かさ上げされた盛土の上の別世界

昨年完成した中田の災害復興公営住宅は盛土とほぼ同じ高さ。

震災遺構として保存されることになっている下宿定住促進住宅1号棟に記された津波到達高さの表示は、盛土よりも高い場所のように見える。

盛土の小山の真ん中辺りに、工事用の杭が残っていたが、すでに何が表示されていたのかは読めない。

白い砂漠のような盛土の上には、シロツメクサの群生が何カ所もあった。

震災の年、津波被害にあった土地には名前も知らない真っ赤な草がたくさん生えた。そして翌年はセイタカアワダチソウ。震災の2年後には津波被災地の白い砂の上にシロツメクサの大群生があった。陸前高田の町なかにもシロツメクサがたくさん生えていた。

かさ上げから数年、白い砂が広がる盛土の小山の頂上に、あの頃と同じようにシロツメクサが群生をなして生えている。何か、意味か理由があるのだろうか。

津波に襲われた町を覆うように盛り上げられたかさ上げの盛土。やがて新しい町として生まれ変わる土地。時間を3年分くらい巻き戻したかのように見えるシロツメクサ咲く土地。ここにも2016年という時間が流れている。やがてこの場所も、現在の姿を思い出すことができないほど様変わりすることになるのは間違いない。