雑固体廃棄物焼却設備設置工事の進捗状況

東京電力福島第一原発の事故収束と廃炉に向けての大きな課題となっているものと言えば、そうです「汚染水」ですが、汚染水の次に表面化するであろう大きな課題があります。それは固体廃棄物、つまり放射能に汚染されたゴミやガレキをどうするかという問題です。

11月末、東京電力が発表したニュースリリースには、そんな放射能のゴミ処理の問題へのアプローチのひとつが紹介されていました。

雑固体廃棄物なんて漢字で記すとえらい厄介な代物のように思えますが、作業員が日々着用し、日々ゴミとして廃棄されるタイベック(防護用のツナギ)や下着、手袋、ウエス、木や梱包材、紙や廃油や樹脂などなど。要するにゴミです。

今のところこれらの廃棄物は黄色い放射性物質用のドラム缶に詰めて保管されていますが、毎日毎日出てくるゴミなので、ただ保管するだけでは場所がなくなってしまいます。現在は事故原発の敷地に所狭しと汚染水を保管するタンクが立ち並んでいますが、雑固体廃棄物の山もまた、今後確実に大問題になる要素。そこで、雑個体廃棄物を減量するために燃やそうという計画が進められているということなのです。

燃やして減量しようという話だから理屈はカンタンです。ただし、このゴミには放射性物質が付着しているという厄介な問題があります。そこで、炉で燃やした後の排ガスをフィルタで濾して、除染した後に排気する設備の建設が進められ、今年度中には稼働する予定とのこと。

雑固体廃棄物焼却設備設置工事の進捗状況|東京電力 平成27年11月24日

廃棄物を燃やす炉は、通常のゴミ焼却場のような炉ではなく、ロータリーキルンという特殊な炉を使うようです。ロータリーキルンは円筒形の炉をやや傾けて横にして回転させながら、時間を掛けてゆっくりと完全燃焼させる炉です。セメントをつくる際に使われる炉と同じ仕組みのもののようです。完全に燃やして残った灰はドラム缶に詰めて保管。燃焼の際に出るガスは排ガスフィルタで浄化される仕組みになっています。

雑固体廃棄物焼却設備設置工事の進捗状況|東京電力 平成27年11月24日

ロータリーキルンは、完全燃焼させるのには相応しい炉なのですが、通常の炉よりも多くのエネルギーを使うという難点もあります(だからセメントはエコではないと言われるほど)。しかし、ゴミの減量化のためには、燃え残しがないようにしっかり燃やすことが必要なので、この特殊な炉が選ばれたのだと考えられます。

雑固体廃棄物焼却設備設置工事の進捗状況|東京電力 平成27年11月24日

現在この焼却プラントはすでにコールド試験(放射能汚染されていない物質を使って実際に燃やしてみる試験)に入っているようです。放射性物質が付着したものを燃やすわけですから、大気中に排出されるガスに放射性物質が混入しないよう、しっかりとしたチェック体制で進めてもらいたいものです。

雑固体廃棄物焼却設備設置工事の進捗状況|東京電力 平成27年11月24日

燃焼によって放射性物質は確実に濃縮されるわけですから、焼却灰の保管についても厳重な管理が求められます。ガスと灰の管理について十分な情報公開が行われなければならないことは言うまでもありません。

建屋など大規模な解体工事が始まれば、ゴミの問題はさらに深刻化します。比較的汚染度の少ないこのプラントの運営は、今後の放射能ゴミ対策の試金石になると言っていいでしょう。

このプラントの燃焼ガスや焼却灰の放射性濃度が公表されるのかどうかは、現在発表されているリリースでは明らかにされていません。