。初代表の5人を含む国際経験の少ない8人の若手を先発させる大胆な采配でした。「新戦力に国際経験を積ませたい」という監督の明確な意思が伺えます。
先発起用された若手組が機能せず
ゲーム序盤、若手組の気合いは明らかに空回りしていました。特にボランチとサイドバックのポジショニングが安定せず、ボールサイドに日本の選手が寄ってしまい、中盤で相手にプレッシャーをかけられず、自陣のサイドエリアに攻撃のスペースを与えてしまいました。ボールに選手が食いつき過ぎて中盤に選手が偏り、両サイドバックが本来のポジションを放棄して前方に飛び出してしまったせいで、最終ラインのバランスは崩壊しました。
サイドアタックから中央のターゲットにクロスを合わせるノルウェーのシンプルな攻撃は見事にはまります。マークの甘い右サイドをドリブルとクロスボールで徹底的に崩され、前半8分と16分に立て続けに失点を食らいました。この日、初めて右サイドバックに入ったという川村優理はポジショニングもマーキングも不安定で、1対1で簡単に振り切られる場面が目立ちました。失点に絡んだ川村優理と川村真理は前半31分で交代を命じられる最悪の展開。
鮫島を投入してリズムを作るがゴールを奪えず
前半31分、左サイドバックに鮫島彩を投入した日本は、左右のサイドバックを入れ替えて右に加戸、左に鮫島を配置することでディフェンスラインは安定感を取り戻します。鮫島がFWを追い越すような動きでオーバーラップを仕掛けますが、攻撃の形はこれだけ。中盤の底からゲームメークを期待された田中明日菜は前線にパスを供給できず、不慣れなボランチで起用された山崎円美はボールを追い回すだけで攻撃に力を割く余裕はありませんでした。
初代表の田中陽子も不発、FW大滝にポスト大儀見の可能性を見る
後半12分、田中陽子がA代表のピッチに送り出されます。ボランチに起用することで中央からの攻撃にアクセントを付ける狙いがあったのでしょう。鋭いスライディングタックルで相手ボールを奪うなど、守備ではマーキングの巧さを見せた田中陽子。前線にボールを運ぶシーンでは、得意のの無回転ミドルシュートにチャレンジする姿勢を見せるべきだと思いました。
攻撃面での収穫は、センターフォワードで先発した大滝麻未でした。中央でクサビに入るタイミングが的確でボールコントロールも上手く、正確なポストプレーで中盤にボールを落とし、MFの攻撃参加を引き出しました。前線で潰れ役となるだけでなく、DFの裏に抜け出してスルーパスを受ける動き出しも絶妙で、MF川澄とのホットラインで決定機を作りました。この試合、ポスト大儀見の1番手として大きくアピールしたと思います。
0-2の惨敗は監督の采配ミス、ドイツ戦でチーム力を取り戻せるか?
0-2の惨敗に終わったアルガルベ杯初戦。敗因は佐々木監督の采配ミスだと言えるでしょう。高いボールポゼッションと素早いパスワークでゲームを支配する日本の強さが最後まで発揮されませんでした。不慣れなポジションを任されたMF山崎、DF川村はチームにフィットすることなく弱さばかりが目立ちました。若手組は互いの長所も短所も把握できず、チームの意識統一もバラバラで何をしていいのか分からない混沌とした状態が90分間続きました。
選手個々が孤立してしまったことで攻撃ではパスが繋がらず、守備では前線から全くプレスがかからないという悪循環に陥りました。次戦の対戦国は優勝候補のドイツ。佐々木監督は現時点のベストメンバーを組むと明言し、大幅なメンバーの入れ替えが予想されます。中盤の破壊力を増すために田中陽子を先発する可能性も有るでしょう。佐々木監督の手腕に要注目です。