青いあおい太平洋をのぞむ「竹の会所」

石巻方面から気仙沼に向かう途中、大谷海岸の手前の小高い崖地の上に不思議な建物がたっている。

震災以前から定置網漁が盛んだったという港町。漁の様子を見張るのに使われた高台なのかもしれない。

しめ縄が張られた入り口から中に入ってみると、そこには……

竹で形づくられた圧倒的な空間。1000本もの竹が使われたというドームの造形の繊細さと強靭さに圧倒される。

このドームの名は「竹の会所」。震災1カ月後にこの地を訪ねた滋賀県立大学の陶器浩一教授が、「みんなが集まる場所もなくなった」という地元の人たちの声に応えて、のべ70人の学生とともに作り上げたスペースだ。

震災で大きな被害を受けた集落。大人数で取り組む定置網漁は、浜でも船の上でも結束が欠かせない。そんな土地で失われた集いの場を取り返したのが竹の会所だ。

震災では、ドームを覆うメッシュのテント越しに見える土蔵の中で亡くなった人もいたそうだ。海が見渡せる高台という、この場所が担ってきた意味。人が集う場所。かつてここで津波の犠牲になった人がいた場所。そして震災の後、ふたたび人が集う場所として、遠く滋賀県立大学からやってきた人々の支援で新たに生まれ変わった場所。

竹の会所では、季節折々のさまざまなイベントが行われる。ドームを覆うメッシュのおかげで、真冬でも晴れた日にはぽかぽか暖かい。この場所でお弁当を広げる人も少なくないのだとか。

竹の会所は青いあおい太平洋をのぞんで立っている。