息子へ。被災地からのメール(2012年11月17日)

2012年11月17日◆石巻(宮城県)

石巻の中心地を流れる旧北上川の中州に、UFOのような建物がある。「サイボーグ009」や「仮面ライダー」の作者、石ノ森章太郎の作品を中心としたマンガミュージアム、石ノ森萬画館だ。

高いところで17メートルもの津波に襲われた石巻では、河口近くの中州にある萬画館も無傷ではなかった。大きな建物の1階部分は水没し、浸水を免れた2階、3階部分には近隣の人たちが逃げ込み、数日間を水の中に孤立した状態で過ごした。かつてはマンガを中心とした街づくりの象徴だった萬画館は、震災のシンボルにもなったんだ。

そんな萬画館が17日、再開した。リ・オープンの瞬間に立ち会いたいと、小雨が降る中たくさんの人たちが集まった。テープカットや入場の時には1メートル四方に10人くらい人が立っているんじゃないかと思うくらいの混雑ぶりだったよ。

館内には歴代ライダーのマスクや子どもが乗れるサイクロン(初代ライダーのオートバイ)、覗きからくりなど見ものがいっぱいだったけど、らせん状にスロープを上って行った2階部分には、震災に関連した展示もあった。

石ノ森章太郎の原画を元に創作された石巻のローカルヒーロー「シージェッター海斗」のオブジェは、こすられたような傷がいっぱいで手足がとれていた。津波に襲われた時、萬画館の玄関前から流されて、数週間後がれきの中から奇跡的に発掘されたものなんだとか。

そんなシージェッターにまとわりつくように子どもたちが遊んでいた。ボディの傷をじっと見つめている子もいる。そして、シージェッターの隣に設置されたモニターの画面に食い入るように見入っている子どもたちも。

そのモニターに何が映されていたかというと、ヒーローものの映像じゃないんだ。襲いかかる津波や、津波で破壊された町、流された巨大な漁船などの映像。

小学校2、3年生くらいの子どもたちなんだけど、見つめるまなざしは真剣そのものだ。恐れたり、おどけたりすることなく、まっすぐに見つめていた。「ここはこんなことになっていたのか」というつぶやきが聞こえてくるよう。冷静に現実をとらえているような表情だった。大人より大人っぽい、なんていうと茶化しているように聞こえるかもしれないが、子どもの中にある“大人”が出ていたんだと思う。

昨日会った電気屋さんの言葉を思い出したよ。

「この1年半は、ふつうの4倍くらいの濃度で時間が流れていた」

子どもたちの中の“大人”もそれくらいのスピードで成長しているのかもしれない。