仮設住宅の人情

少し前まではたくさん人がいたのっさ。高田で二番目くらいに大きな仮設だからね。いまじゃ夜、玄関から外を見るととおりが全部真っ暗で寂しくなる。人がいなくなったのは分かっているのにな。

あんた、最初に来た時、手芸の集まりにもたくさん人が来てたっぺ。15人前後はいたもんね。でもいまは4人とか5人。

でもね、ここから公営に引っ越していった人たちも時々来てくれるしね。むかしの仲間が来てくれっと賑やかだし楽しいし、ほんとあの人たちには感謝しているのっす。

でも、公営はマンションみてえなドアで、閉めると外の様子もわからねえし、オレはあれ、ダメなんだ。どうも引っ越していく気になれねえ。

以前はね、こっちにYちゃんがいて、あっちにはSさんがいて、お菓子でもおかずでもなんか食べ物があるとすぐにお裾分け。食べるものがあってもなくても「ほれ、持ってきたよ〜」って。足りてても、持ってきてくれればもらうし、こっちだってちょっとでも何かあれば持ってくし。そうやって過ごして来たの、震災の後、この仮設で。

いまはねえ、Tちゃんがいるからやっていけてる感じだ。Tちゃんとは年齢も近いしな。あっちには寝たきりの人もいて大変なんだ。時々電話がかかってくる。「ちょっと散歩にでも行かねえか」って。

あぁ、いろいろあるからなとオレにも分かるから、そんなときは「いいよ〜」て答えて、2人でそこいらを散歩する。歩きながら愚痴とかいろいろ語り合う。そうして30分くらい歩いてっから、お互いの部屋に戻っていくのっす。

そういう風にやってるから、ここでこうしてやっていけてるんだ。ここの暮らしはそういうのなんだ。だからマンションみてえな公営はちょっとなぁ。