【リトルなでしこ】日本VSメキシコ・・・9-0で大勝したリトルなでしこに穴はない? 《U-17女子ワールドカップ》

ロンドンオリンピックで銀メダルに輝いた『なでしこジャパン』。U-20ワールドカップで銅メダルを獲得した『ヤングなでしこ』。女子サッカー界が大きな注目を集めている今、更に一つ下の世代に『リトルなでしこ』と呼ばれる17歳以下の日本代表の存在があります。 2012年9月22日からアゼルバイジャンでFIFA U-17女子ワールドカップが開催されました。今回は予選グループリーグ第三戦、日本VSメキシコの対戦レポートをお届けします!

メキシコの守備は『ザル』。日本はやりたい放題

日本のシステムは4-2-3-1。DFは左から清水、三宅、松原、小島。ボランチは隅田と中村がコンビを組みます。3枚の攻撃的MFは左に成宮、中央に杉田、右に井上。1トップは増矢に代えて169cmと長身の白木を投入します。対するメキシコのシステムは4-4-2。ディフェンスラインを高めに取り、ワイドに開いたサイドハーフが左右の攻撃の起点となってサイドアタックを仕掛けます。

序盤からゲームは圧倒的に日本のペース。メキシコはラインを押し上げて前方に攻め上がりますが、肝心の守備はまさに『ザル』という印象。前半8分、MF成宮が中央にドリブルで流れるとDFの裏に走り込んだFW白木にスルーパス。混戦からGKが弾いたこぼれ球を右サイドバックの清水が押し込んで1点目。前半16分、左サイドの成宮が華麗なドリブルでDF2人をかわしてペナルティエリアに侵入。カバーに入ったDFが背後から成宮を倒してPKを獲得。これを成宮が決めて2点目。前半22分、MF杉田のスルーパスを左サイドで受けた成宮がダイレクトで中央に折り返し、詰めていたFW白木が押し込んで3点目をゲット!この時点で勝負は決しました。

メキシコはボールサイドに人が集まり過ぎて、人とスペースのマークを全く掴んでいませんでした。ボールウォッチャーになったディフェンスは全体的に中央により過ぎてしまい、サイドのスペースとDFの裏はガラ空き状態。サイドハーフの成宮と井上に自由にボールを持たれると、1対1ではスピードで簡単に振り切られ、ワンツーやフリーランにもついてこれず、DFの裏に面白いようにスルーパスを通され、遠目からミドルシュートを打たれまくり、滅多打ちにされました。

9-0という野球のようなスコアで試合終了

メキシコは中途半端にラインを押し上げてはDFの裏を取られ、前線から厳しいチェックをかけることもなく、中盤では選手同士が孤立してゾーンディフェンスも機能しません。ディフェンスを修正する間もなく次々と得点を奪われて防戦一方の展開。最終的には9-0のハイスコアで日本が大勝を収めたものの、これだけの差が開くと日本が強いのかメキシコが弱いの判断に苦しみます。日本はJFAアカデミー福島や日テレ・メニーナなどトップチームの下部組織がしっかりしています。しかし、海外のナショナルチームには女子のプロリーグが無い国が多く、学生時代に基礎的な技術力を身に付けられないことがチーム力の差に表れているのかもしれません。

想像以上のバリエーションを持っていたオフェンス陣

4点目以降の得点経過を見ると、日本の攻撃のバリエーションの豊富さに驚かされます。前半28分、右サイドに流れた成宮がDFの裏に絶妙のスルーパス、飛び込んできた井上が冷静に決めて4点目。前半29分、右サイドでボールを持った井上がピンポイントのアーリークロス。これをニアサイドに構える白木が合わせて5点目。後半10分、左サイドから中央にカットインした井上がペナルティエリア外から技ありのミドルシュート!インフロント気味にカーブのかかったボールはGKの手を越えて6点目。後半22分、右サイドバックの清水が敵陣深くまでドリブルで切れ込んでマイナスのクロスボール。ゴール前に飛び込んだ杉田がダイレクトシュートを決めて7点目。

後半33分、ペナルティエリア付近中央でフリーキックを獲得すると、レフティーの籾木が左足一閃!弾丸シュートがサイドネットに突き刺さって8点目をゲット!後半40分、ゴール前25メートル付近でフリーキックを得るとキッカーはまたしても籾木。左足から繰り出されたクロスボールはファーサイドの中村の頭にピタリと合い、ヘディングで9点目を奪います。9点中7点が流れの中から生まれた得点。2点がセットプレーから生まれた得点です。得点経過を見ると、リトルなでしこは中央からもサイドからも満遍なくディフェンスを崩していることが分かります。

役者は揃った!決勝トーナメントで力を引き出せるか?

『ヤングなでしこ』には田中陽子や猶本光などスター選手が揃いますが、『リトルなでしこ』も負けず劣らずの粒ぞろいです。この試合でも強力な選手の発掘が何人もありました。左足から一発のフリーキックを持つ籾木結花。1得点3アシストと無双状態だった成宮唯は破壊的なドリブルとスルーパスが武器。高さと上手さ、ゴール前での冷静さを持つフォワードの白木星。ダイナミックな飛び出しと効果的な縦パスで攻撃にアクセントを付けるボランチの隅田凛。両サイドバックを遜色なくこなし、ピンポイントクロスとスピード溢れるドリブル突破を持つ清水梨沙。中盤の底で守備のリスクマネジメントを徹底しながらも、セットプレーで豪快なヘッドを決めた中村みずき。

それぞれのポジションに優れた個性を持つ選手が揃います。加えて守備でも安定した力を持っているのが強みです。若いチームの割には落ち着いたゲーム運びができるという印象です。問題は決勝トーナメントで予選のような結果を生み出せるかです。U-20女子ワールドカップのドイツ戦のように相手チームとのフィジカルの差に屈することがなければ、安定した試合運びが可能だと思います。

総括

決勝トーナメントでは強豪国との対戦が控えているので、これまでのように一方的なゲーム展開にはならないでしょう。どのような形で相手の守備網を打開するのか、これからの戦いが楽しみです!

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