固有種の宝庫!小笠原諸島
秋から入れない!
2008年の夏から秋にかけ、小笠原諸島・父島に長期滞在していた。大学2年時に一度訪れたことがきっかけで小笠原諸島の自然に魅せられ、勢い余って大学を1年ほど休んでしまったのである。「小笠原の魅力は人によって違うだろう」とは思うが、恐らくは海の方が人気という印象だ。イルカやクジラはほぼ年中見ることができるし、サンゴが広がるダイビングスポットも多数。最近では素潜りや魚突きを極める人も見かけ、遊びかたも多様になってきている。事実ハイシーズンは必ず常連客と顔を合わせるほど、ファンの支持も厚い。 僕はというと海にそこまで執着心がなく、どちらかというと陸上の散策の方が好きで(海も好きなのだが)、「島全体の雰囲気を楽しむ」という、こだわりのない過ごし方を楽しんでいた。そのため、予定が合えば仲の良い島のガイドさんと山を歩き回ったり、一人ででもぼーっと歩き回っていたように思う。
ところが、そんな折「秋から自由に立ち入れるコースが制限されるらしいよ。」
という噂が飛び交い、そして噂は現実となった。2008年10月から島内の24コース中16コースが立ち入り制限されてしまったのだ。9月下旬は立ち入れなくなるコースを巡る日々となったのは言うまでもない。
現在は歩いて渡れなくなったジニービーチ(2008年父島)
世界自然遺産登録に向けた小笠原諸島の取り組み
2011年、小笠原諸島が国内では4番目となる世界自然遺産に登録された。絶海の孤島である小笠原諸島。他の陸地から隔絶されていたがゆえに固有の動植物の宝庫と言ってもいいだろう。父島ではアカガシラカラスバト、オガサワラオオコウモリ、ムニンツツジ、母島ではハハジマメグロ、ハハジマノボタンといった名前を良く聞くはずである。その際は注目して頂きたい。これら小笠原固有の生態系がカギとなり、世界自然遺産登録されるに至ったのである。 もうお分かり頂けたかと思うが、2008年の陸路コースの立ち入り制限は、世界遺産登録へ向けた「森林生態系保護」のためだったのだ。それ以前、小笠原が世界遺産登録の候補地となった2003年頃から、「自然保護と観光利用の両立」を目的としたエコツーリズムに関する取り組みが進められていた。
例えば、父島の南には沈水カルスト地形と呼ばれる珍しい地形を持つ南島という人気スポットがある。こちらはその他にも珍しい化石があったり、アオウミガメの産卵地だったりとデリケートな自然が豊富。そのため、1日当たりの最大利用者が100人までと定められているのだ。また、母島には石門と呼ばれる母島の固有種が多く集う原生性の高い地域がある。こちらもぜひ一度訪れてほしいと強く思うが、ガイド付きでなければ立ち入ることができない。また、生態系に影響を与えないようにと、入林前にはタワシで種子を落とすなどのルールがある。 これらは全てエコツーリズムの観点から定められた決まりなのだ。
一日あたりの入島人数制限が設けられている小笠原諸島・南島