コンビニエンスストアやスーパーなどの店頭には、熊本地震に対する募金箱が置かれている。街頭で募金呼びかけも多い。
募金したお金はどのような形で被災地に届けられ、どう活用されるのか。募金の種類について簡単に見ていきたい。
被災した人に直接渡される「義援金」
義援金は日本赤十字社や共同募金会を通じて集められるお金で、被災した人の生活再建のために手渡される。店頭や街頭の募金、新聞社やテレビ局などのメディアによる募金の多くは、赤十字や共同募金会を通しての義援金になる。
義援金は現金として手渡されることになるお金だ。ただし、地震による被害の程度(家族の死亡や自宅の倒壊など)によって市町村を通して配分されるため、届けられるまでに時間が掛かってしまう。とくに役場機能が失われるような被害が生じた場合には、事務作業が滞りがちになる。
NHKのニュースウェブの情報によると、熊本地震では5月6日に、県の義援金配分委員会から第一回目として各市町村に配分が行われているという。しかし、その額は7億5200万円で、100億円以上集まっている総額と比べるとかなり割合は小さい。
配分は今後も数次にわたって行われることになる。そして実際に被災した人に義援金が届くのは、市町村レベルでの事務手続き等が終わってからになる。
【まとめ】被災して困っている人に直接届けられるお金が義援金。しかし届けられるまでには時間がかかる場合が多い。
ちなみに5月27日の参院本会議で、被災した人が金融機関に借金があっても差し押さえられることなく手渡され、生活再建に使えるようにする「差し押さえ禁止法」が成立した。
復旧・復興に使われる自治体への「寄付金」
リンクの熊本県のように自治体への寄付も募られている。
被災地の復旧・復興等の事業に役立てるための募金で、具体的には道路や公共施設の復旧・復興などに使われることが多い。募金の使途は基本的には自治体に委ねる形になる。
東日本大震災では、アメリカの学校に通う中学生が、被災したこどもたちのために使ってほしいとクラスメートたちから集めた募金を三陸のある自治体に届けたものの、使い道については役場の担当者から確約を得られなかったという話もラジオのニュース番組で聞いたことがある。
被災した自治体ではマンパワーが圧倒的に不足しているため、寄付金の用途にまで対応することが困難なのも無理はない。
【まとめ】自治体への寄付金は、自治体の判断で使ってもらうものだと理解しておく必要がある。
また自治体への寄付の方法としては「ふるさと納税」も有効だ。
地震から1週間の避難所で
熊本地震の最初の地震から約1週間後、益城町のある小学校の避難所で目にした光景がどうしても忘れられない。ボランティアセンターが活動を開始したその日、避難所を管理している町の職員の方からは、「避難されている方といろいろお話ししてください。みんな話し相手がほしいんですよ」と言われていた。
たしかに何人かの方とはおしゃべりさせていただいた。しかしそんな雰囲気ではない人も少なくなかった。
雨が降っているのにテラスに学童椅子を持ち出して、じっと雨だれを見つめている人。同じくテラスでスマホの画面をただじっと見つめている人。それぞれの人が5メートルくらい離れて一人でいた。避難所には同じ地域の人たちが集まっているはずなのに、知り合い同士で話をしている状況はほとんどなかった。
テラスにぽつりぽつりと並ぶ無言の横顔が、不安とか苦渋といった気持ちを物語っていた。
きっと明日の生活が心配なのだろう。住む場所をどうすればいいのか思い悩んでいるのだろう。さまざまなことに困り果てているのだろう。
生活再建のためのお金を手渡す事ができたなら、そんな不安を少しでも緩和できるかもしれない。しかし、先に説明したとおり赤十字などを通しての義援金は、被災しした人の手元に届くまでに時間がかかってしまう。
NPOなどの団体への「寄付金」「支援金」
阪神淡路大震災の被災地でも「一番ありがたかったのはお金」という声を多く聞いた。
しかし、すぐに届けることが難しいのなら(もちろん改善の余地はあるだろうが)、物資やサービスを届けることで避難所での生活を支援するという方法もある。
しかし、これがまた一筋縄ではいかない。
熊本の被災地に入ったその日、役場の人に物資のニーズを尋ねると、こんな言葉が返ってきた。
「おかげさまで食料や水、毛布などの物資はたくさん集まっています。これからの課題は避難所の衛生。ノロウィルスなどを防ぐため消毒に使う次亜塩素酸ナトリウム、市販の塩素系漂白剤を届けてもらえると助かります」
さっそく関東地方の知人に呼びかけて、漂白剤を送ってもらったのだが、現地に届いたのは5日後。しかし、役場の人に話を聞いた3日後には、保健師さんたちのチームによって、漂白剤による消毒キットが各避難所に届けられていた。
せっかく集めて、1000キロの道のりを越えて運び込んでもらった漂白剤だったが、結果的に時宜を逸してしまう形になってしまった。
ニーズは日々変化する。変化するニーズに対応するためには、現地で活動しているボランティア団体などに即応してもらうのが一番だ。災害被災地で活動するNPO団体などを応援することは、被災地のニーズにきめ細かく応えることにつながる。
ところが、見ず知らずの団体に大切なお金を寄付することには戸惑いもあるだろう。たとえ名の通った団体であっても、実際の活動を見たり、スタッフに会ったりしたことがなければ、寄付するのに二の足を踏んでしまうかもしれない。
また団体によって、寄付したお金の使われ道も違ってくる。支援のための物品などの購入のほか、拠点開設や事務運営、ガソリン代や高速料金などの経費が掛かるのは当然としても、団体によって活動内容や運営方針に大きな違いがある。
つまり、寄付する先の見極めが重要になる。
それならば、被災地で活動するNPOなどの団体の活動内容を、くらべてチェックできるページを、このpotaru上に作ったらどうだろう。
義援金、自治体への寄付、団体への支援のいずれにも長短がある。被災した人たちの不安を少しでも和らげるためにできることを考えていきたい。
(つづく)