1号機タービン建屋周辺の地下水位低下が確認される

下の左右の写真をご覧頂きたい。左は濡れているが右はすっかり乾いているのが見て取れる。これが何を意味しているというのだろうか。

「福島第一原子力発電所 1号機コントロールケーブルダクトからの地下水流入状況調査結果について|東京電力 平成27年11月12日」を改変

東京電力は12日、写真と報道配布資料で、1号機のコントロールケーブルダクトから流入していた地下水の状況について発表した。

発表された資料によると、コントロールケーブルダクトとは、タービン建屋の地下に西(山側)と東(海側)を結ぶように伸びているケーブルを収めるためのダクトで、このダクトを通じて山側から地下水がタービン建屋に流れ込んでいた。つまり、建屋地下に1日約300トン流入して廃炉の足枷となっている流入地下水の一部だったわけだ。

資料には上の写真の撮影場所を示す配置図が掲載されているので引用する。

「福島第一原子力発電所 1号機コントロールケーブルダクトからの地下水流入状況調査結果について|東京電力 平成27年11月12日」より

上の配置図のA-A方向の断面図が以下の図。図中の「O.P.」は(小名浜港工事基準面)を意味し、東京湾平均海面(T.P.)の下方727mmにある基準面のことで、下の図でもミリメートルで表記されている。

「福島第一原子力発電所 1号機コントロールケーブルダクトからの地下水流入状況調査結果について|東京電力 平成27年11月12日」より(B-B断面図は分かりにくいので引用しなかった。東京電力の資料で直接ご確認いただきたい)

ダクトの下端の高さO.P.約2,700mm、つまり約7.2メートル。地下水位がそれより高かった頃は、ダクトからタービン建屋地下へと地下水が流れ込んでいた。冒頭写真の8月30日の状態だ。

同じ場所を11月12日にビデオ撮影した映像では、周辺が乾いている様子が伺える。東京電力はこの映像をもって、「地下水位が下がって、O.P.約7.2メートルを下回ったため」と説明しているわけだ。

サブドレン稼働による地下水位の低下に伴い、当該ダクト内の水位が1号機タービン建屋への接続高さを下回ったことにより流入が停止したものと考えられる。

引用元:福島第一原子力発電所 1号機コントロールケーブルダクトからの地下水流入状況調査結果について|東京電力 平成27年11月12日

たしかにそういうことなのだろう。しかし、8月30日の写真を見る限り、1日300トンという全流入量のせいぜい数100分の1程度の流入量にしか見えない。流入箇所は当然ほかにもたくさん存在するはずだし、もっと大量に流れ込んでいる場所もあるだろう。

しかも、サブドレンピットの地下水位は場所によって大きく異る。サブドレンが稼働する前の8月末日までのデータしか、現時点では東電のページで確認することはできないが、その水位はO.P.で4メートル台から9メートル超まで大きなばらつきがあった。今回撮影に成功したダクトからの流入が止まったというニュースだけで、「地下水位が下がってよかった、よかった」とはならないのだ。

さらに大きな問題は、地下水位が下がって、建屋地下の滞留水との水位差が少なくなると、サブドレンからの汲み上げと滞留水移送とのバランスを取りながらの運用が求められることになる。

現状では地下水位の方が高いため建屋の外から中への水の流れだが、もしも水位が逆転すれば内から外、つまり融け落ちた燃料に触れた高濃度汚染水が建屋外の環境中へ流れ出してしまうことになるからだ。

もちろん、特定の1カ所だけであっても、地下水位の低下が確かな現象として確認されたことが持つ意義は大きい。だからこそ、もっと丁寧な説明をしてもらえるよう要望したいのだ。

長い廃炉への道を歩いて行くうえでは、多くの国民の理解と支持が不可欠だ。「サブドレンの成果だと考えられます」というだけの発表では、うまくいってることをアピールしているだけに見えてしまう。これでは決して東電のためにならないと思うのだ。