ロンドンオリンピック開催日に先立ち、男子サッカーの試合が始まりました。今回は7月29日に行われた関塚ジャパンの予選グループリーグ第二戦。日本VSモロッコの試合を振り返ってみたいと思います!
スペイン戦で体力を消耗していた日本
モロッコはアフリカ予選でカメルーン、ナイジェリアなどの強豪国を撃破してオリンピック出場を決めた実力のある国です。この日は4-5-1というフォーメーションを組み、A代表でもエースストライカーを務めるフォワードのアムラバドにボールを集めて前線に起点を作り、ゲームメーカーのラビアドを中心にサイドアタックをしかけるというシンプルな攻撃スタイルが特徴です。一方の日本はカナダ戦で負傷退場した酒井宏樹に代わり、右サイドバックに酒井高徳を先発させた他は初戦と変わらない布陣で挑みます。ゲーム序盤、日本はスペイン戦で見せたような前線からの激しいプレッシングをかけられません。中2日という厳しいスケジュールで疲労が蓄積し、運動量が大きく落ちたのが原因です。
モロッコのオフェンス陣は強靭なフィジカルとスピードを併せ持ち、アフリカ人らしい高い身体能力を生かしたドリブルでディフェンスを打開する突破力が持ち味です。日本は中盤でプレスがかからないことから相手に自由にボールを持たせてしまい、ディフェンスの裏に縦パスを何本も通されてピンチを迎えます。スペイン戦のように守備が組織的に連動しない日本は、サイドバックの徳永と酒井高徳がライン際で孤立してしまい、縦へ抜ける一発のドリブルで振り切られてしまう場面が多く見られました。中央に構えるセンターバックの吉田と鈴木のマークが安定しているので決定的なシーンには至らないものの、前半はモロッコの持つ個人の速さと強さに苦しめられました。
後半に足が止まったモロッコ、最後は永井がしとめる
この日のピッチコンディションは芝がドライな状態でボールが走りにくく、速いパス回しを得意とする日本の良さが出ません。中盤でのパスミスが多く、単純な横パスをカットされてカウンターを食らうケースが多く見られました。しかし、次第にピッチの状態にもなれてパスが繋がり始めると日本にも攻撃のリズムが生れます。後半70分を過ぎた辺りからモロッコの足が止まり、中盤から最終ラインまでのゾーンが間延びしてバイタルエリアに大きなスペースが生まれます。その隙を見逃さなかった日本は、右サイドにドリブラーの齋藤を投入し、東が左サイドに流れて起点を作り、両サイドバックが何度も敵陣にオーバーラップをしかけます。ゴール前で数的優位を作り出した日本は、ボランチの山口までもがペナルティエリアに飛び出してシュートを放つなど、多彩なコンビネーションでゴールを狙います。
マークを絞り切れなくなったモロッコは、清武や永井のドリブル突破から決定的なシュートを何本も打たれてピンチを招きます。そして後半39分、ペナルティエリアの手前でボールを持った清武がディフェンダーに囲まれながらも浮き球のミドルパスをディフェンスの裏に送ります。「あの辺に蹴れば永井が決めてくれると思った」という清武の言葉の通り、一発の飛び出しを狙っていた永井が左サイドのスペースに飛び込み、前に出てきたゴールキーパーを冷静に見切って難しい体勢から右足アウトサイドでループシュート。ボールは大きな弧を描いてゴールに吸い込まれました。その後、日本はモロッコの反撃を無難に抑えてゲーム終了。2試合連続の白星で勝ち点を6に伸ばし、決勝トーナメント進出に大きな弾みを付けました。
試合巧者の日本、状況に合わせてゲームをコントロールできる
この試合を通じて感じたことは、日本はゲーム全体の流れを読みながら冷静に試合運びができていると言う点です。思うようにプレスをかけられなかった前半も、慌てることなく吉田が冷静に最終ラインをコントロールしてモロッコの攻撃に対応していましたし、ピッチコンディションを見てパスが繋がらないと感じると、ロングパスやドリブルを多用して攻撃にアクセントをつけていました。
試合後に吉田が話していたように「モロッコの運動量を落とすために、前半はサイドチェンジを繰り返してボールを大きく動かして相手を走らせた。後半にモロッコの足が止まったのは前半の疲れが出たせいだろう」とゲームの展開を振り返っていました。チームの運動量が上がらなければ相手の運動量を落とすことで対処するなど、戦況を冷静に見ながら最適なゲームプランを立てられる日本。過去のオリンピック代表にはない精神面の強さとしたたかさが感じ取れます。
個人の突破力が通用したことが大きい
オフェンス面で目を引いたのは、清武、永井、大津、齋藤らの個人技が世界を相手に通用していることです。この日のように運動量が上がらずにコンビネーションが上手く決まらない試合でもバイタルエリアから単独突破で何度も決定的なシーンを作り出していました。大津と清武はサイドから中央に向かってドリブルで切れ込んでディフェンダーを引きづりながら強烈なシュートを放っていましたし、齋藤はスピードとテクニックを生かしたドリブルで何度もサイドラインを抜け出しています。ゴールキーパー・アムシフのファインセーブで2点目こそ奪えませんでしたが、シュートは確実に枠内を捉えていました。
スペイン戦で世界を驚かせた永井はスピードとテクニックに加え、フィジカルも強くて運動量も抜群です。そして決定的なチャンスで難しいゴールを決める高いシュート精度も備えています。プラチナ世代と呼ばれる今回のオリンピック代表は、若い世代にも関わらず多くの選手が海外で活躍しています。世界のトップレベルを相手にしても臆することなくプレーでき、どうすれば打開できるのかを経験で知っている選手が存在するのは大きな強みでしょう。
総括
2連勝で勝ち点を6に伸ばした日本。決勝トーナメントへの進出は決定的だと思われますが、試合数を重ねながらコンディションを上げてくる強豪国を相手にどこまで通用するのか興味深いところです。
関連リンク
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