甲子園球場のグラウンドに立つ9つの方法

阪神甲子園球場 (はんしんこうしえんきゅうじょう)

 野球が好きな人でなくとも、その名を知らない人はいないでしょう。 兵庫県西宮市にどっしりと構えるその球場は、(大阪ではないです。念のため・・・)日本一有名な球場と言えるかもしれません。それこそ、野球の経験があるならば、誰でも一度は憧れる、まさに「聖地」。それだけに敷居が高い。甲子園に出場する高校球児は、春夏合わせて1200~1300人程度。よく言われるのは、東大の新入生は1年につき3000人程度。だから、「甲子園は東大に入るより難しい」などと言われます。

 果たして本当にそうでしょうか。トーナメントを勝ち抜いて、春の選抜大会、夏の選手権大会に出場するという意味では、確かにその通りです。 ですが、「甲子園のグラウンドに立つ」。これならどうでしょうか。実はこれはそれほど難しいことではありません。何故なら甲子園出場が叶わなかった元高校球児の私でさえ、3つの方法で甲子園のグラウンドに実際に立った経験があるからです。

 今回は、そんな敷居が高いと思われがちな「甲子園球場のグラウンドに立つ」ことについて、9つの方法を紹介したいと思います。

1.プロとして【難易度★★★★★】

「えっ?」と思われた方、すみません。いきなり敷居が高すぎるものを紹介してしまいました。しかし、徐々に下がっていくのでご安心を。高校球児としては果たせなかったが、プロとして聖地に立つ。こんなケースもあるんです。阪神タイガースに入団すれば本拠地として、甲子園のグラウンドに立てます。他球団、セ・リーグはもちろんのこと、今ではパ・リーグも交流戦のおかげで、阪神を相手に甲子園球場で試合をすることも出来ます。また、男性はともかく、女性が選手として甲子園のグラウンドに立つことはほぼ不可能です。昨今、女子野球のすそ野は確実に広がっていますが、女子野球は高校、女子プロ(日本女子プロ野球機構)ともに甲子園を利用する機会がありません。(男子の)高校野球は女性の参加は認められておらず、可能性があるとしたら、女性選手の参加も認められている、NPB(日本プロ野球機構)。つまりプロ野球12球団の選手になり、男性とともにプレーすることです。

2.代表校として(レギュラー、マネージャー、監督)【難易度★★★★★】

おそらく「プロ野球選手よりは敷居が低く、しかし東大入学よりは難しい」と思われるのがこのラインでしょう。容易ではありませんが、高校球児なら誰しもがここを目指します。大学では、関西学院大学と関西大学が相対する、伝統の『関関戦』が有名です。注目すべきはマネージャー。制服を着た紅一点として、女性も立つことが可能です。しかし、自分の実力云々で叶う夢ではありません。打算的に共学の強豪校へ入学し、”浅倉南”となって、部の”タッちゃん”を応援するしかないでしょう。それかドラッカーの『マネジメント』でも読んでください。甲子園球場のベンチに入れるマネージャーは一人ですが、残念なことに”浅倉南”は1チームに何人かいるのが普通です。圧倒的に男性よりもハードルが高いですが、もしも出場が叶うと、その自慢話で一生やっていけるでしょう。

3.近隣高校の野球部に所属する【難易度★★★★☆】

さてさて、ハードルが下がってきました。競争率はまだまだ高いですが、このあたりから、実力よりも打算と運がモノを言い始めます。近隣高校・大学ですが、ココだけの話、予選や親善試合等で甲子園球場を利用できる可能性がゼロではありません。実際にあります。また、かつては甲子園の予選にあたる「地方予選 兵庫大会」では、試合数こそ少ないながらに使用していた過去があります。予選、つまり全国大会に出場できなくとも、運よく試合が組まれる可能性が無いことも無いのです。

(但し、2004年に開催された2試合以降、兵庫大会でも使用されていません。)また、それとは別に全国各都道府県では審判の育成を目的とした「審判講習会」が行われます。これにあたっては、近隣の高校が複数参加し、お手伝いとしてプレーすることがあります。

4.関西吹奏楽連盟に所属し「演奏する」【難易度★★★★☆】

関西吹奏楽連盟とは、関西における吹奏楽団体の総本山とも言える組織です。関西の学校機関の吹奏楽団体ならほぼ必ず参加していると見ていいでしょう。全国大会の入場行進の際のマーチングバンドとして活躍し、同じく高校生がその役目を担います。しかし、やはり厳正なる審査があるようです。具体的には「大阪選抜」「兵庫選抜」とあり、メンバーを決める際はオーディションも行われます。また、1年ごとに交替しながら参加することから、毎年挑戦できるわけではありません。これも競争率は厳しいと言えるでしょう。

5.女子高生として「プラカードを持つ」【難易度★★★☆☆】

まだまだ容易とは言えませんが、打算次第でぐっと近い存在になります。それが、このプラカード持ちです。開会式の入場行進において、プラカードを持って甲子園出場校の先頭に立つのは、市立西宮高校の2年生の女子生徒たち。大会前に、学校では厳正な審査会が行われます。中には「甲子園でプラカードが持って歩きたい」と引っ越してまで入学するツワモノも。ここまで来ると家族の悲願です。また、審査発表の際、選考漏れで思わず泣いてしまう生徒もいるのだとか。

■プラカード担当の女子生徒選考会 西宮高校 兵庫(朝日新聞 大阪 2010年07月16日)

6.勤める【難易度★★☆☆☆】

やはり、プロの試合であれ、高校野球であれ、裏方の存在なくして甲子園球場は成り立ちません。そこで、「働く」という手段をとってしまえば、お金を稼ぎながら堂々と甲子園に入ることが出来ます。いくつかの形で甲子園のグラウンドに立った私ですが、ひとつはこの手段で達成しました。具体的には球団関係者、マスコミ関係者、グラウンドキーパー、警備員、審判などがそうでしょうか。アルバイトも多くあります。中でもグラウンドキーパーは、阪神園芸株式会社が専属で担当しており、甲子園に憧れるあまり履歴書を送る人も多いとか。またプロの試合では「激高した阪神ファンがモノを投げ入れないために」という理由で、試合終了直後にヘルメットを被った警備員がグラウンドに飛び出します。

7.西宮市民になり、小学校、中学校に通う【難易度★★☆☆☆】

年齢的な制約を除けばかなり容易です。甲子園球場がある西宮市の小学校、中学校がそれぞれ、毎年秋に「連合体育大会」と称して行っている体育大会があるのです。この大会は、一部例外を除き、毎年秋、プロ野球のシーズンオフに甲子園球場で行われます。西宮市ではそれぞれ「小連体」「中連体」という愛称で親しまれています。もちろん市内の全校が参加します。西宮市の学校に通っていた友人にその話を聞かされ、「ずるい!」「えーありえへん!」「いいなー!」なんて叫ぶ市外在住者も割とよく見かけます。(小学校当時の私のことですが。)阪神間(西宮市を含む周辺地域)では定番のやりとりです。

8.スタジアムツアー【難易度★☆☆☆☆】

そして最も簡単な手段がこちら。プロ野球のファンサービスにおいてはすっかりお馴染みかも知れません。球場に併設されている甲子園歴史館のサービスで、天候や試合日程により若干の変更はあるものの、甲子園球場内をガイド付きで見て回ることが出来ます。