日米通算4257安打。イチローがついに世界の頂点に立ちました。
この記録に関してはいろいろな意見があるようです。
とくにアメリカでは、日本とアメリカのレベルの違いに異を唱え、日米合算は数字として認めないという考えの人も多いようです。
メジャーリーグ移籍前、メジャーのパワーバッティングはイチローには向かない。つまりは通用しないと言う野球評論家やプロ野球ファンが多い中、小さい身体ながらも果敢にメジャーリーグに挑戦した勇気あるプレーヤーに対してそれはあんまりではないか。そう思いませんか。
だいたい日米の野球の差ってなんなんでしょう。
ベースボール発祥の地としてアメリカには敬意を表します。しかしながら、わたしは日本の野球がアメリカに劣っているとは思えないのです。体格差があるのでどうしてもパワーの面では劣りますが、技術的な面では決して劣っていません。むしろ優っている部分もたくさんあると思っています。
第1回、第2回のWBCでは世界の頂点に立ち、日本野球のレベルの高さも証明できました。バリバリのメジャーリーガーが日本で通用しないことが多々ある中、バリバリの日本の選手がアメリカで通用しなかったケースはあまりありません。野球の違いこそあれ、レベルの違いではないのです。逆に言うなら、どこの野球も対応できる柔軟さがある日本人の野球は世界レベルと言っていいでしょう。
イチロー当人は、こう言われることはわかっていたようで、あっけらかんとしています。でもピートローズが認めて祝福するような態度をとっていたらイチローのコメントも全然違ってきたでしょうね。雲の上すぎてまったく話題にも上がらなかったピートローズの大記録に対して、イチローが近づくにつれて連日取り上げられるようになりました。ピートローズも、もう少し喜んでくれてもいいのになんて感じるのはわたしだけでしょうか。
イチローが証明した日本野球のレベルの高さ
メジャー移籍初年度から242本のヒットを打ち、首位打者にも輝いたイチロー。4年目にはシーズン262本というメジャーリーグ記録を打ちたてました。そしてわずか9年で2,000本安打。10年連続200本安打という前人未到の記録。すごすぎて大きく取り上げられないこともありましたが、よくこの数字を見ればものすごい数字だということがわかると思います。近年は出場機会に恵まれていませんがまだまだ衰えは感じません。
15861回打席に立ったピートローズに対して、イチローはそれよりも1522打席も少ない14339打席目で到達しました。これだけでもすごいことです
打つだけではない、守れる、走れるすべてが揃っているプレーヤー
まずイチローの守備。実はこれこそ超一流なのかもしれません。とくに打球の判断、追うときの第一歩や追い方は他の選手には真似できないものがあります。難しい打球もいとも簡単に捕ってしまうので、捕って当たり前のように見えることも多いのですが、実は難しい打球がたくさんあるのです。肩については触れる必要もないでしょう。
そして盗塁を失敗しない走塁センス。
日本でのイチローは232回走って199回成功。失敗はわずか33回、盗塁成功率は.858です。この数字がどれくらいすごいかというと、現在日本のプロ野球で盗塁をほとんど失敗しないと言われているジャイアンツの鈴木尚広選手も成功率0.822です。日本記録の福本豊氏でさえ盗塁成功率は.780なんです。イチローはメジャーでも612回走って498回成功、盗塁成功率は.814です。通算1406盗塁のリッキーヘンダーソンの盗塁成功率は.808です。
盗塁成功率8割を超えるというのはとてつもなくすごいことなんです。
そんなイチローですが、プロに入りたてのころは7回走って5回失敗しているんです。おそらく足には自信があったと思います。そこからどうすれば成功するのか必死に考えたのではないでしょうか。何かとセンスで片づけられてしまいますが、イチローほどすべてにおいて努力した選手はいないでしょうね。
イチローの高校時代
イチローは高校時代ピッチャーとして甲子園に出場しています。甲子園では投打ともに大した成績を残すことはできませんでしたが、当時からバッティングは光るものがありました。ちなみにイチローの高校時代の成績は537打数269安打。打率.501です。わたしは長く高校野球を見てきていますが、この数字は驚異的です。
進化し続けるイチロー
今日も代打で出場してセンター前ヒットを打ったイチロー。メジャー3000本安打まであと「20」になりました。
マーリンズは外野手3人でクリーンアップを形成しています。チーム事情があるとはいえ、スタメンで4打席立ってこそ結果を出すタイプだけに、もう少し出場機会があればいいのにと感じます。今シーズンは.350近い打率のイチロー。打席に立てばヒットのイチローが代打でしか出場できないのはとても残念です。
わたしが思うイチロー
何となくですが、イチローという人間を変えたのは第1回のWBCのように感じています。この大会は王監督のもと、イチローはチームを1つにまとめ奇跡を起こし世界一に輝きました。それまでのイチローはよく言えばクール悪く言うとそっけない、そんな感じでした。はしゃぎ回るようなことはありませんでした。それがこの大会中イチローは明らかに違いました。
無邪気にはしゃぎ回る姿は1人の野球少年のように見えました。1つのターニングポイントだった気がします。
イチローは『何歳では』といった年齢に限定した記録を極端に嫌います。そういう記録を打ち立てたときのイチローのコメントはやはりそっけないイチローに戻ります。この年齢でこの記録...これはもちろんすごいことなのですが、心も身体も若いイチローにとっては不要なものなのかもしれません。
世界一のホームラン記録868本を打った王貞治さんはメジャーリーガーの憧れの存在です。王さんを悪く言うメジャーリーガーを見たことがありません。イチローの記録もそれに勝るとも劣らない記録だと思います。
将来、イチローもメジャーリーガーの憧れの存在になる気がします。
最後に...
イチローは世界一努力したからこそ、世界一のタイトルがとれたと思います。
世界中が祝福していい大記録なのに、実際はそうでもありません。
もし、わたしがイチローに会うことができたらこう言いたい。『あと10年メジャーでやって正真正銘ピートローズの記録を抜いたらどうだろう』と。
イチローならできる気がする。それくらいイチローは元気だ。
でもイチローは記録のために野球をする男ではない。ただただ野球が大好きな野球少年そのものなのだ。
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