異常事態!?投高打低プロ野球
異常事態なのか。プロ野球が開幕して3週間弱、プロ野球は近年にないロースコアゲームが続いている。戦前は優勝候補とされ、攻撃力が評価されていた巨人(6位)、西武(6位)、オリックス(5位)は、24日時点でいずれも下位に低迷している。一方、上位を争う中日、ヤクルト(セ同率首位)や、ロッテ、日本ハム(パ同率首位)は、チーム打率、防御率ともに平均より上の水準をキープ。かつての2001年の近鉄(当時)のような、「チーム防御率最下位で優勝」というようなことは想像もしがたい。 その背景には昨季より導入された飛ばないボール、「統一球」の存在が大きい。スポーツニッポン(24日付)は『統一球はそれまでの使用球よりも反発係数が抑えられ、昨季の本塁打数は2010年シーズンからセ、パ両リーグ合計で666本も減った。今季も両リーグ計118試合のうち、完封37試合(24日現在)で、打者が対応に苦慮している』と、報じている。選手たちからも「面白みがない」という声が上がっており、日本プロ野球選手会は日本野球機構(NPB)に対し、統一球の見直しを求めた。そんな中でこんなデータがある。
24日現在、12球団の中継ぎ投手の防御率だ。順位
チームイニング
自責点防御率
(1位)
東京ヤクルト45回
40.80
(12位)
埼玉西武38回
306.63
ヤクルトは未だに増渕の4失点のみである。一方西武は投手陣が万遍なく打たれている。防御率6.63は、もはや統一球でなくともかなり重症と言わざるを得ない。簡単に解釈すると、西武が相手であれば、試合終盤までハラハラする。ヤクルトが相手だと少なくとも中盤以降の逆転はあまり期待できないということになる。単純に考えると、相手チームから見て、西武相手だと面白そう、ヤクルト相手だとつまらなそう、という見え方になるだろう。 このデータだけで統一球の是非を語るわけにはいかないが、順位表その他を見ても、統一球に対する順応性はチームによってそれぞれなのは言うまでもない。確かに面白味がないというのであれば、早急に改善することも必要だろう。しかしそれらを踏まえたうえで、もう少し対応に努力する姿勢は見られないものかと思う。
現在ホームラン数トップの5本を放っているウラディミール・バレンティン(ヤクルト)は、昨年ホームラン王こそ獲得したものの、後半戦の打率は.228。足を引っ張ったのは言うまでもない。今シーズンもオープン戦までは復調せず、2軍落ちが濃厚かと思われていた。しかし、「去年は外角のボールをひっかける場面が多かった」と、春季キャンプから右方向への意識を持って打撃改造を行い、現在打率.310 5本塁打 11打点と絶好調だ。自身の課題に取り組み、克服する姿を見せている。結果としてチームの躍進につながっているのだ。 試合の面白味のために、統一球を見直すこと自体は悪いことではないだろう。しかし、打てない理由を統一球に押し付ける前に、選手たちが統一球に挑み、課題を克服していく姿をもう少し見たい。
◇参考記事:
(スポーツニッポン 2012年4月25日)
(サンケイスポーツ 2012年4月25日)