東日本大震災・復興支援リポート 「女川漁港の水揚げ風景」

女川の浜に活気は戻ったか?

女川漁港の上空にびっくりするほどのウミネコの群れが飛び交っていた。もしやと思って市場脇の岸壁に行ってみると、まさに定置網で獲れた魚の水揚げ中。お昼近い時間だったのに水揚げを見られたのはラッキーだった。

クレーンに吊るされた大きなタモで、漁船の船倉から大量の魚がすくい上げられる。3人の船員が体全体を使ってタモを操る。ザザーッと水しぶきを上げて岸壁に置かれた選別機に魚が下ろされる。ベルトコンベアーで運ばれていく魚を、選別機の周りの人たちが魚種と大きさで選別していく。

大きめのワラサ(ブリの子ども)は選別機の入り口近くでピックアップ。ダンベと呼ばれるバスタブのような大型容器に放り込まれるたび、しぶきが上がる。

金華山沖で獲れた魚のメインはブランド物のサバ(型の良いものは「金華サバ」と呼ばれる)だけど、アジ、イワシ、サワラ、マダイなどなど定置網に入ってくる魚種は豊富だ。網には小ぶりのマンボウまで入っていた。(静岡や紀伊半島、高知などの一部で食されるマンボウだけど、宮城にもマンボウ料理が食べられるお店があるらしい)

種類やサイズで選別された魚が、どんどんダンベの中にたまっていく。魚がたまったダンベはフォークリフトが持ち上げて出荷場へ運び去って行く。上空には選別機の上を旋回するウミネコの大群。岸壁には唸りを上げて走り回る何台ものフォークリフト。漁港の岸壁は上も下も大忙し。

フォークリフトで順番待ちしている浜のオジさんに聞いてみた。

「今日は12トン獲れたって聞いたけど、大漁ですね」オジさんはちょっと顔をしかめて、

「んなことねえ。こないだは60トンだった。今日はさっぱりだ」

自然が相手の仕事だから、水揚げは日によって変動する。それは震災前も震災後も同じだろう。しかし、港の復旧すら終わっていない女川の浜では、少しでもいい水揚げが続いて欲しいとみんなが切望しているのは間違いない。

去年の今頃に比べたら浜の活気は少しずつだが戻ってきている。それでも、背負ったマイナスを帳消しにして、本当の意味での復活を遂げるまでには、まだまだ気が遠くなるほどの時間が必要だ。

2012年11月29日
写真と文●井上良太