2012年10月22日◆石巻(宮城県)
出張に出る前から、石巻日日新聞社の近江さんと会う約束をしていた。石巻に着いたら電話してねと言われていた。でも近江さんもなかなか忙しいようで、なかなか連絡が付かず、けっきょく話ができたのはあたりが暗くなった後だった。
「まだ出先にいるけど、住所を言うから訪ねてきな」
横浜暮らしが長かった近江さんは、ときどき浜っ子言葉を使う。ギョロリとした眼差しと、シャキシャキした口調が魅力的な近江さんが指定した住所を訪ねたら、そこはオープン準備の真っ最中のミュージアムだった。
ミュージアムだと思ったのは、半分当たり、半分外れ。
その施設の名称は「絆の駅」。1階は100周年を迎えた石巻日日新聞が保存してきた町の写真と震災関連資料、手書きの壁新聞などを展示する石巻ニューゼ。ニューゼというのは、フランス語でミュージアムを意味するミュゼとニュースの造語。つまり石巻のニュースの博物館。
半分外れと言ったのは、ここには2階があるからだ。
2階はミニシアターやライブ会場としても使えるくらいの広さと設備があるレジリエンスバー。バーとは言うものの、日中はワークショップやミーティングの会場としても使われるそうだ。
近江さん曰く、「石巻の酒好きが管を巻いているところに、県外からボランティアとかに来た人がやって来て、知り合いになって、お互いの未来を語り合うような場所になったら、いいだろ?」
1階は石巻の歴史を、そして震災の現実を目の当たりにするミュージアム。そして2階は人が集い、人が出合い、未来に向かっての言葉が生まれるスペース。
話を聞きながら11月1日というオープン日のことを考えてなんだか、わくわくしてきた。
さらにスゴイと思ったのは、1階から2階への階段の踊り場に掲げられた千葉蒼玄という書家さんによる書。
「変化する力」
復興なのか、復活なのか、再生なのか。いずれにしろ、変化する力をもって未来を掴もうとするパワーが詰まった場所だった。たまたま準備中に取材できて良かったと思ったよ。石巻日日新聞の武内さんや秋山さん、それからケースケさんっていう写真家の人や、けいていさんという不思議な先輩に会えたのもうれしかった。
開発中のメニューの試食と、ビアマイスター(近江さん)が注いだ生ビール(ハートランド)をいただけたのもラッキーだったけどね。