誰しも、人には言えない悩み事がひとつやふたつ、あると思います。僕もありました。今回は、もう時効だと信じて、以前抱えていた奇妙な悩み事について書こうと思います。
ブラジャーが降ってきた?
僕は3階建てアパートの2階に住んでいました。ある日、洗濯物を干しにベランダへ出たとき、僕はその光景に目を疑いました。なんと、僕の部屋のベランダに、ピンクのかわいいブラジャーが落ちていたのです。 もちろんワケがわかりませんでした。最初に断わっておくと、僕にはそういう趣味はありません。また当時、彼女こそいましたが、遠距離恋愛でしたので部屋に上げることはありませんでした。つまり、僕の部屋のベランダにブラジャーが落ちている理由がないのです。しかし、現実問題としてそこに落ちていました。
しっかり握るのもためらわれたので、肩ひも部分をつまみ上げ、「どうしたものか。」と考えます。ところが、向かい側のマンションに人影が見えたので、慌てて部屋に隠れました。ベランダでブラジャーをつまみあげ、何かを考え込む男なんて、客観的に見れば絶対アウトです。しかし、自宅で過ごしているのに隠れなきゃいけないなんて、どういうことでしょうか。 さて、部屋に入ったら入ったで問題です。一人暮らしの男くさい部屋に、薄ピンクのブラジャーが1枚。どう考えても変な状況なのです。そもそも、なんで僕の部屋のベランダにブラジャーが落ちていたのでしょうか。「風に飛ばされた?」いや、それほど風も吹いていないし。「実は僕が持ち帰った?」心当たりはありません。「3階に住んでいる人が女性で、何かの拍子に落とした?」考えられるとしたら、これでしょうか。
「そうだ、3階に住んでいる人に聞いて回って、返そう!!」一瞬、名案かと思いましたが、下着片手に「これ、あなたのですか?」なんて、どう考えても聞けません。最悪、この部屋から、この地域から出ていくハメになります。一体どうすれば・・・。
意を決して返そうとするも
しかし、家に置いておいても仕方がないので、返そうと思いました。僕は、ブラジャーを厚手の紙袋に入れて、3階へ向かいました。3階は3部屋。近所付き合いも無いので、どこにどんな人が住んでいるかはわかりません。僕はこの3部屋のネームプレートを調べました。
今どきアパートのネームプレートに名前を書く人も少ないので、期待していませんでしたが、幸い3部屋ともネームプレートに名前が書いてありました。301号室は「○原○菜」、女性です。302号室は「×崎」と書いていますが、これでは性別がわかりません。303号室は「△川△斗」と書いていました。きっと男性です! さて、僕が住む部屋は201号室です。そのため、もしブラジャーが真上から落ちたのだとしたら、きっとこのブラジャーは301号室の「○原○菜」さんのものです。302号室の「×崎」さんが女性である可能性もありますが、僕は真上に住む「○原○菜」さんに賭けました!もう、彼女の部屋の前に、しれっとブラジャーを置いてその場を離れよう。それしかない。僕はブラジャーの入った紙袋を、301号室の前にそっと置いて、立ち去ろうとしました。が、その時!
目の前にはスタイル抜群、年齢は20代前半くらいの美人な女性が。彼女は「○原○菜」さん!?301号室の前で紙袋を置こうとしていた僕は、慌ててその紙袋を抱え、その場を去りました。心臓がかなりバクバクしたのを覚えています。紙袋を置いて立ち去るのは危険だと咄嗟に判断し、結局ブラジャーは返せずじまい。仕方なく自室に戻り、大きくため息をつきました。 僕が立ち去ったあと、女性は301号室の部屋に入っていたので、恐らく彼女が「○原○菜」さんで間違いなさそうです。思い返すと、「○原○菜」さんの胸はやや大きめでした。ブラジャーのサイズを確認していた自分が嫌になりますが、たしかD65でした。かなりのナイスバディです。しかし、なんだか数字が合っているような・・・。
僕も限界でした。なんでこんなことを真剣に考えているんだろう。なんでこんなことに振り回されなきゃならないんだろう。おまけに持ち主と思われる人が、普通に美人ときたもんです。せめて持ち主が不細工だったら、こんなにドキドキしなかったのに。
「最初から何も無かったんだ。」
そして翌日、想定外のことが起こりました。友達が急きょ、僕の部屋へ遊びに来ることになったのです!こんな部屋に爆弾を抱えた状態で、友達を招き入れるハメになったのです!ブラジャーを部屋に隠しておくことも考えましたが、もし万が一、万が一ブラジャーが見つかってしまっては、何か大切なものを失う気がしました。他人の部屋を漁るような友達ではありません。しかし、もう僕は最悪のイメージしか考えられませんでした。
友達が訪れる1時間前、僕はブラジャー入り紙袋をさらにビニール袋でくるみ、意を決して近くの公園のごみ箱に捨てました。「うわあああああああああああ!」と心で叫び、ゴミ箱の奥深くに沈めました。「最初から何も無かったんだ。最初から何も無かったんだ。」自分に言い聞かせながら。 それからしばらく、僕は勝手にブラジャーを捨てたことに罪悪感を覚えていました。アパートの下でたまたま「○原○菜」さんとすれ違うこともあり、僕は一応会釈をします。しかし、彼女は会釈を返してくれません。僕が彼女の部屋の前で不審な動きをしていたからでしょうか。愛想すら振りまいてもらえず、それがまたどうにも気まずかったりします。
ブラジャーを拾った日から5日ほどたったある日、仕事を終えてアパートに戻った僕に戦慄が走りました。アパートの掲示板の貼り紙に、「下着泥棒に注意しましょう。」
との文字が。 う、疑われてる!?たまたまだよね?たまたまだよね?
その後、特に何も起こりませんでしたが、しばらく寝心地の悪い日々が続きました。。
最悪、冤罪になっていたかも・・・?