コンサバな町の危うさ

シーパルピア女川で仲間たちとの待ち合わせまでに少し時間があったので、女川みらい創造株式会社の事務所を覗いてみたら、近江さんの姿がちらっと見えたので立ち寄ると、「おう久しぶり」と迎え入れてくれた。

近江弘一さん。株式会社石巻日日新聞社代表取締役社長で、有限会社コバルトーレ取締役社長、そして女川みらい創造株式会社取締役専務をつとめる、とびっきりアグレッシブな人だ。

ほんのご挨拶代わりの立ち話だったのだが、「陸前高田の中心市街地がプレオープン」という話になると、「陸前高田は難しいね」とこっちの目を見つめてそう言った。

難しさにいろいろな意味があるということは、立ち話ではなくじっくり話をした上で改めてお伝えするとして、ここでは近江さんが語った興味深いワンフレーズについて。

「地域紙が存在しているエリアには孤立という共通項がある」

陸前高田、大船渡、住田の気仙2市1町と呼ばれるエリアには、東海新報という地域紙がある。東海新報はこのエリアで圧倒的に読まれている新聞で、岩手県全体を対象に発行されている岩手日報よりも読者数ははるかに多いと思われる。つまり、気仙2市1町と呼ばれるエリアには地域紙が成り立つだけの土壌があるということだ。

かく言う近江さんが社長を務める石巻日日新聞も地域紙だが、東北全体をカバーする河北新報さんがお隣の仙台にあったから、地域での優位性はずっと前に失われていた。だからこそ、新しいチャレンジをさまざま行うことができた。

けれども、気仙2市1町ではいまでも地域紙が圧倒的な優位性を維持している。全国紙やブロック紙、県紙といった、より広いエリアを対象とし、それだけ多彩なニュースを掲載している新聞に対して、地域の話題を中心に扱う地域紙が生き残っているということは、外に向かって開かれていないことの現れとも言えるだろう。

「コンサバだからこそ難しい」

まちづくりには新しいチャレンジが不可欠だ。しかし、地域紙がサバイバルできるほど保守的な地域だから、チャレンジが難しいのではないか。新聞事業に携わる経営者(新聞人という言葉を近江さんは嫌うだろうから)だからこその指摘だった。コンサバだからこそのいい面もあるだろう。コンサバだからこそ守られてきたものもある。しかし、マイナス面も合わせて考えることで初めて見えてくることがある。