俺の絶メシロード

週末の楽しみにしているテレビ東京の深夜ドラマ。今回のクールで観ていたのは「絶メシロード」です。

「絶メシ」というのはもともと群馬県高崎市で行われている「後継者がいない(からもうすぐ食べられなくなるかもしれない)安くて旨い絶品グルメを食べに行こう!」「誰かできれば後を継いで!」という一大キャンペーン。

リンク先を見るとわかるように、メニューそのものだけでなく建物の佇まいや店主の出で立ちなどなど、雰囲気たっぷりの文字通り味わい深いお店が並んでいます。

この高崎市の試みを原案としたドラマが冒頭で紹介した「絶メシロード」なのです(ドラマで紹介されるのはほとんど高崎以外のお店です)。

主演はインディーズ映画としては異例のヒットを記録し、数々の賞を獲った「カメラを止めるな!」で主演を務め、一躍表舞台に躍り出た濱津隆之さん。

「会社ではさえない中間管理職。アイドルの追っかけである妻と娘が泊まりで出かける週末に、ひとりクルマで関東及び近県へミドルドライブ。車中泊の翌日、自力で見つけた『絶メシ』グルメを食べるのだけが心の救い」という男性の悲哀がぴったりの面構え。もごもごした口調に可愛い目。ハマり役です。

高崎市のような地方の大都市だからこそ「絶滅の危機に瀕している個人店」がたくさんあるのでしょうが、みなさんの街にもいくつかはそんな「絶メシ」があるんじゃないでしょうか?

そこは峠のドライブイン

ということでグルメドラマに影響されやすい我が家もさっそく雰囲気たっぷりのお店を探して行ってきました。

場所は静岡県の函南町。熱海市に向かう「熱函(ねっかん)道路」でもうすぐ熱海に入るかなというところに"ぽつねん"と佇むドライブイン、その名は「御食事処 きみち」さんです。

昼時をちょっと外して入ったのに、30席以上あろうかという店内の半分ぐらいが埋まっています。ご夫婦でしょうか、高齢の男女が厨房で手際よく料理を作り、もうひとりの高齢女性が給仕をしてくれます。

メニューがそれほど多いわけではないですが、とんかつなどの定食類、そば、うどん、ラーメン、チャーハンと旅の途中には充分なラインナップです。

雰囲気満点

建物もテーブルもイスもかなり古いです。文句なしの「絶メシ」です。

さすがの手際でほどなくやってきたのはラーメン。濃厚系がキツくなってきたわたしたちにとってドンピシャの味。しかもなんと480円ですよ!

いわゆる「こういうのでいいんだよ」なラーメン。

探していたビジュアルそのもののチャーハンは味も期待どおり(値段は失念)。ライス部分をほとんど娘に取られ、焦って食べた(ので写真を撮れなかった)カツカレーはなんと700円!カツカレーとしては破格じゃないでしょうか。

チャーハンってどうしてスープがついてくるんでしょうね好きだけど

ああタンメンも具材の野菜とスープにしっかりコクのある好みの味でした。はやい!安い!そしてうまい!(どれも個人の感想です)

タンメンっぽくないどんぶりと刻まれていないかまぼこがかわいい

各グルメサイトを見ると峠の古い食堂にも関わらず結構な高評価。仕事でこの道を使う人やバイク乗りの間では知られた存在らしいです。今までに何回通ったかわからないぐらいなじみの深い道なのに、わたしときたらほぼノーマークでした…。

娘をはじめ他の家族にも好評で、実はこの次の週も食べに行ったほど好きになってしまいました。

消えゆく味を惜しみつつ

やはり絶滅が危惧されている、いわゆる「町中華」も含めて「跡継ぎがいなくて当代限り」という「絶メシ」は全国に無数にあるのではないでしょうか。

そういえばあの有名な「蒙古タンメン中本」もいったん閉店したあと、その味にほれ込んだ常連客が志願して修行し、味を受け継いだんですよね。

実は15年ほど前、惜しまれつつ閉店した近所のラーメン屋さんが「継いでくれる人がいるなら譲るけどねえ」とおっしゃっていたので、当時無職だったラーメン好きの後輩に継がせようとあの手この手を尽くしたのですが、失敗に終わりました。

「おまえがやれよ」という話ですね。でもわたしは「食べる人」から抜け出せません。せめて「俺の絶メシ」を探してしみじみ楽しんでいきます。

富士市の「大石食堂」さんのラーメン。こちらも昭和の雰囲気たっぷりのお店ですが、厨房には働き盛りっぽい男性もいたので絶滅しないでくれるかも。
いつもお年寄りのお客さんで賑やかだった三島の広小路食堂さんも閉店してしまいました。