キングカズこと三浦知良選手がフットサル日本代表に選出されたことが話題になっています。2012年11月1日から18日までタイ王国でFIFAフットサルワールドカップが開催されています。全世界から24ヵ国のナショナルチームが参加し、1組4チームの6組に分かれて予選グループリーグを戦い、各組上位2チームと3位の成績上位4チームが決勝トーナメント進出します。今回はCグループの第三戦、日本VSリビアの対戦レポートをお届けしたいと思います!
決勝トーナメント進出の為に絶対に負けられない一戦
ここまでの日本の戦歴は1敗1分の勝ち点1、得失点差-3。決勝トーナメント進出を3位通過で狙う日本はリビア戦に勝利して勝ち点3を獲得し、できるだけ多くの得点を重ねて得失点差で有利な状況を作る必要がありました。スタートから得点力の高い森岡薫を起用するなど、攻撃的なメンバーを揃えました。スターティングファイブはゴレイロ(GK)に川原、フィクソ(DF)に北原、アラ(MF)に村上と逸見、ピヴォ(FW)森岡という布陣で挑みます。
ゲーム序盤、日本はトップの森岡に一度ボールを当ててタメを作り、サイドのアラが前方に飛び出してワンツーからミドルシュートを狙うというオーソドックスな戦術を選択します。対するリビアはフィジカルの強さとスピードを生かした個人の突破力で局面を打開していくチームです。ブラジルやポルトガルに比べると技術力と組織力に劣りますが、日本は一発のカウンターから失点を食らう可能性を警戒していました。
前半は思うようなゲーム運びができずに苦しむ
これまで対戦した強豪国と比べて組織的なパス回しを不得手とするリビアに対し、日本は前半から積極的に前に出てハイプレスを仕掛けます。ボールポゼッションでは圧倒的にリードするものの、肝心のフィニッシュに精度を欠いて思うように得点を奪えない日本。ディフェンスの北原が前線に飛び出してミドルシュートを放ち、コーナーキックではサインプレーでショートコーナー使った工夫の攻めも得点には結びつきません。前半6分に三浦知良と小暮を投入しても流れは変わらず、攻め疲れを見せ始めた日本は前線に攻め上がるアラとフィクソの背後を突かれてリビアのカウンターを食らいます。
個の力が強いリビアのオフェンスはサイドラインからスピードに乗ったドリブルを仕掛けると、積極的にミドルシュートを打ってフィニッシュに持ち込みます。無得点で終了するかに思われた前半18分、右サイドから逸見がドリブルで抜け出してミドルシュート!GKに跳ね返されたボールを逸見が拾って中央に繋ぎ、ゴール前の稲葉がダイレクトボレーでゴールに捻じ込み、待望の先制点を奪います。しかし、直後の18分、リビアは第2PKマーク付近でフリーキックのチャンスを得ます。ラホマの放った強烈なシュートは稲葉に当たってコースが変わり、GKの川原は反応できず、同点ゴールを奪われて1-1で前半を終了します。
フィクソに小宮山を投入したことでゲームの流れが変わる
3位通過を狙う為に大量点が必要な日本は、後半から思い切った戦術の変更に出ます。守備の強い北原を交代して攻撃力の高い小宮山を最後尾のフィクソに投入し、ひし形に構えるオーソドックスなフォーメーションを大幅に変更します。4人のフィールドプレーヤーが横一列に並ぶ『クアトロ』と呼ばれるシステムを採用し、サイドプレーヤーが変則的に前方に飛び出すことで両サイドに空いたスペースを徹底的に攻める作戦です。
トップの森岡にマークを集中させていたリビアのディフェンスは混乱し、不規則なタイミングで両サイドに飛び出していく日本のオフェンスを捕えることができません。後半5分、稲葉が敵陣内の右サイドでリビアの縦パスをカットして中央にクロスを送ると、ゴール前でフリーとなった星はGKの動きを冷静に見切って技ありのループシュート!鮮やかにゴールを決めて遂に勝ち越し2点目を奪います。
新システム『クアトロ』が機能してリビアのディフェンスは崩壊する
日本は4人のフィールドプレーヤーが同時にハイプレスをかけて相手にプレッシャーを与えます。前線からの速いチェックに浮足立ったリビアは自陣でパスミスを連発します。後半6分、小宮山が右サイドでリビアからボールを奪うと中央にボールを持ちだして左足でミドルシュート!GKの鼻先で稲葉がコースを変えて3点目を奪います。
更に後半12分、敵陣で小曽戸がボールを奪うと強引に縦にドリブル突破。背後からタックルに来たDFを鋭いターンでかわすと、ニアサイドに強烈なシュートを叩き込んでリードを3点に広げます。後半18分、リビアにPKを決められて2点差まで詰め寄られたものの、日本は4-2で見事な勝利を収めました。
1勝1分1敗で史上初の決勝トーナメント進出
Cグループ3位、得失点差-1という結果で予選を終えた日本。3位の成績上位4チームに食い込むことに成功し、史上初の決勝トーナメント進出を果たしました。死のグループと呼ばれたC組を3位で予選通過したことは狙い通りの結果でした。圧倒的な力の差があるブラジルを最少失点で凌ぎ、パワープレーでリスクを冒してポルトガル戦を引き分けに持ち込み、2点差以上でリビアに勝利する。
1つでも計算が狂えば予選突破の可能性を失うギリギリの綱渡りでした。ワールドカップ直前にペルーから帰化した森岡薫、Jリーグがフットサルに召集された三浦知良、3大会連続の出場となる小暮や北原のベテラン勢の経験。日本が持つ全てのパワーを総動員しなければ、このような好結果は得られなかったでしょう。奇跡にして予定調和とも言える、最高のシナリオを描けたように感じます。
総括
最高の形で決勝トーナメント進出を達成した日本代表。激戦を乗り越えたサムライファイブが一発勝負のトーナメント戦でどのような戦いを繰り広げてくれるのか興味深いところです。今まで以上に厳しい展開が予想されますが、強豪国を相手にしてもリスクを恐れず果敢にチャレンジしていく姿勢に期待します!