山田町の御蔵山は、岸壁と山田町役場のちょうど中間くらいに位置する、標高10メートルほどの小高い丘。御蔵山の一角、海を臨む場所に震災から2012年3月11日、設置されたのが「鎮魂と希望の鐘」だ。
Bell of Requiem and Hope
鎮魂と希望の鐘を設置したのは山田ロータリークラブ。北海道中標津町のクラブからの支援をきっかけに、中標津町の「幸せの鐘」をモデルに「鎮魂と希望の鐘」を造ったのだという。
やさしく、軽やかな、美しい鐘の音だった。
あの日、牙を剥いた海に、そしていまは山田町の人々の暮らしを支える穏やかな海に、御蔵山のすぐ下で建設が進む新しい商店街に、国道を走る車たちに、盛土と造成と解体と建築が同時進行する町で働く人たちに、鎮魂と希望の鐘の音が響く。
さまざまな歴史も含めて未来へ響いてほしい鐘
「御蔵山」をネットで検索すると「山田町災害復興支援隊」のブログページが上位に掲示される。震災直後に山田町で行方不明者捜索やさまざまな支援活動を展開してきた団体のページだ。ブログの内容を見ると、潜水捜索をしたり、支援物資を配ったり、炊き出しをしたり、イベントを行ったり、被災直後の山田町の人たちのために懸命に活動してきた人たちだという印象を受ける。しかし山田町災害復興支援隊とは、厚労省の緊急雇用創出事業の7億9000万円の事業を受託した末に破綻した「特定非営利法人大雪りばぁねっと。」による活動だった。
突然の事業中止で解雇された地元の方々にとっては辛い思い出がよみがえる場所かもしれない。それでも、いろいろな過去の出来事を乗り越えて、鎮魂と希望の鐘の音を響かせてほしい。丘のまわりでは新しい動きが進んでいく中、ここだけちょっと静かな御蔵山に立って、そんなことを考えた。