FIFAクラブワールドカップ2012が日本で開催されました。この大会は世界6大陸における選手権大会の優勝チームと、開催国における国内リーグの優勝チームが一堂に会して『クラブチームの世界王者』を決定します。欧州からはUEFAチャンピオンズリーグを制したチェルシーが、南米からはブラジルの名門コリンチャンスが参戦します。日本からはJリーグの覇者、サンフレッチェ広島がエントリーしました。今回はコリンチャンスVSアルアハリの対戦レポートをお届けします!
ブラジル代表4人を擁するコリンチャンスにアルアハリがどう対抗するか
コパ・リベルタドーレスでアルゼンチンの強豪ボカ・ジュニアニーズに勝利し、南米王者に輝いたブラジルの名門コリンチャンス。ブラジル代表のレギュラーボランチであるパウリーニョを中心にゲームを組み立て、2004年に浦和レッズで得点王を獲得したエメルソンとペルー代表のエースストライカー、パオロ・ゲレーロがゴールに迫ります。豊田スタジアムには地元ブラジルからサポーターが1万人以上も押し寄せて異様な熱気に包まれていました。
対するアフリカ王者のアルアハリは攻守に安定した組織力でゲームを支配するヨーロッパスタイルのチーム。一回戦ではエースのアブトレイカのゴールでサンフレッチェ広島に勝利し、コンディションと共にチームの士気も最高潮に上がっています。クラブW杯の出場は今回で4度目となり、大会の戦い方を知り尽くしているだけに、下馬評ではアルアハリ有利との予想も出ていました。
コリンチャンスがゲームを支配、アルアハリは守勢に回る
一部のジャーナリストの予想を覆し、試合開始直後からコリンチャンスがゲームを支配します。チームの組織力ではほぼ互角に近いものの、個の技術に勝るコリンチャンスがボールポゼッションでアルアハリを大きくリードします。アルアハリは中盤をコンパクトに保ちながら激しくプレスをかけますが、テクニックとスピードに優れたコリンチャンスに素早くボールを動かされてしまいます。
コリンチャンスはディフェンスラインでゆっくりとボールを回し、中盤で相手をいなしながらボールを繋ぎ、バイタルエリアに入ると攻撃のリズムを切り替えて一気にスピードを上げていきます。破壊力のドリブルと糸を引くような細かいパスワークを見せるコリンチャンスに対し、アルアハリのDFは1対1で振り切られてしまう場面が目立ちました。
ゲレーロの先制ゴールを守り、1-0でコリンチャンスが勝利!
後半24分、左CKのチャンスを得たコリンチャンスは中央に上げたクロスをDFに跳ね返されますが、セカンドボールを拾って左サイドに繋ぎ、ドグラスが左足アウトサイドでハイボールを送ります。ファーサイドに待ち構えるゲレーロがバックステップを踏みながらヘッドで合わせると、シュートはGKの頭を超えてワンバウンドで逆サイドネットを揺らして先制ゴール!1点を奪ったコリンチャンスは無理に攻めようとせず、しっかり守ってカウンターに徹します。
アルアハリはサイドアタックから速いタイミングでクロスを上げ、ゴール前で空中戦を挑みますがセンターラインを固めるコリンチャンスのDFにことごとくボールを跳ね返されてしまいます。後半10分、流れを変えたいアルアハリはスーパーサブのアブトレイカを投入。アブトレイカは巧みな動き出しでDFの裏へ抜け出し、意表を突いたスルーパスでチャンスを演出しますがゴールには至りません。試合はこのまま1-0で終了し、コリンチャンスが決勝進出の切符を手にしました!
オートマティック化されたアルアハリの攻めに怖さはなかった
最後まで攻め続けたアルアハリですが、1点を奪えなかったのは自動化された攻撃システムに限界が生じたからではないでしょうか。ゴール前まで簡単にボールを運びながら、シュートに結びつかなかったのは個人能力の優劣に関係します。バイタルエリアに入ってきたコリンチャンスは鋭いキックフェイントや精度の高いドリブルでディフェンスラインを突破できる個の力を持っていました。
一方のアルアハリは一貫してサイドアタックを仕掛けていましたが、1対1になったときに個人で突破を仕掛けるプレーが無く、パスで崩すという選択肢しかありませんでした。コリンチャンスのDFにしてみれば、アルアハリの攻撃は読みやすかったと思います。サイドを崩しても最後はクロスを入れてくると分かっていたので、中央さえ固めてしまえば失点する危険性はゼロに近いものでした。
総括
組織力を武器にして準決勝まで勝ち上がったアルアハリですが、コリンチャンスの強固な守備と個人能力の高さに敗れ去りました。得点の可能性のある動きを見せたのはスーパーサブのアブトレイカだけでした。コリンチャンスはボランチのパウリーニョがペナルティエリア内まで攻め上がり、エメルソンが左サイドからリスクを背負ってドリブルで仕掛けるなど、多彩な攻撃パターンを持っていました。南米王者とアフリカ王者の間に、大きな差があることを感じさせてくれた一戦でした。