公営住宅に越してきて本当に安心して生活させてもらっています。ここは建物のきれいだし、いい人ばかりだし、お茶っこの会も時々あるし、一人暮らしだけれど寂しくはないのよ。
ただ、この団地の年配の人たちはみんな車を持っていないの。日中は若い人たちが働きに出ているから、車のない年寄りばかり。でも逆に、だからこそ集会所でお茶っこしたりして、みんなで仲良くできるのかもしれませんね。
そうは言ってもね、集会所に集まる人たち全員のことをよく知っているってわけでもないのですよ。とくに仲のいいのは○○ちゃん。彼女とはお互いに部屋を訪ねておしゃべりしたり、お茶っこしたりはしています。でも他の人が毎日どんなことをしているのかはあまり分からないのよ。時々お出かけしている人もいるみたいけれど、車がないのにどうやって出かけているのか分かりません。誰か迎えにきてくれる友だちがいるんでしょうけどね。
(そんな話をしていたら、窓の外、ベランダにセキレイが飛んで来た)
あ、今日も来たわね。かわいいのよね。毎日やってきて、餌を食べていってくれるのよ。
(見るとベランダには小鳥の餌が無造作に捲かれていて、セグロセキレイはベランダのあっちへ歩き、こっちへ歩き、時々は少し飛び上がって部屋の中を覗き込んだりしながら、餌をついばんでいる)
毎日こうして来てくれるの。かわいいよね。
(セグロセキレイは羽毛の艶もよく、まるまるとしていた。彼女が愛情を注いでいるからだろう)
こうしてこの子がね、毎日来てくれるから、一人暮らしだけれど寂しくはないの。