7月20日の全国高校野球選手権岩手大会は花巻球場での1試合のみ。なぜなら前日の19日、ベスト8進出をかけた4回戦、金ケ崎高校対高田高校の試合が延長15回でも決着がつかず、引き分け再試合になったからだ。
19日の試合では金ケ崎の及川竜樹、高田高校の千田雄大の両エースが、ともに200球を超える球数を投げながら相手打線を2点に抑えていた。
注目された再試合の先発は、金ケ崎が阿部匠人(3年)、高田は水野夏樹(2年)。投手戦の翌日だけに立ち上がりが注目だったが、1回表、高田は主軸の活躍で一気に4点を上げ試合の主導権を掴んだ。
金ケ崎は4回に1点を返すものの、力のある速球にチェンジアップなどの変化球を交えた水野の投球と高田の守備に追加点を奪えない。
高田はその後もスクイズ、犠牲フライなどで得点を重ねる。金ケ崎は残る3回の攻撃に望みをつなごうと、前日206球を投げた及川竜を7回表のマウンドに送ったが、7回表で8対1とリードは広がった。
チャンスを迎えるたびに、3塁側スタンドの高田高校の応援席では高田ブルーが揺れる。得点を重ねるたびに応援リーダーはバケツの水を浴びる。この日もグラウンドとスタンドは一体だ。
バックネット裏の観客席からは「まだ終わってないぞ!」と声がかかる。もちろん1塁側金ケ崎のスタンドの声援もさらにボルテージが上がる。3塁側高田のスタンドは息をのんで試合のゆくえを見つめる。7回裏の金ケ崎は及川竜のヒットなどで満塁のチャンスをつくった。しかし得点は奪えず、この回の攻撃終了とともにゲームセット。高田の応援席にスタンドが揺れるほどの歓喜が噴き上った。
7回コールド。得点こそ8対1と大差だったものの、ヒット数は高田9本、金ケ崎7本と伯仲。それでもコールド勝ちを上げた高田の強さが光る試合だった。3塁側スタンドで観戦していた盛岡大付(この試合の勝者と対戦予定)の選手たちから、「金ケ崎がもう1点取らねえかな」と声が聞かれたほどだ。
高田高校は今日21日、準々決勝で盛岡大付属高校と対戦する。ベスト8の7校に1~2日の休みがあるのに対して高田だけは3連戦。しかも19日には延長15回も戦っている。そうとうなハンデなのは間違いない。それでも高田の選手たちは「あと3つ」と気合いを入れているそうだ。
陸前高田の人たちの間でも期待が高まっている。口に出して「これで行ける」などとは言わない。「選手たちは疲れてるからなあ」と強豪モリフとの対戦を案じる言葉しか聞かれない。でも、心の奥で「がんばれ」と握りこぶしをしているのがよく分かる。心の中の声援がいろいろな意味を持っているのが感じられる。
甲子園に残してきた「1イニングの貸し」を取り戻しにいくために、いや自分たちの未来を掴むため、高田高校の夏はつづく。