世界自然遺産の島々 ~その7.ヨーロッパ・南半球編~

 世界自然遺産をご存知でしょうか。ユネスコが登録する世界自然遺産は国際的な自然保護団体である国際自然保護連合(IUCN)によって評価されます。なんだか難しそうな話ですが、人々にとって何物にも代えがたい貴重な自然が、世界自然遺産として守られているのです。 このシリーズでは世界自然遺産の中でも離島に限定して紹介していきたいと思います。日本では屋久島と、小笠原諸島(父島・母島)が世界自然遺産に登録されていますが、世界を見渡しても、両島に匹敵する“世界遺産島”が盛りだくさん!

 せっかくなので、ちょっとまとめてみました。なかなか凄い島ばかりです。いやはや、世界は広し。

その7.ヨーロッパ・南半球編

大航海時代、ヨーロッパ諸国の船乗りは南半球の大陸、島々を目指しました。中でも南半球で出会う島々は美しく、おそらく、当時のヨーロッパ人らも度肝を抜いたのではないでしょうか。そこに住人がいた場合は植民地支配、そこに誰も居なかった場合は領土宣言をするなどし、ヨーロッパ諸国は、島を自国の一部として取り込んできました。今回はそんなヨーロッパ領(イギリス・フランス)の島々を紹介いたします。

ヘンダーソン島(イギリス)

南太平洋に浮かぶ絶海の孤島・ヘンダーソン島。最寄りの大陸である南北アメリカ大陸からでも5000km近く離れているため、もはやどこの国の領土なんだと思ってしまいますが、イギリス領に属しています。

この記事の日付からちょうど194年前の1819年1月17日、イギリス東インド会社のヘラクレス号のジェームズ・ヘンダーソン船長が島を訪れ「ヘンダーソン島」と命名しました。それまでも、古代ミクロネシア人が生活していた痕跡が確認されています。しかし、現在は無人島。島に生息するオウムなどの鳥類、昆虫やカタツムリなど、やはり他に類を見ない固有種として確認されており、世界自然遺産に選定されています。

このヘンダーソン島はピトケアン諸島と呼ばれる小規模離島群に属しており、200kmほど離れた場所に唯一の有人島であるピトケアン島があります。このピトケアン島へは、年に8往復の定期船が、フランス領ポリネシアのガンビエ諸島から通じており、このガンビエ諸島へはさらに2000km離れたタヒチから行くことができるようです。タヒチには国際空港がありますので、世界中の一般人が訪れるにはこの方法・・・って、もはや正攻法が通用する距離じゃないですね。(参考画像はこちら)

 

ゴフ島とイナクセシブル島(イギリス)

南米大陸とアフリカ大陸の中間に位置するゴフ島とイナクセシブル島です。周辺海域にも、2000~3000km四方には、島や岩を除けば何も見当たりません。そればかりか、島は島で断崖絶壁に囲まれており、船で訪れるにしてもかなり苦労するのだそう。まさに “Inaccessible Island” 「近寄りがたい島」なのです。

断崖絶壁に囲まれていることからもわかるように、どちらの島も火山性。小さな面積でありながら標高は910m、561mと高く、荒々しい自然がそのまま残っていることが想像出来ます。特にアルバトロスなどの海鳥が多く訪れ、世界最大級のコロニーを形成するなど、人が寄り付かないぶん、海鳥にとっては手つかずの楽園となっています。現在はゴフ島にのみ南アフリカの気象観測所の職員が常駐し、時折訪れる各国の研究者が生態の研究を続けています。

イナクセシブル島には、マイクロクイナと呼ばれる「飛翔能力の無い鳥類としては最小種(全長12.5-16cm程度)」の固有種が生息していることが、研究によってわかっています。これら独特の自然的価値の高さから、1995年にゴフ島が世界遺産に選定され、2004年にはイナクセシブル島が拡大登録されました。

(参考画像はこちら) 

ゴフ島

イナクセシブル島

レユニオン島の尖峰群、圏谷群および絶壁群(フランス・レユニオン島)

38もの世界遺産を有するフランスですが、自然遺産は3つです。そのうちのひとつである「レユニオン島の尖峰群、圏谷群および絶壁群」は2010年に登録されました。フランスとしては数少ない自然遺産が最近新たに追加されたことで、フランス国内外から注目を集めているようです。

レユニオン島は、南半球インド洋に浮かぶ面積約2500㎢の島です。1640年、フランス人が無人島だったこの島に上陸し、領土フランスの海外県という位置づけで今日に至ります。コーヒーやさとうきびといった産業が栄えたことから、労働者が多く移住。人口は増え続け、84万人強(2012年)にまで上り詰めました。この島の面積のおよそ40%が世界自然遺産に登録されました。2つの火山にくわえ、文字通り尖った峰の数々、さらには山地の斜面をスプーンでえぐったような3つの圏谷と絶壁による、個性豊かな地形が評価されています。

なんといっても標高3069mの山岳地帯の風景が魅力。なんだかRPGで勇者が冒険する風景が似合いそうな印象を受けました。人の手では決して作り得ることのない壮大な山々、欧州諸国ではお目に掛かれないようなトロピカルな草花、マンタやウミガメが優雅に泳ぐ海と、想像を絶する雄大な自然が当然のように広がっています!(参考画像はこちら)

ニューカレドニア・バリア・リーフ(フランス・ニューカレドニア島)

ニューカレドニアは南太平洋上に浮かぶ四国ほどの大きさの島です。地図上では最寄にオーストラリアやニュージーランドが見えますが、それぞれ1000km近く離れているため、こちらも絶海の孤島と呼んで差し支えないでしょう。その美しい自然を例えて「天国に一番近い島」などとも言われています。フランスらしい(?)オシャレな表現ですね!そんなニューカレドニア島を取り巻くように広がっているサンゴ礁群が、2008年に世界自然遺産となりました。同じく南大平洋上にあるグレート・バリア・リーフに次いで、世界第2位の規模を誇り、その海の中では多様な生態系が展開されているのです。

特に代表的な存在は数多生息するアオウミガメと、絶滅危惧種でもあるジュゴン。どちらも個体数の減少が危惧されているなか、ニューカレドニアではのびのびと暮らしているのだとか。美しい自然であり続けてほしいですね!(参考画像はこちら)

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イギリス、フランスの領である、南半球の島々について紹介しました。地図上だと小さく見えたりもしますが、縮尺をよく見ると、実はどの島々も「絶海の孤島」と言って差し支えないことがわかるはずです。周囲は海に囲まれ、恵まれた自然が目立つ一方で、そのほかには何もありませんでした。人が暮らすには、どれも厳しい条件だと言わざるを得ないでしょう。ところが、それが人間以外の動植物にとっては好条件だったりします。世界自然遺産はどれも魅力的で、一度はこの目で見てみたいものばかり。ですが、人間が一切触れることの無い自然だからこそ、魅力的なんだと感じるのではないでしょうか。こういう島が世界にいくつかあっても全然良い気がします!