気になるデータ。凍土遮水壁が凍らない?

非常に気になるデータが発表された。凍土方式で地下水を遮断するために造られている陸側遮水壁だが、どうもうまく凍っていないようだ。

非常に大画面のPDFで、通常のモニタでは表示が読めそうにないので、部分ごとに拡大してみた。まずは1ページ目の全体像。

福島第一原子力発電所陸側遮水壁試験凍結の状況について|東京電力 平成28年1月7日(1ページ目全体)

続いて地中の温度を測定する測温管の位置を示す地図。

福島第一原子力発電所陸側遮水壁試験凍結の状況について|東京電力 平成28年1月7日(測温管の位置)

次は1号機側の7カ所のデータ。

福島第一原子力発電所陸側遮水壁試験凍結の状況について|東京電力 平成28年1月7日(1号機側7カ所)

続いて3,4号機側の11カ所。

福島第一原子力発電所陸側遮水壁試験凍結の状況について|東京電力 平成28年1月7日(1号機側3,4号機側の11カ所)

青いグラフは地下水を通しやすい「中粒砂岩層」。赤いグラフは粘土層など地下水を通しにくい層の混ざった「互層部」だ。概ね赤の方が温度が低いのは、地下水の流れが緩やかなため、冷却が効きやすいことを示していると考えられる。

しかし問題はその温度だ。データが集約された1月6日時点で氷点下を記録しているのは「No.10の赤」マイナス0.6℃、「No.18の赤」マイナス1.3℃の2カ所だけ。

8月頃までは氷点下を記録している測温管はもう少し多かったのだが、地下水の流量が減っていく秋から冬にかけて(もちろんその気温も低下していくシーズンだ)、軒並み上昇傾向だ。それもプラス10℃前後のデータが多い。「No.13の青」に至ってはプラス15℃。井戸水の水温だ。

つまり、地下水がほとんど冷やされることなく、そのまま流れている状況が地下で繰り広げられていると推定できる。

地下水の水温は年間とおして一定とされるが、冷却液を循環・移送させる際のロスは、気温が低下した冬季の方がはるかに小さくて済むはず。にも関わらず秋以降、凍結成績が悪くなっているのを見ると、どうしても海側遮水壁の閉合との関係を疑わざるをえない。(地下に何らかの熱源があるという可能性も否定できないが)

タービン建屋の海側では地下水位の上昇が続いている。地下水観測孔のサンプリングで過去最高値が更新され続ける観測点もある。水位の上昇で地下水の流れに変化が生じ、そのことで流量が増して凍結しにくくなっている、そんなシナリオも考えられそうだ。

発表された資料の2枚目には、測温管と凍結管の距離による温度の傾向を示すデータも付けられているが、読み取れれる傾向は変わらない。つまり、ほとんどうまく行っていない。温度がマイナスだった「No.10の赤」「No.18の赤」ともに凍結管から約50cmと近いから凍っただけ。1mも離れると赤の互層部でも10℃程度となる。これでは凍土の壁で地下水を遮断することなど覚束ない。

東京電力がどんな手を打つのか注目しなければならない。